3.私の家族③ sideノーブル
"ノーブル・デスロイド"
僕はデスロイド家の長男として産まれた。妹が二人いる。
アンジュは末の妹で、天使のような可愛さと優しさを持っている自慢の妹だ。
ジェネラルはよく分からない。存在が希薄でいるのか、いないのかも分からない時がある。外見が地味なせいだろうか。あまり興味もない。
だからといって、二人の妹に対して差別したこともない。アンジュとはよく出かけて、ジェネラルとは出かけたこともないのは兄妹であっても相性というものがあるだけだ。
ある日、庭で剣の稽古をしていると使用人達の話声が聞こえてきた。
「アンジュお嬢様は確かに天使なのかもしれない」
あたりまえなことを言っていると思った。
「あー天のお人には下々の苦労は理解出来ないものね」
僕はいつも通りアンジュが称賛される話題だと思っていたが、雲行きが怪しい。「人助けだと、ここに連れてくるだけで、あとはポイだものね」
「それにご自分で連れて来ておいて、顔も名前も覚えていない」
「あとは孤児院に行くのは控えていただきたいわ」
「本当よね。孤児院に持参するお菓子は手作りにしたいとか、急に言い出すし、用意する方の身にもなってほしいわ」
「だいたい学園の方でも大変らしわよ」「え?何かあったの?」
「うちの妹が在学してるんだけどさ、平民の子が皇子様にハニートラップしかけたんだって」
「うそでしょ?命しらずね」
「それで婚約者の公爵令嬢が、その子に注意したのよ」
「優しいわね。わざわざ注意してくれるなんて」
「そう思うわよね、ところが天使様は違ったのよ」
「うわー、いやな予感しかしないんだけど」
「なにをやらかしたのよ?」
「公爵令嬢が平民を苛めてるって大騒ぎして、かばったのよ」
「やばいわ、本当に天使様だわ」
使用人達が去って行ったあとも僕は動けなかった。
…妹が天使様と呼ばれているのは皮肉なのだと、僕は初めて気付いた。