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悪役令嬢は解放方法を見つける

『ああ、私は何という物を作り出してしまったのだろう』


その乱れた字には書いた本人の心の揺れが表れていた。

筆跡を見る限り、奥付のサインと同じ人物だろう。


『いくら脅され厳命されたとはいえ、人を人と思わないような物を作り出してしまった。これが世の中にどんな影響をもたらすか』


恐れ慄く気持ちが字からあふれている。


このサインを書いた人が隷属のアーティファクトを作り出した人物と見て間違いないだろう。


『一度隷属された者は解放されない。そんなことがあっていいはずがない。もしこの本が見つかれば私は極刑に処されるだろう。それでも、人として、私はここに記す』


続く言葉に私は自分の心臓がうるさく鼓動を刻むのを感じた。


『隷属のアーティファクトからの解放』


ああ!

求めていたものがそこにあった。


走り書きのその文字は古代語を理解できなければ読むことは不可能だ。

ここで私がこの本に出会えたのはある意味奇跡に思えた。

はやる気持ちで私は先を読み進める。


『隷属のアーティファクトからの解放には所有者の協力が不可欠である』


そこに書かれていた方法は簡単にいうとこうだった。


一つ、所有者が隷属者の解放を願っていること。


一つ、所有者の青に血液を注ぐこと。その際マーブル模様を通り越して紫になるまで所有者の血液を注ぐ必要がある。


一つ、マーブル模様が紫に変わってから、所有者が隷属者の白に対して血液を注ぐこと。隷属者がいる時点で白は赤に変わっているが、その上からさらに注ぐ必要がある。


条件は三つだが、いずれの条件にも所有者の気持ちと協力が不可欠だということはわかった。


これってかなり難しい条件よね。

そもそもそんな物まで使って誰かを隷属させたいと思っている者がわざわざ解放しようとするのか、という話だ。


よほど奇特な者か、その隷属者のことを大切に思う者が所有者にならない限り可能性は限りなくゼロに近い。


『奴らに知られずに解放する方法を仕掛けるにはこれしかなかった。しかし残念ながら未だ一人も解放された者はいない』


『奴ら』というのはおそらくこの開発者にアーティファクトを作らせた者だろう。


『隷属の白に血液を注ぐというのは、自らが隷属される立場になるのではないかという懸念を孕んでいる。決してそんなことはないのだが。いずれにせよ、それでもと願う者はとんと表れなかった』


ああー……。

一度登録されると解放されることも変更されることも無いと言われているとはいえ、イレギュラーなことをしたらその前提も当てにならないと思われたということか。

まぁたしかに、元々の隷属者の代わりに自身が囚われるのではないかと心配になるのはわかる。


『いつかこの機能が活用され、不当に囚われるものが解放されることを私は願う』


文はそこで終わっていた。


製作者は誰かに脅されて隷属のアーティファクトを作ったものの、脅迫者の目を盗んで解放の機能を追加した。

しかし今までその機能が使われることはなく解放された隷属者はいなかったのだろう。

そうこうしている内に時間は過ぎていき、もはやその詳細もわからないまま使われ続けてきたということだ。


しかし所有者が王妃である限りレオの解放は無理だよね。

となればどうするのがいいのか。


「お嬢さま、何が書かれていたんですか?」


痺れを切らしたのかダグラスが問いかけてきた。


「そうですわね。隷属のアーティファクトの詳細と解放方法について書かれていましたわ」

「……!その方法とは?」


ダグラスもデュランもやはり気になるのだろう。

身を乗り出して聞いてくる。


「……詳細に関しましてはデュランが言った内容と変わりませんわね。解放方法については……もう少し調べる必要がありますわ」


私は方法について二人に知らせなかった。

なぜなら今から私がしようとしていることを反対すると思うからだ。


「王妃がレオの所有者である限りレオは解放されませんわ」

「まぁ、あの王妃があえてレオを手放すとは思えないからな」


デュランの言葉を聞きながら、私は続ける。


「レオの解放のためにも、まずは所有者を私に変更したいと思いますの」


そう。

条件を満たすためには必須のこと。


私はレオの解放を願っている。

そしてあの製作者を信じようと思う。


だから。

たとえ私が隷属者になってしまうという懸念があったとしても、あの手順通りにやってみようと思った。


でも書かれていたことをすべて伝えたらダグラスもデュランも反対するよね。

かといってまったく教えなければどうにかして知ろうとするだろうし嘘を言えばバレる。

それならある程度まで本当のことを言えばいい。


そう決めると、私はどうやって王妃から所有者の権利を奪うかを相談するのだった。

数多の作品の中から読んでいただきありがとうございます。


少しでも続きが気になりましたら、ブックマーク登録や評価などしていただけるととても励みになります。


よろしくお願いします。

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