4.善行という名の厄介事
疲労とはなんでしょう。疲れ知らずってそんなわけないでしょう。私は、限界を通り越していたらしいです。
妹が持ち込む厄介事の処理は、すべて私に降りかかってきました。そもそも私以外の家族は妹が仕出かしたことを厄介事とは認識していませんでしたから。兄は寮に入っており数ヶ月に一回程度しか帰ってきません。
妹的には奴隷を解放してあげた、と思っているようですが、奴隷を買った貴族という認識を周りからされます。常識的な貴族はこの時点で、デスロイド家と距離をとるでしょう。だって我が国では奴隷制度禁止されてますから。外遊中(もちろん私はお留守番)に外国から奴隷をお買い上げしてしまったんですよね。それを美談のように言いふらす両親には黙れとフランスパンを口に突っ込みました。
そして、本当に買って連れて帰ってきただけだったんですよね。玄関に放置された少女は、ただ立ち尽くしていました。
とりあえず名前を聞いて、浴室に誘導しました。困ったことに彼女は、こちらの言葉が話せませんでした。幸い私は侯爵令嬢ですので、それなりの教育は受けていたので、話はできました。ここの使用人として働いてもらうにしても、言語から教えなくてはなりませんでした。
奴隷解放という名の自己満足に味を占めた妹は、それからも外遊するたびに奴隷を連れて帰り放置しました。
さらに孤児院訪問の際に持参する差し入れは、あらかじめ決められていましたが、妹の気分で急に変更されることがほとんどでした。なかでも困ったのが手作りのお菓子でした。ちょうど妹が学友に手作りクッキーを貰ったことがきっかけでした。心をこめた送りものは手作りが一番いいと思い込んだのです。今まで料理などしたことがない令嬢が、大人数のクッキーを作るなど無謀なことです。失敗すれば材料は無駄になるし、差し入れも出来なくなります。私は料理長と相談して、妹には生地の型抜きだけをしてもらいました。妹は2、3個型抜きをすると満足した様子で去っていきました。
そのあとは料理人が作ったクッキーを使用人達と協力して ラッピングしていきました。出来上がったクッキーは孤児院の子どもたちには大人気でしたが、大人達には不評だったようです。当初の予定でわ、学習用品や洋服、石鹸など日常的に使える物が物資として届けられる はずでしたから。
そして、最悪の厄介事がおこりました。
第二皇子皇子の婚約者である公爵令嬢に言いがかりをつけたのです。
妹としては、貴族という立場を利用して平民を虐げていた、悪役令嬢を糾弾してあげました。という善行のようですが、勘違いも甚だしい限りでした。
その平民は、偶然を装い皇子に接近し薬を飲ませ既成事実を作ろうとしていたのです。公爵令嬢は事前に気付き、犯罪になってしまうことを伝え、なんとか説得しようとしていたのです。そこに、妹が割って入り事態をややこしくしてしまいました。事件を公にしないように動いていた公爵令嬢でしたが、妹が介入したことで大騒ぎなってしまい、第二皇子の耳にもはいり、なし崩し的に平民は逮捕されてしまいました。
公爵家からもデスロイド家に抗議文が届き、話し合いの場が設けられました。事情説明を求められ、両親が身分平等を進めている妹は素晴らしい的な検討違いなことを語りだしたので、二人にラリアットをくらわして退場していただきました。
ついでに公爵令嬢を溺愛している第二皇子からも、眼をつけられ没落の危機は近いような気がします。
そして私は、心労がたたり倒れてしまうのでした。