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【受賞&書籍化】転生した悪役令嬢の断罪(本編完結済)  作者: 神宮寺 あおい@受賞&書籍化


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悪役令嬢は護衛の結論を見る

「この契約書は……たしかに王妃殿下とニールセン家の間で正式に結ばれた物です」


レオから提出された契約書を確認した裁判長が言う。


グラント国では契約を結ぶ場合国が発行する特殊な紙を使わなければならない。

その紙には特別な加工が施されており、国が管理する魔道具を使うと紙面に国章が浮かぶようになっている。

裁判では契約書が証拠に使われることが多いため、裁判所にはその魔道具が常置されていた。


そしてその特殊な紙を手に入れるには申請が必要だ。

つまりいつ誰が何のために契約書を必要としたのかがわかる仕組みになっている。


まぁ、私がデュランとの間に交わした、特殊な効果が付与されたペンと用紙がセットになったアーティファクトみたいな例外はあるけれど。

それ以外でも仕事上契約書を多く取り扱う者たちは、先にある程度の枚数を仮で発行してもらい、実際に使用してから詳細を報告するパターンもある。

もちろんその場合は別途特別な登録が必要だ。


ダグラスの提出した契約書類が本物かどうか、王妃には判別がつかなかったのだろう。

普通に考えれば立ち入る人の限られた王妃の自室から書類を持ち出すことは不可能だ。

しかし今この場で偽物を出してくるとは考えにくい。


「同様に確認していただけば提出したすべての契約書が正式な物だということもわかるでしょう」


そしてレオは今度は小さな箱を取り出した。

箱の中には隷属のアーティファクトが収められている。


実は王妃の自室の契約書を差し替えた時にアーティファクトも模造した物に取り替えていた。

なぜなら私がレオを解放した時にアーティファクトの色が明らかに変わってしまったからだ。

所有者の青も隷属者の白もどちらも黒く変色してしまった。


もし何かの気まぐれで王妃が隷属のアーティファクトを確認することがあれば確実にその変化に気づくだろう。

そうすれば変化した理由を探るはずだ。

アーティファクトからの解放まではわからずとも、警戒心が強まってしまうのは困る。


そこで私はデュランの伝手をたどって模造品作りを得意とする者にアーティファクトの偽物を作ってもらった。

もちろん、それが何なのかは秘密にして。


「皆さまは隷属のアーティファクトがどんな物なのか詳しくはご存知ないでしょう」


レオから箱を受け取った書記官が裁判長の元に運んでいく。


「これが隷属のアーティファクトですか?」

「そうです。言い伝えられている通り、アーティファクトによって隷属させられた者は所有者の命令に逆らえません。心でどれだけ拒否していようとも、その命令に従うしかないのです。元々が奴隷に使用していた道具ですのでそれも当然でしょう」


『奴隷』の言葉に辺りがざわつく。

グラント国では奴隷の所有は許されていない。

これが本当であれば、王妃が自ら国の法を破っていたことになる。


「例えば『決して口外してはならない』と命令されればそれこそどんなに拷問にかけられても口にすることはできないのです。これほど秘密を話す相手として適した者はいないのでは?」

「つまり、レオンハルト殿は王妃殿下の真意を知っていると?」


裁判長の問いかけに、レオはこの場では不似合いな微笑みを浮かべる。


「ええ。すべてを」


「異議を申し立てますわ!」


レオの言葉に被せるように王妃が叫んだ。


「発言を認めます」

「隷属のアーティファクトは一度隷属させられたら生涯その呪縛から逃れられないといいますわ。仮に私がレオンハルト殿にそのアーティファクトを使っていたというのであれば、このような場において私の不利になるような証言をさせるとお思いですか?」


王妃の言うことはもっともだ。

ただし、レオがアーティファクトに縛られたままであったのなら。


「たしかにそうだな」

「普通は口止めするわよね?」


見守っている貴族の間からも疑問の声が聞こえる。


「王妃殿下は、先ほど口止めされたではありませんか」


レオが少しの動揺もなく答えた。


「『あなたは主の意に反することは口にできない』皆さまもお聞きになったでしょう?あの場にはそぐわない言葉を、王妃殿下はなぜ発したのですか?」

「それは……」

「さすがに『私の意に反する』とは言えなかったのですね。それでも不可解な発言であることに変わりはない」


青ざめる王妃を見つめながらレオはさらに言葉を重ねる。


「隷属のアーティファクトに囚われた者は生涯その呪縛から逃れられない、それはつい最近までは定説でした。しかし解放できる方法が見つかったのです」

「!!」

「その方法はかなり特殊で覚悟の必要なもの。簡単には実行できないでしょう。詳細に関しましては証拠と合わせて後ほど提出いたします」


そしてレオは、ひどく悲しげに続けた。


「もし、もし側妃殿下を害した侍女が隷属のアーティファクトから解放されていたら、事件は起こらなかったでしょう。彼女は実行犯ではありましたが、本人が望んで行ったわけではないと思いますので」


そして締めくくりにレオは宣言する。


「側妃殿下毒殺事件の首謀者は王妃殿下であるとここに証言いたします。また、王妃殿下は先日公爵家のエレナ・ウェルズ嬢を害すように殿下付きの影に指示を出しておりました。その件につきましても合わせて告発いたします」

数多の作品の中から読んでいただきありがとうございます。


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