表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/85

身辺調査

 レオン・スカイラーの正体を暴くべく、ドロテアは、早速行動を開始した。



 まず、”ダンジョン村”に滞在する商人のネットワークを使い、奴の情報を集めることとした。


 当然、ドロテア自身が聞いて回るのではあからさますぎる。


 ミハウに、さり気ない様子で、商人たちへ聞き取りを行うことを指示する。




 ドロテア自身も、物陰に隠れ、レオンの動向を見張る。


 どうやら、レオンは未だに”ダンジョン村”の宿屋に滞在しているようだ。



 最初に見た時の通り、レオンは、大体においてハーレムを引き連れていた。


 奴が外出する時も、最低2人は傍についている。



 観察していくうちに気付いたが、どうやら、ハーレムの4人の中でも序列があるらしい。


 ドロテアが潜入した時に見た2人……、確か、イザベル、そしてマーナと呼ばれていた2人が、上位に立っているようだ。



 イザベルは、回復職(ヒーラー)のような出で立ちの女だ。胡散臭いほどの母性が、表情から滲み出ている。常に余裕に満ちたその表情は、底が見えない不気味さを与える。


 そしてマーナは、壁職(タンク)のようだ。女性ながらも(たくま)しい体を持っている。常に、鋭い視線を四方に配っている。彼女の不意を突くことは非常に難しいように思えた。


 他の2人も、その身のこなしから、結構な実力者である印象を受けた。



 これほどの実力者たちを(はべ)らせているのだ……、やはり、レオンには、何か()()があるはずだ。


 ドロテアは、その確信を強くしてゆく。




 そんな監視が数日続く。



 事務所内で小休止していたドロテアへ、ミハウが話しかけてきた。



「ああ、どうもお嬢様……。今日もお疲れさまですな。商人たちの噂やらなんやらを集めてきましたぜ」


 ミハウは、ドロテアの手に冷えたジュースを渡す。


 礼を言って受け取ると、早速口をつける。


「どうもありがとう。……それで?あのレオンって奴は、本当に上級貴族の一族っぽいの?」



「ええ……どうやらそのようで。


 今、実は、スカイラー一族は後継者争いで揉めているようでしてな。どうやら、スカイラー侯爵の体調があまり優れないとか。まあ、おおよそ長男と次男との争いなのですが……」


「……へぇ?まあ、普通に考えたら長男が継ぐんでしょうね。それの何が問題なの?というか、レオンと何の関係があるの?」



 疑問を浮かべるドロテアに、ミハウは愉快そうに口を歪める。



「ええ。それなんですが……。


 どうやら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()のではないか、という噂が流れていまして……」


 思わず、ドロテアは座っていた椅子からずり落ちそうになった。


「それって、もしかして……!」



「ええ……。後継者争いから逃げるように辺境へやってきた男、レオン・スカイラー。


 ……()()()()、真のスカイラー侯爵の長男だと噂されております」




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 ドロテアは、事務仕事を行っているカトリーヌの元へ行く。



 それに気が付いたカトリーヌは、書類に落としていた目をドロテアへ向けた。


「お、ドロテア。元気?」


 ひらひらと手を振るカトリーヌに、ドロテアが詰め寄る。



「カトリーヌさん!調べたいことがあるんです!」


 ずかずかと近寄ってきたドロテアに若干引き気味になりながら、カトリーヌが返す。


「わ、分かったから落ち着いて。そんなに興奮してどうしたの?」


「ええ。ここに投宿している、レオン・スカイラーですが……、奴が、スカイラー侯爵の(いわ)く付きの長男である可能性が出てきました。


 これを調べることで、スカイラーへ先制攻撃を与えられるかもしれません!」



 興奮して捲し立てるドロテアに向かって、カトリーヌは相槌を打つ。


「……なるほど?それは興味深いわね。ちょうど私も、その辺のことについて調べていた所なのよ。


 ……ほらこれ」



 カトリーヌは、手元にあったメモ用紙をドロテアに差し出す。


 そこには、几帳面な字が書かれていた。



『スカイラー侯爵の元へ献金を納めに行った時だった。ドアの向こうで侯爵がぼやいているのを聞いてしまった。


 どうやら、メアリーも、その子供も邪魔だとかどうとか?しかし、スカイラー侯爵の妻はメアリーという名前ではなかったはずだ。何となく、秘密の香りがする。このことは覚えておいてもいいだろう』



「……このメモは?」


 顔を上げたドロテアに、カトリーヌが答える。



「ピーターの奴が隠していた書類の中に埋もれてたのよ。


 ……どうやら奴も、スカイラーの息子について、キナ臭い物を感じていたようね」



「なるほど……」


 ドロテアは考え込む。



 ―――その数分のち。



 ドロテアは、何かを決意した顔で、カトリーヌを見つめる。



「カトリーヌさん……。私、中央都市に乗り込みます!


 この手でスカイラー侯爵の闇を暴き、この”ダンジョン村”を……商人ギルドを守ってみせます!!」



 ドロテアは大見得を切る。


 これは、やり遂げなければならないことなのだ。



 今は、後継ぎ騒動でごたごたしているようだが、それが終われば、矛先はこの商人ギルドへ向くだろう。


 それまでに、スカイラー一族に、一撃を与えておかねばならない。




 残された猶予は、そう多くないだろう。


 ドロテアの中の闘志は、激しく燃え上がっていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ