悪役令嬢はなだめる
「あなたがその貴族宅へ乗り込んでしまってはことが公になってしまうでしょう?」
「犯罪を犯しているんだから当然だ」
「お気持ちはわかりますわ。罪は罰せられるべきです。でも相手は貴族。庶民に対して何か罪を犯したとしても、そのことがきちんと罰せられるとは限りません」
嫌な考えだけどね。
でもここはそういう世界。
「それは…そうだが」
いくら情報ギルドの長であっても貴族社会においての力が強いわけではない。
もちろん、今まで得てきた貴族の醜聞や情報を使えば可能だろう。
しかしそれをすれば今後ギルドに依頼してくる貴族はいなくなる。
つまり仕事が無くなるということだ。
「だから私の出番なのです」
「どういうことだ?」
「私は貴族。さらに言うのであれば高位貴族です。正面から正々堂々と訪問して、妹さんを連れ帰ってみせますわ」
つかの間、デュランが言葉を失っている。
「その代わり、今この場で先ほどの条件で正式に契約を結んでいただきます。もちろん、その条件に私が妹さんを助けられた場合という内容を含んでいただいてけっこうですわ」
「…本当にそれでいいのか?」
「もちろんです」
深呼吸して、何かしらの気持ちを呑み込んだのかデュランが再びソファに腰を下ろした。
「こんな荒唐無稽な契約なんて初めてだ」
「生きていればいろいろなことがありますわよ」
「お嬢ちゃん、お前はいったいいくつなんだ…」
私の言葉に呆れたようなデュランの言葉が返る。
あなたと同じ年よ。
私は心の中で呟いた。
生きていれば本当にいろいろなことが起こるのよ。
例えば、異世界に転生してしまうとかね。
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