秘密
「レポートが終わらん」
生徒と休み時間を一緒に過ごしているぶん、レポートを書く時間が減る。
なので、俺は毎晩のように居残りでレポートを書くことになった。
「さて、帰るか」
20時頃、俺は帰ろうとするとそこに今帰ろうとする生徒がいた。
「ソラ、こんな時間まで何やってるんだ?」
「ちょっと、勉強・・・・・・いや、山口には本当のこと言うわ」
そう言うと、ソラは尻込みするように、
「小説書いてるの」
「えっ」
「だから、小説書いてるの。何度も言わせないで」
ソラの発言は意外だった。
だが、俺はとても嬉しかった。
「完成してるところまで読ませてくれ」
「えっ、読んでくれるの?」
「あぁ、読んでみたい」
「じゃあ、明日持ってくる」
そう言って帰って行った。
◇ ◇ ◇
1日後
俺はソラの小説を読んだ。
うーん。
「どう?」
「内容は悪くないが文章表現が下手すぎる」
「私もそれはわかってるんだけど、どうすればいいんだ」
「もっと、色んな小説を読んでみたらどうだ、学校の図書館にいっぱい本あるだろ」
「わかった、やってみる」
そこからのソラは凄かった。
1日1冊以上本を読み、1週間に1度俺に小説を見せてくれた。
そして、俺はコイツなら小説家になれるんじゃないかと思った。
「なぁ、ソラ新人賞に応募してみないか」
「ばぁーーか、私なんか無理だよ」
「いや、お前ならできる」
俺の輝く瞳を見てソラは納得した。
「じゃあ、応募してみる」
ソラは頬を赤くして言った。
◇ ◇ ◇
数週間後
タイミングよく小説の新人賞が行われていたのでソラはそれに応募した。
1次選考、2次選考、3次選考と進んでいき最終選考も突破しホテルのパーティー会場に案内された。
「俺なんかが付き添いできてよかったのか?」
「ばぁーーか、山口のおかげでここまで来れたんだから胸を張れ!」
そんなことを言っていると賞の発表が始まる。
「大賞『次元の彼方のその先へ』ソラ・ミレドさん」
「えっ、私が大賞!?」
「おめでとう」
会場が拍手の嵐で巻き荒れる。
いや、本当にお前は凄いよ。
おめでとう。
そして、ソラはスピーチをする。
「私が大賞を取れたのは一人のバカな男のお陰です」
ん?
「そのバカとの出会いは川に溺れた猫を助けるために川に飛び込んだのが初めです」
いや、お前が落としたんだろ。
「私はいじめられたり孤立したりすることもありましたがそのバカのお陰で助かりました」
・・・・・・。
「本当にありがとう」
そう言ってソラのスピーチは終わった。
俺は胸がドキドキするのをその時感じた。