7.うちの猫が何やらおかしい sideリコメンディット
最近、視線を感じる。気がつくと、シャノアールがこちらをジーと見つめているのだ。こちらが視線に気がつき目が合うと慌てて反らされる。それに、こちらの言葉を理解しているような気がする、妙に聞き分けがよく、ものすごく空気を読んでいるように見える。
シャノアールとは産まれた時からの付き合いで、毛並みの整った黒猫だ、目の色が金と銀のオッドアイである。どちらかというと人に懐きにくい性格をしており、自分からこちらに寄ってくることはなかった。名を呼べば渋々近寄ってくる感じだ。猫にしては長生きだと思っていたが、実は普通の猫ではなく猫に似た何からしいと両親から聞かされた。何でも、祖父が産まれる前からチェエ家に存在していたらしい。
そんな事をぼんやり考えていると、家
令から叔母が来ており、屋敷に通していいか確認があった。追い返したい気持ちの方が強かったが、それはそれで面倒なことになると思い、応接間に案内させた。どうせ用件は分かりきっていた。
応接間にはやや派手な服装をした化粧濃いめな母の姉が苛立った顔付きで待っていた。
「わたくしの紹介したご令嬢との縁談を断ったそうね。」
叔母は何かと結婚話を持ってくる。酷いときには断りもなく、直接令嬢を連れて押し掛けてくる。父から厳重注意されてからは、さすがに令嬢を連れてくることはなくなったが、かわりに釣書を送りつけてくるようになった。
「こんな辺境の地に来てくれるような奇特なお嬢さんなんてそうはいないでしょ?このわたくしだからこそ持ってこられる縁談なのよ。」
思わずため息が出てしまう。自慢ではないが、釣書は山ほど送られてきており叔母の手を借りなくても縁談には困らないのだ。逆に断るのが煩わしいくらいである。
「まあいいわ。今日、わたくしがわざわざこんな辺鄙な所に来てあげたのは、とっておきの縁談をもってきたからよ。」
叔母は得意気に釣書を見せてきた。いつの間にか俺の隣にきていたシャノアールが、釣書を覗きこんでいた。次の瞬間、予想外なことが起こった。
『シャーッッ!!』
その釣書に対してシャノアールが全身の毛を逆立て威嚇し、爪を立てビリビリにしてしまったのだ。
「キャーッ!?このクソネコ!何をしてるのよ!!」
叔母が悲鳴と怒声をあげているが、シャノアールも負けじとテーブルの上で
臨戦態勢をとっている。
『ニャーッニャニャッニャニャニャーッ!!』
「なんなのよ!あっちにお行き!しっしっ!」
叔母がシャノアールに手を振り上げようとしたため、俺は容赦なく叔母の腕を掴みお引き取りいただいた。