7話 攻略心得その1『情報収集』
[はぁ]
[どうしたんだよ、溜息なんて柄にも無い]
強制イベント開始が始まった次の日の朝、眠い双眸を擦りつつ哀愁を混入させた吐息を漏らすとそれを察知した晴人は近づいてきた。いや、待て待て溜息に柄とか関係ないだろそれに俺はいつも眠い感じだろと、思いつつ唾と共に飲み込み
[なんでもないんだ。あぁそういえば晴人に聞きたい事があるんだけど]
昨日、ギャルゲーをやって気がついた序盤やるべき事、そう情報収集を実行する。
[聞きたい事?お前から聞きたい事聞かれるなんてもしかしたら初めてかもな?なんだ?]
あれ、そんなに俺って晴人に興味なかったのか?いや、そんな事はない聞くタイミングがなかっただけだけ。
[そのさ、今から言う2人について知ってる事あったら教えて欲しいんだけど]
[は?]
丁重に頼み事をした途端晴人は訝る目で疑問を飛ばしてきた。
[なんだよ?ダメなのかよ]
[いやいや、あっ!お前まさか]
[なんか邪推してないか?俺はそんな深い意味で聞いてるわけじゃないぞ]
[いやいや、良いんだ]
否定をすると晴人はそんなのお構いなしにうんうんと意味深な相槌を見せる。
[2人って事はな、そう言う事なんだよな。でも、逆恨みしすぎるのは良くないぞ]
[俺別にリア充とかそういった部類の人にアニメバカにされたからとかじゃないぞ。後もう教えてもらえなくても良いや。]
これ以上問いても茶化されて情報収集なんて無理だと確信したのでそっぽを向く。
[あ?拗ねたな?]
[いや、拗ねてない。この年で拗ねるわけないだろ]
[へー、そうか。で?誰の情報が欲しいんだ]
いや、教えてくれるのかよ?本当にこいつはわからないと内心ぼやきつつも確認のため
[聞いた理由とかは言えないぞ?]と尋ねる。
[別に俺に関係ある事ならまだしも優斗が聞かれたくない事なら聞いたりしねーよ]
真剣な眼差しで言われ一瞬後ずさった。
晴人は容姿端麗な上にいつもはおちゃらけていて自分勝手な奴だと思いがちだが困った人がいたら相談に乗ったりして昔からモテていた。
俺はそんなイケメンパワーに押された体をすぐに立て直し深く深呼吸をしてから2人の人物の名前を述べる。
[そ、そうか。じゃあ聞くが1年1組の神崎 真斗と1年4組の澤村 紗奈さんについて教えてほしい。]
[へー、理由は問わないって言ったけどその2人について情報が欲しいとは気になるな]
晴人は頬を引き上げつつ俺の顔を覗き込んでくる。
それに対して俺が真顔で返答して数秒後。
[人間言葉2割、顔8割の割合で本性が現れるとか言われるけど、多分お前3割、0割だわ。]
いや、なら俺の残り7割の本性どこにあんだよ、、、と思ったがここは晴人の次の言葉を待つべく口を噤む。
[まあ、いいや。じゃあまず1年1組俺らがアイドル真斗についてな、あ、先に言うが俺もこの学校きて3日目だから教えられる事なんて微々たるものだからな。それを考慮して聞けよ話ズレたが真斗は今言った通りアイドル的な存在。2次元用語で主人公または主人公の側近的なやつだな]
[それってやっぱりバスケ部に入る事とかか?]
[よく知ってるな、確かにそれも主人公と俺が思う1つの理由だな。だがそれだけじゃないあいつの凄みは俺が話した感じだけどあいつ物事を達観視する能力がずば抜けて高い。]
もう、そんな主人公と話してる時点で晴人もかなり主人公に近い存在なのか?と尊敬の意を抱きつつ晴人の言ったことで引っ掛かりを覚える。
[達観視するってどんな意味なんだ?]
[その言葉通りあいつは場を操作しきってる。考えて欲しいが大衆が集まって話をする時全員が全員参加出来てると思うか?]
[いや、ないな]
絶対とは言い切れないがこのクラスだけを見ていても5、6組人以上集まって会話を繰り広げると少なくとも1人は相槌や沈黙でその場が流れる。多分それは必然的であって何不具合ない日常の一コマだ。
[そうだろ?なかなか入れない人間もいればすぐに入れる人間もいる。そうするとある事が生まれる]
[カーストか、]
[その通り、そしてカースト発生は妬み恨みなどその他幾つかの負の念が生まれる。]
晴人が真斗の話の途中この話を介入させる意味をまだ完璧に理解し得てないが何となく真斗の人間性と情報を脳裏に刻んでゴール地点は分からないものの色んなパターンを想定して攻略までの意図口を完成させていく。
[なるほど、真斗はその妬みや恨みと言った負の感情を抱かせないようにコントロールする力を持っているって事か、でもどうやってそんな事。]
晴人の言いたいことはわかったし、それが出来るなら主人公か少なくともカースト上位には食い込めるのは間違いがないがその方法がわからない。俺はそんな奴がクラスにいても気にはならないが多分大抵のリアルを生きてる奴にはそんな完璧主人公の事を気にくわない人が多いのは当たり前だし、それこそ自然の摂理と言っても過言でないほど自然なことだと思う。
[多分、俺が見た限り入学した瞬間からあいつはクラス全員の趣味や短所長所を把握しきってる]
[えっ]
[ふっ、そうなるよな?俺は、見てしまったんだよあいつのカバンを]
[えっ?]
2度俺は腑抜けた声が漏れる。
1度目は真斗への恐怖。そして2度目は晴人への恐怖。いや、真斗のその仲良くなるための執念と言うか努力もすごいけどきもいけど、晴人のワンチャン警察沙汰になる事を平気で言ってるのも怖い!!妖美な保険教師!何で晴人を、俺の大事な友人をその問題児に入れなかったんだ?助ける理由をくれればもっと早くもっと早く助けられたのに。1人寂寥感に包まれつつ下を向いていると、
[あぁ大丈夫だ!他のクラスはまだやってないようだから?]
晴人は意味深かな事を言ってくる。
[大丈夫じゃないだろ晴人!!な、晴人話は幾らでも聞いてやるからな?もうやめろよ。]
[いや、何のことだよ?]
[誤魔化すなよ!友達だろ?もういいじゃないか全て受け止めるからな?]
[え?そんなこと言われても]
[そんな事じゃないだろ!!]
[、、、、、]
[何の話をしてるんですか?]
俺が晴人に自白するよう問い詰めているといつのまにか来ていたのか隣の席から3次元美少女の早乙女さんがこちらを覗きこんでいた。
[いや、なんでもないよ]
[そうですか?かなり深刻そうな顔でお話していませんでした?]
[いやいや、俺たちの問題だから大丈夫]
晴人の犯罪を覆い隠すべく片目に晴人を覗きつつ詭弁を吐く。
[おい、俺の事をなんか悪者みたいに見てないか?]
[いや、そんな事ない。大丈夫だから俺も背負うから]
[あっ、まさか俺が真斗のカバン意図的に見たとか思ってる?]
[お、おまっ、良いのかよ早乙女さんがいる所で]
俺の気遣いなど露知らず晴人は自分から自らの行動を露呈させる。
[いや、そもそも昨日部活見学に行ったらたまたま真斗のカバンが部室の机から下に落ちててノートが開かれてたんだよ]
[え?]
何そのまるでゲームみたいな状況。
俺はまだそんな事が現実で起こるなど信用しきれず再確認を施す。
[本当にそ、そうなのか、、?]
[まだ、疑ってるな、、、お前の中の俺ってそんなに怪しいか?]
[あぁ、開かれたノートを盗み見ると言う虚言を言う程度には]
[おい!まだ、そんなこと言って、、もう良いやなんでも。でも本当に本当だからな]
晴人はあからさまに拗ねた様子を作りつつ[あーあ、せっかく教えたのに]と、呟き外を眺める。
流石に言いすぎたと自粛し
[悪い、疑いすぎた。晴人の言った事信じるから]謝罪の念を込めて軽く会釈する。
[まあ、良いよ。俺も開かれたページすぐにカバンにしまわずに少し他のページ覗いたのも事実だし、結果お前の役に立てたからな]
[あぁ、役に立った。]
[何かそのノートに書いてあったんですか?]
俺と晴人が仲直りも兼ねて余話を繰り広げていると興味を持ったのか早乙女さんが質問を投げかけてくる。
[まあ、いろいろな晴人、]
[あぁ、あれは凄かったなだって1人に1ページぎっしりだぜ?すごいよな]
いや、この学校口軽い人多すぎひん?それって個人情報保護法で守られない範囲の情報じゃなくね?
俺は顰蹙した顔で晴人に[言って大丈夫かよ]と言うと[あー早乙女さんなら大丈夫じゃろ]と完全に早乙女さんを信じているのか人心満々に答える。
[1人に1ページ?それって何の事ですか?]
[あぁ、それはですね真斗って知ってます?]
[1年1組の神崎さんの事ですよね?]
それから晴人は早乙女さんにさっきの内容を要点だけをまとめて伝えた。
[、、、、そこまで努力出来るのが凄いなーって]
[凄いですか、、、]
晴人が要点をまとめて説明した内容に対して少し負に落ちない様子で早乙女さんは受け取る。
[凄いですよ、クラスに馴染むためにあそこまで積極的に解析するなんて化け物ですよ。]
[ピーポーンパーンポーン]
晴人が熱烈に凄さを主張していると朝の学活のチャイムが鳴った。
[優斗さんはさっきの話、晴人さんの話を聞いてどう思いました?]
チャイム後生徒達がゾロゾロと担任の、くる前に席に戻る中早乙女さんがこちらを伺いながら尋ねてきた。
[うーん、どう思ったか、か。普通なんじゃない?]
[普通とは]
普通とはと言われても。
俺は早乙女さんの問題に対して解答に戸惑う。
俺は晴人から真斗について聞かされた時は、単純にその行為自体の表面だけを見て非難してしまったが、実際誰だって、いや、この2次元の住人である俺ですら表には出さずとも上手くやっていけるか苦悩したし。
真斗は苦悩の末俺とは対にやり方はどうあれ作戦を立てて実行して実際に成功してみんなと仲良くなった。
それを俺が、ただ少し苦悩してそれでも流れに身を任せて今の今まで来た俺が否定してはならないと思った。
なのでここは
[別に、多分みんなそうなんだよ、考えて考えてどうやって馴染んだら正解かとかそんな感じに]
素直な意見を説く。
[じゃあ、優斗くんも?]
[そりゃ、そうだよ。色々考えてる]
[そうですか]
そんな他愛のない話をしてから暫くして皆が席に着き静まった教室にガラガラと言う音とともに担任である女性が入ってくる。
それから昨日と同じように主席番号順が2番目に早い人が学活を仕切る。
そして最後に担任の言葉で
[今日の私の受け持つ国語は昨日決め忘れた委員会と係を決めるからな]
と、言うとクラスの陽キャ達は[何やろー]とか[一緒に〇〇やろー]なんて楽しそうに駄弁っている。
俺はその光景を眺めつつ文化祭実行委員に俺はなる!と国民的アニメの言葉を引用して闘志に熱を燃やす。だってなれなかった時考えてみ?晴人の言葉通りの陽キャだったとして普通に関わるなんて不可能でしょ?
[優斗さんは何かやりたい委員会とかあるんですか?]
神社にお祈りしていなかった自分の行動を悔みながら瞳に意志を込めていると右耳に天然水のように透明感のある声が響いた。
[俺は文化祭実行委員会になろうかなって思ってるよ]
[そうですか、、、]
[逆に早乙女さんは何やるの?]
[うーん、まだ決まってないです、、でも、もし男女混合なら一緒のでも良いですか?]
いや、ごめん。無理。いやいや、怖い。ここまでこの3次元美少女と関わり続けると多分帰り道とか突然後ろから刺されたりしそうで怖い。
[うーん、でも、文化祭実行委員会なんてめんどくさいと思うよ?]
[だ、大丈夫です。雑用でもやるのでお願いします。]
何故か俺にお願いする形で頭を軽く下げられてしまい少し背徳感を感じる。
[いや、別に俺の許可とかはないけど。なれたらね?人気だった時とか俺すらなれるかわかんないしね。]
[そうですね。なれたらよろしくお願いしますね]
約束をしてから2時間後担任の柴田先生の授業が始まる。