補足─キャラ編②─
*ダズロ
ダズロは、テンプレ通りなら“ざまぁ”されて終わるような立ち位置ですが───以前、追放系作品のコミカライズのレビュー動画を見たとき、その作品の作画担当が画力のある漫画家さんらしく、主人公を追放する“剣聖”の父親がいかにも武人といった渋くてカッコいいナイスミドルで───え、この人、この後ただ“ざまぁ”されるだけで終わっちゃうの?勿体ない!と思ったのが何となく頭に残っていたためか、テンプレから外れていました。
まあ、その“いかにも武人といった渋い容姿”は、別のキャラに使って───ダズロは、もうちょっと線の細い端正な容姿なので、特にそのキャラの“救済”とかではないのですが。
この人もラムルと同じく、上手く描けなかった───というか、“剣聖”というキャラクターを活かせていないことに、忸怩たる思いがあります。いつか改訂するか、これからリベンジできたら───と思っています。
リゼラ出生時、ダズロが満面の笑みを浮かべるほど歓喜していたのは、レミラの命が一時危うくなって、母子ともに絶望的と見做されていたのが回復して、無事生まれたから余計に嬉しかったのと───初代当主と同じ色合いのファミラに続いて、リゼラが初代当主夫人の髪色と瞳の色を持っていたためです。
“一度目の人生”で、ダズロがファミラに剣術の才覚が感じられなくて失望を見せてしまったのは───『剣姫』という“神託”に加えて、紅髪紅眼という初代当主と同じ色合いだったせいで余計に期待してしまっていたからです。
今世でも、ダズロが騎士団長として駆り出されることなく、その目でファミラの剣術を見ていたら、同じ結果になっていました。
ファミラに関しては、父親として関わってこなかったせいで、ああなってしまったと後悔しているため───騎士として勤め上げ、公爵家をファルロに任せたら、責任を持ってファミラと共に暮らすつもりでいます。
勿論、甘やかすつもりは一切ありません。ダズロは、自分にも他人にも厳しい人なので、それまでに少しでも改心していないと、ファミラは大変なことになるだろうな。
*ファルロ
この話を書き始めるにあたって、設定をガチガチに決めてしまうと行き詰まることは解り切っていたので、方向性と終わり方だけを定めて、後は書きながら臨機応変に組み上げるつもりで書き出したのですが───リゼラが、ファルロに“神託”の真実を打ち明けるシーンだけは、最初から頭にありました。
ファルロは、リゼラに対してちょっとシスコン気味になってしまいましたが、リゼラが虐げられることなく共に育っていたら、至って普通の兄妹仲になっていたと思います。
契約の儀のとき、イルノラド公爵邸に現れたリゼラにファルロが驚いていたのは、ダズロに事情を聴かされていたものの、公女ではなくなったリゼラにはそんな義務はないのだから、蔑ろにされている皇子の親衛騎士なんて引き受けるわけがないと思っていたためです。
*ファミラ
実は───ファミラは、皇都編でのリゼラのライバル的位置のキャラとするつもりだったのですが、設定を固めていくうちに役不足に感じ、結局、こういう結果になりました。
“契約の儀”でジェスレムから授かった剣を【聖剣】に、リゼラの蒼い双眸や深青色の礼服と対になるような、赤を強調する容姿と、【聖騎士】を思わせる礼服にしたのはそのためだったのですが───残念です。まあ、リゼラのライバルキャラに関しては、いずれリベンジしたいと思っています。
そういえば、本編は大半がリゼラ視点なので、美醜については詳しく言及されていませんが、ファミラは普通に美人です。テンプレ悪役令嬢よろしく釣り目の苛烈系美人ですが。
悪役令嬢といえば───「この話、悪役令嬢モノの“原作”になりそうだな」と思いながら、書いていました。その場合、やはりファミラが主人公になるのでしょうか。
それか、レミラかジェミナというのもありかな。もしくは男性向け悪役転生でジェスレムか、ヒグスあるいはペギルか。
何にせよ、上手くやらないと自分の立場は良くなっても世界は終わっちゃいますが。
“一度目の人生”でのルガレドへの対応については、ファミラはどちらかというとジェスレムみたいな中性的な優男が好みなので、ルガレドに魅力を感じていなかったというのもあります。
*レミラ
差し伸べられた手をとったものの、自分で積極的に動こうとしなかったために幸せを掴めなかった“ドアマットヒロイン”というコンセプトで書いていました。
イルノラド公爵家預かりとなって、教師を手配してもらえたので、言葉遣いやマナーなどは身に着けたものの───コンプレックスを払拭することはできず、結局、自分を出来損ない扱いするバセドに屈してしまった───という経緯です。
レミラは、学ぶことができなかっただけで、決してスペックが低いわけではなかったので───バセドにもっと食らいつくなり、ダズロかセロムに訴えるなり、状況を変えようと足掻けば、もっと違う結果になっていたはずでした。
リゼラが“神託”を受けた当時は、頼りにしていた先代イルノラド公爵がすでに亡くなっていてバセドの蛮行が酷くなってきた時期で、夫のダズロも同志であった彎月騎士団前団長の件で精神的に余裕がなく、味方となってくれる者が誰一人おらず───かなり不安定になっていたところに、ダズロの聖堂での発言が止めとなって、一気に壊れてしまいました。
ファミラに自分を、リゼラに妹を重ねていただけでなく───ダズロが聖堂で見せた態度から、“出来損ない”を生んでしまったことで公爵家を追い出されるのではないかと恐れ、自分は“優秀”な娘を生んだとアピールするためにも、事実はさておき、とにかくファミラを持ち上げていたというのもあります。
これらの経緯を描くためにレミラ視点の話も書こうかと考えていましたが───話が冗長になり過ぎたのと、レミラの過去を強調するだけで後悔も反省もない話になってしまうので、書くのは断念しました。
レミラが自分の仕出かしたことを自覚して後悔もしくは反省しないのであれば、レミラにも辛い過去があったんだよとアピールするだけの話になって、すっきりしないよな───と。
ファミラと同じく、作中でレミラの容姿については言及されていませんが、普通に美人です。ファルロはダズロ似、ファミラはレミラ似という設定となっています。
レミラの神託が『一女』だったのは、平民として生まれ幼くして亡くなったために、ピックアップされるような職業や立場がなかったからです。
*バセド
イルノラド公爵家の惨状を作り出した諸悪の根源。
バセドは、イルノラド公爵領の代官を務める弟のカイドにコンプレックスを持っていましたが、それは初恋の女性が弟を選んだことに起因していて───実は、頭の出来にはそこまで大差はありません。バセドは頭が悪いというより、不勉強で視野狭窄なだけです。
バセドには素行の悪い幼馴染がいて、その男と過ごす───というより付き従うことが多く、性格形成の段階でかなり影響を受けています。幼馴染と一緒になって、露店から商品を盗んだり、他人から持ち物を巻き上げたりしていたので、バセドは窃盗や横領をすることに何の抵抗もありませんでした。
幼い頃から窃盗やカツアゲを繰り返していたことも、次期代官の候補に挙がらなかった原因の一つとなっています。
そんなクズ男を自邸の家令にさせたのは、単に先代イルノラド公爵がお人好しだったからです。バセドの父の心情を慮ったのと、機会を与えれば更生するだろうという甘い考えがありました。
バセドが代官が世襲制だと思い込んでいたのは、仲間内で将来の話になったときに、その幼馴染の男から「お前はいいよな。代官を継ぐんだろ」と言われて、「そうか。祖父も父も代官を務めているのだから、自分が次の代官になるんだ」と考え、そのまま思い込んだ───という経緯です。
カイドが代官の勉強を始めたときも、次男で跡を継げないから、他の職業に就くために勉強しているのだと勘違いして───次男は大変だなと、一心に勉強するカイドを陰で笑っていました。
ある程度成長しても次期代官としての教育が始まらないことを疑問に思わなかったのは、成人したら、代官補佐となって少しずつ仕事を教えてもらえるのだと思っていたからです。
ダズロから事実を聴かされてすぐに納得したのは───カイドが次期代官だと知って、激昂してカイドに詰め寄ったときに、父に同じことを聴かされていたためです。そのときは、父がカイドを贔屓した先代イルノラド公爵に阿って、そんな嘘を吐いたのだと思い込んで信じようとしなかったのですが───当時のいざこざを知らないはずのダズロに全く同じことを聴かされ、信じたくなくても信じるざるを得なかった───という感じです。
レミラ同様、これらの経緯をまとめたバセド視点の話を書くつもりでしたが───入れる余地がなかったのと、この男も、子供時代の窃盗のように見逃してもらうどころか取り返しのつかない事態となったことに、ただ愕然としているだけなので、反省や後悔をすることのないクズ男の勝手な言い分になりかねないと思い、断念しました。
まあ、この男に関しては、ダズロからの制裁は勿論、リゼラが自分で言い返すことができているので良しとします。




