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謎の女剣士

うがぁ!


オレの身長の二倍くらいはありそうな魔物、デスベアーが襲いかかってきた!

くそぅ、まだオレにはやりたいことが…

いや、よく考えればそんなにやりたいことはないか…

そう思えば一瞬で終わらせてくれるなら…


「いやだぁぁ!やっぱり死にたくない!」


オレは思わず目を閉じて頭を抱えるようにしゃがんだ。

すると


ズシャ!!


今まで聞いたことのないような、なんとも表現ができない音が聞こえた。


「えっ?」


一瞬、その音はきっとオレの体が両断された音で、オレの頭はまだその感覚を知覚できていない。これから激しい痛みを感じるか、もしくはこのまま静かに、しかしあっという間に意識がなくなるんだ、と思った。


しかしそれは違った。

オレの意識は、2秒経っても3秒経っても失われていない。

目を開けるのは怖いが、うっすら、ゆっくり、おそるおそる震えながら目を開ける。

すると、


「うわぁっっっ!」


なんとデスベアーが両断されて倒れていた。ズシャっというあの音は斬撃の音だったのだ。一直線に斬られている。間違いなく鋭利な刃物だろう。


「えっ?これってまさか、堕天使様がやってくれたんですか?」

この際ゴマスリでもなんでも良い、もみてをしながら言うことの一つや二つ聞く、いや聞かせていただきます!

「いや、違うわよ」

なんだ違うのかい。

「え、じゃぁ…」

といってオレは周りを見渡す。


すると、紫色の髪、漆黒の鎧を着た女性が仁王立ちをしてこちらを見ていた。

他には誰もいない、間違いなくこのお方が命を救ってくれたのだ!


「あ、あの…助けてくれてありがとうございます」

「ちょっとぉ、私の時と言葉遣いが違うんですけどぉ」

うるさい黙ってくれ。

オレは役立たずな怠惰天使に向かって鋭い視線を送る。

というか今初めてまともに堕天使を見たが、オレよりも身長が低くてショートカット、天使なだけあって雌雄がよくわからん格好だった。

いや今はそれどころではない。

とりあえず助けてくれた礼を言わねば。


「すみません、ちょっと道に迷ってしまって気づいたら魔物に襲われ…ってあれ」


オレが近づこうとしたその時。

鎧を着た彼女は、ふらぁっと体が揺らいだと思ったら、そのまま顔から倒れた。


「え、ちょっ!大丈夫か?」


慌てて駆け寄って体を仰向けにさせる。

息は…している。


「ちょっと…おーい、大丈夫ですか〜!?」

「…った」


ん?


「なにか…食べ物を…」

「食べ物?えっと、ちょっと待った。そんなこと言われても…」


すぐ近く、周りには草木しかない。倒れているデスベアーはあるけど調理なんかできない。


「まいったな。なんかないか…あ!」


オレはポケットの中を弄ると、なんと言うことでしょう。あんぱんが入っているではありませんか。

一歩はあんぱんを手に入れた!てってれー。

いや、そもそもそんなものをポケットの中に入れた覚えはないが…

まぁ良い。今はそれよりも。


オレはあんぱんの袋を開ける。

「大丈夫だよな…」念の為ちぎって一口食べてみる。

うん、普通のあんぱんだ。


「ほら、これを食べな」


オレはゴツゴツした鎧を感じながら謎の女剣士の上半身を起こし、あんぱんを口に含ませた。もちろん手でだ。誰だ余計なことを考えたのは。


「うぅ…なんかもそもそする…」

くぅっ!施しをしてもらってる身でありながらなんて贅沢な。

いやしかし命を救ってもらった恩人だ。ここで餓死されても目覚めが悪い。

「ちがう!あんぱんは餡の部分を食べてこそ!口の中でマリアージュするんだ!頑張って食え!」


何を言っているのかは自分でもよくわからないが、腹が減りすぎて意識が朦朧としているので、どんなことを言ったって覚えてなどいないだろう。

しかし女剣士はその小さい口で餡の部分を食べた瞬間


くわぁっっ!


という効果音がぴったりなほど突然目を覚ました。


「なんだ…なんだこれは…!しっとりとした食感の中に上品な甘さ、そして食べているのにわかる、口の中に広がる小麦の芳醇な香り…それが渾然一体となって私の口を、お腹を満たしていく」


それはうっとりした表情で大変饒舌なことを言い始める彼女を目にして、こう思わずにはいられない。

やっぱりオレは出会いの運がないのだろうか、と。

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