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悪役令嬢は招集する

気づけばありがたいことに協力者が増えている。

そもそもが断罪回避、そして生き延びることが一番の目的だったわけだけど……いつの間にやらかつての側妃毒殺事件の調査にまで発展してるんだから、世の中って何が起こるかわからないよね。


そしてよくよく考えたら協力者に関して、それぞれが顔合わせしていないことに気がついた。


これってもしどこかで鉢合わせした時に不都合なことが起こるのでは?と思っての、今である。


久しぶりに詰所の所長室にお邪魔した私の目の前にはいかつい男どもが数人。

みなさん見目は麗しいんだけどいかんせん雰囲気が物騒である。


何人かが集まって相談をするには場所が必要なわけで、かといって公爵家に他の人たちを呼ぶわけにはいかない。

たとえ集まった内の半分以上が公爵家に関わる者だったとしても、だ。


いかにも裏社会の人間ですという雰囲気のデュランを呼ぶわけにもいかないし、いかにも平民ですという顔をしたルドやロキを呼ぶわけにもいかない。

まぁ、ルドとロキに関しては平民ではないかもしれないけど。


かといって裏通りにある情報ギルドに公爵令息である兄を連れて行くこともできないし……。

そんな状況下、苦肉の策での共有街詰所へ集合だったんだけど。


案外ここは便利かもしれない。


というのも、共有街であれば貴族も平民もいておかしくないし、何より場所が詰所であればもし誰かに見かけられても特に怪しまれないからだ。

さすがに公爵令息をつかまえて共有街で何か犯罪でも犯したのか、なんて言う勇気のある者はいないだろう。


「お兄さま、こちらが情報ギルド長のデュランですわ」

「情報ギルド長?エレナ、お前そんな人とどこで知り合ったんだ?」

「まぁまぁ、細かいことはいいではないですか。初めてお目にかかります、デュランと申します。どうぞお見知りおきください」


私からの説明に対して訝しげに問いかける兄をあっさりといなすデュラン。


「ダグラス以外の皆様は初めましてかしら?」

「こちらが一方的に知っている感じですね」


なるほど。

デュランは全員知っていると。

まぁ、情報ギルド長なんてしていればさもありなん、かしら。

レオに関しては調べてもらっているから当然詳細を把握しているわよね。


「ルド様、ロキ様、こちらが我が家のもう一人の専属護衛であるレオですわ」


ダグラスはすでに全員知っているし兄は先日の事件でルドとロキを紹介済みだ。

となると残すはレオのみ、となる。


「レオです。エレナ様に忠誠を誓っておりますので、エレナ様のためであればいくらでも働きます。しかし、もしエレナ様を害することがありましたら容赦しませんのでその点ご承知おきください」

「エレナ嬢、なかなか個性的な護衛を雇ってるな」


レオの挨拶に対してのルドの感想である。


いや、私も好きでレオにこんなことを言わせているわけじゃないんだけど。


「まぁいい。とりあえずは任務先でエンカウントした時にお互いが味方だとわかっていればいいんだからな」


ルド、任務って言っちゃってるよ。

一応仕事ではないんだけどね。


「で、具体的には今後どうしていくつもりだ?」

「まずは誰が父上に側妃様の事件とレンブラント家の繋がりを仄めかしたのかを知りたい。ルド殿、その後進展はあっただろうか?」


そうなんだよね。

そのことが始まりだったんだからまずはそこからだろう。


「調べてみたんだが……最近ウェルズ公に接触した人物の中で該当しそうな者はいなかった」


かつての事件を知っているとなると、十五年くらい前にすでにそれなりの要職についていた者かしら?

そんなことを思いながらルドの言葉を聞いていた私の耳が、思いもかけない言葉を拾った。


「あ、それは僕ですね。僕がウェルズ公に漏洩しました」


…はい!?


所長室の応接セットを挟んで私と兄が腰かけ、向かいにルドが座っている。

ロキはルドの背後に、ダグラスは私たちの背後に立っていた。

そこから少し離れて窓枠の端にもたれていたレオが声の発生源だ。


レオは少しうつむきがちに、誰とも視線を合わせることなく話し始める。


「元々僕は王妃が公爵家の内情を探るために遣わした護衛です。王妃は以前とは違った行動を取るエレナ様を特に気にしていました。ライアン殿下の婚約者として問題がないか調べるように言われたのです」


ということは、転生した私が前のエレナとは全然違う行動を取り始めたのがことの発端ってこと?


「さすがに王妃直属の近衛騎士を公爵家の護衛に送るわけにもいかず、日頃は表に出ることが少なく周りにもあまり知られていなかった僕が送られることになりました。ご存じの通り隷属のアーティファクトがあったので僕が王妃を裏切る心配が皆無だったせいもあるでしょう」


なるほど。

たしかに王妃にとってはこの上なく安全な駒なわけだ。


「王妃は安心しきっていましたが、隷属のアーティファクトが担保しているのは所有者の命令に背かないことだけ。抜け穴というのはどこにでもあるもので、僕が公爵にはっきりとかつての事件のことを告げることはできませんでしたが、仄めかすことは可能だったのです」

「ということは、お前は事件の真相を知っているということか?」


ダグラスの言葉に、うつむきがちに話していたレオが顔を上げた。


「ほぼすべてのことを」


知っている。


レオは、事件の真相を、知っている。

数多の作品の中から読んでいただきありがとうございます。


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