5.鶴の恩返し?
『…もし?もし?起きてくださいまし。』
なんでしょう、誰かが呼んでいます。
バシバシ、なんたが何かやわらかいものが私の顔を叩いているようです。バシバシ、バシバシ。しつこいです。バシバシ。
「ーやめてください!」
勢いよく私が起き上がると、そこには鶴がいました。
『やっと気が付いたのでございますね』
なんで、鶴が話しているのでしょうか。というか、何故、私の目の前に存在しているのでしょうか。これは夢?
『夢ではございません。あたくしはあの時、助けていただいた鶴でございます』
あのとき?記憶を辿ってみました。私に鶴の知り合いなどいたでしょうか。
『エトランジュの森で助けていただいた鶴でございます。たった10年前のことでございます』
「たった10年前って結構前な気がするのですが。」
『あたくしたちの寿命は千年を超えますので、人間とは感覚が違うのでごさいますね』
普通の鶴はそんなに長生きでしたでしょうか。そういえば、あの罠は魔獣用でした。
『魔獣ではございません。れっきとした聖獣でごいます』
鶴もとい聖獣(自称)は魔獣だと疑ったことに少し怒っているようです。
『あたくし、これでも恩返しにきたのでございます。タイミング良く倒れていたので、困り事もあることでしょう?』
倒れたことはタイミングがいいのかは、分かりませんが、取り敢えず恩返しに来たらしいです。
『あなた様の願いを何でも一つ叶えてさしあげます』
まじか?本当に何でも一つ叶えてくれるのでしょうか?
『はい、何でも叶えてさしあげます。偽善者で自己満足で自己肯定感高めな脳内お花畑の妹を抹殺することも可能でございますし。顔だけのボンクラ脳内お花畑の兄を真面目な頼りになる兄に取り替えることもできます。空気を読めない脳内お花畑な両親を新しい両親にすることもできますよ』
物騒な提案ばかりなのが気にかかりますが、願いが一つだけしか叶えられないのに、家族のことなんかに使うはずがありません。
『あらら、そうなのでございますね。てっきり困り事の処理を優先したいのかと思っておりました。』
私の願いはただ一つです。
「推しの飼い猫になりたいです。」