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悪役令嬢は自衛する

対王妃の方針が決まってロキはレンブラント家の領地へと発った。

領地は侯爵領ということもあってか比較的王都の近くにある。

ロキの調査は行きの移動に一日、調査に五日、帰りの移動に一日の合計一週間を予定していた。


何か証拠がつかめれば良し、つかめなかったとしても一週間経ったら一旦戻ってくるようだ。

他の人もそれぞれの準備や手配を進め、前回の話し合いから一週間後に再び集まることになっている。


そして私はといえばいつもと変わらない生活をしているのだが。

実は一つだけ問題があった。


そう、記録のアーティファクトである。


ロキに貸している限り当然だけど私の手元にアーティファクトはない。

つまり、エマに何かされたとしても証拠が残しにくい状況なわけだ。


というわけで、早々に必要とされるのがエマ対策だった。

といってもそんな大層なことをするわけではなくて、友人に協力を求めるというシンプルな方法なんだけど。


まず一番大切なのは一人にならないこと。

今までも学園内で一人になることはほとんどなかったけれどそれを徹底した。

特に教室移動の時には必ず誰かと一緒に行動する。


エマが狙ってくるのがそういうタイミングが多いからだ。


元々ジェシカは仕事を依頼した関係上すべて同じ授業を取っている。

巻き込むといけないから王妃の件は言えないけれど最近のエマのことは伝えてあった。


そしてクレアとソフィも協力を申し出てくれて、なんならオーウェンとベイリーも一緒に行動することが増えている。

前世ではどちらかというと一人での行動が多かった私にとって、集団でワイワイするのは新鮮だ。


その日私はレオを護衛にジェシカと一緒に美術室へ移動していた。


「最近はダグラス様ではなくレオ様の護衛が増えてますね」

「そうね。ダグラスにも自分の時間が必要ですもの」


本当は自分の時間というよりも対王妃のための準備に時間が取られているんだけど。

今日もダグラスは王宮に出かけている。

おそらく陛下との面会のためだろう。


ダグラスが護衛以外の時間に何をしているのか、私は細かく聞いていないのではっきりとは知らない。

ダグラスのことだから必要があれば報告してくるだろう。

そうでなかったとしても、一週間後に集まる時には話してくれるに違いない。


今後の相談をしているんだろうけど……。

陛下は王妃のことをどう判断するだろうか。

そしてライアンのことは?

もしゲームの通りに私に婚約破棄を突きつけてエマと婚約を結び直すことになったらどうなるのか。


今ここで考えてもどうすることもできないことではあるけれど、断罪回避を目的としてきた私としては重要な点だ。

生き延びれるかどうかにもかかってくる。


「そういえば、最近レオ様の雰囲気が変わったと思うんですが、何かあったんですか?」


ジェシカがレオに聞こえない程度の小声で聞いてきた。


レオが変化したとすれば隷属のアーティファクトから解放されて自由になったことが大きいだろう。

あとは……以前よりも私への距離が近くなったかもしれない。


今までも親切ではあったけれど、雇用主と護衛としての線引きがしっかりとされていた気がする。

それがかなり曖昧になって私への好意的な気持ちがだだ漏れだ。


まぁ、気づくよね。

それでも、レオから感じるのは純粋な好意でしかなく邪な何かが感じられることはなかった。


とはいえジェシカに何と説明するべきか。


そんなことを考えながら階段の踊り場を曲がろうとしたら、不意に後ろからレオの腕が伸びてきて私をその胸に抱きとめた。


うぇ!?


心の中で叫んだけれど実際に奇声を発しなかった自分を褒めてあげたい。

そして目の前にはジェシカの背中が見える。


「きゃあ!」


なんでレオは引っ張ったの?と思ったところで誰かの悲鳴が聞こえた。


ジェシカの向こうにエマがいる。

エマは踊り場でぶつかって転んだかのように手すりにつかまり階段の途中で座り込んでいた。


周りを見回せば階段の下には数人の生徒、そして踊り場を挟んで上にも生徒が見える。


「エレナ様!階段で押すなんて危ないですわ!!あたしに怪我させたかったのですか!?」


エマはアクアマリン色の瞳にうっすらと涙をためてこちらを見上げながら言い放った。


「エマ様、大丈夫ですか?当たりもしていないのに足を踏み外すものだから驚いてしまいました」


エマに負けず劣らずはっきりと、辺りに響く声でジェシカが答える。


「え!?え!?」


ああ……。

これはイベントだ。

エレナに押されたエマが階段から転げ落ちて怪我をし、断罪の場ではエレナが故意にエマを害したと罪に問われた。


エマは私が目の前にいると確信していたのだろう。

うつむいた状態からこちらを見ることなく言葉を放ったものの、目の前にいたのは私ではなくジェシカだ。


どこからどう見てもエマの言っていることはおかしいし言いがかりだということがわかる。

他の生徒の証言も必要だからかみんなの前で事を起こしたせいでエマのおかしな言動が多くの人の耳に入っただろう。


稚拙というか何というか。

計画に粗が多すぎて突っ込みどころがありすぎる。


とはいえやっぱり仕掛けてきたことを考えると、自衛していたのは正解だった。

数多の作品の中から読んでいただきありがとうございます。


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よろしくお願いします。

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