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謎のSランク元冒険者

 エドワードは、狩りに出掛けた山中で、久々に大物を狩れて、ほっとした顔をしていた。



 その獲物は、ギガローパーと呼ばれるモンスターだ。


 前述の、冒険者ギルドで定められた『危険モンスター一覧』では、Cランクとして登録されている。



 複数の触手を持ち、ヌメヌメと動くその体には、物理攻撃は通用しづらい。


 パーティによっては苦戦するだろう。エドワードも、冒険者時代は物理攻撃メインのアタッカーだったため、倒すのに苦労した。しかし、地道に斬撃を与えることで、なんとか倒すことができた。



 とりあえず、倒すことのできたギガローパーをある程度解体することにした。



 ギガローパーは名前の通り大型のローパーで、一人で運ぶには重すぎる。


 また、味の方も大味で、取る場所を選ばないと、食べられたものではない。



 円錐形をした体の中心にナタを入れ、大きく割る。


 小振りなハンティングナイフで、利用する部位を切り出してゆく。


 内臓や器官については、薬として売れる部分もあるのだ。また、やたらプルプルとした肉は、美容に効果があるとか何とかで、意外と高く売れる。



 その作業が終わると、体から生えた触手のうちで、まだ新しくて柔らかいものを切り取ってゆく。


 これは、強い弾力を持っているため、味をつけた上で、子供たちの駄菓子として売られたりする。



 それらの戦利品をまとめて背負うと、ふらつくほどの収穫となった。



 いざ売りに行こうとするが、いつも利用していた問屋のミハウは、”ダンジョン村”へ店の位置を変えていたことに気付く。



「売りに行くついでに、ドロテアの顔でも見に行くか……」


 そう呟いたエドワードは、”ダンジョン村”の方面に足を向ける。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「……ここが”ダンジョン村”か。結構繁盛してんだな」



 エドワードは、ローパーの肉片を担いだまま、きょろきょろと周囲を見回す。


 村どころか、街のように建物が立ち並び、その隙間を人々が行き交っている。


 よく見ると冒険者に限らず、その冒険者を目当てに、商人や大道芸人なども集まっているようだ。



 その全員が活気と希望に溢れている。



 ドロテアが、この光景のきっかけを作ったのだとしたら、それはとても偉大なことのはずだ。


 エドワードは、まるで自分の事のように誇らしく思った。



 ふと気づくと、周りの冒険者たちが、自分を眺めて、ひそひそと囁き交わしているのに気づいた。



 さすがに、この人混みでローパーの肉片を背負ったままうろつくのは目立つのだろう。さっさと下ろしてしまおう。


 そう判断したエドワードは、さっさと問屋を見つけ、その中に入った。




 カウンターで冒険者に対してやり取りをしていたミハウは、エドワードに気付いて声を掛ける。


「おお、エドワードじゃねえか。久しぶりだな。どうした?」


 対応していた冒険者の対応を他の店員に任せると、エドワードの方に寄ってくる。


「ああ、ちょっと大物を狩れたからな。ミハウの所で売ろうと思ってな……。

 ドロテアはここに居るか?」


「ん、ああ、タイミングが良いな。ちょうど来てたはずだ……。おーい!お嬢様!エドワードさんが来てるぜ!」



 ミハウは、店の裏手に向かって声を上げる。


 何故ミハウが、ドロテアの事をお嬢様と呼ぶのだ?と訝しく感じたエドワードだった。



 それに少し遅れ、はーいと返事する声が聞こえ、程なくドロテアが姿を現した。


「あっ、エドワード!いらっしゃい。来てくれたのね。どうしたの?」


「いや、大物が狩れたからな。ここに売りに来たんだが……、お嬢様って呼ばれてるのか?」


「ああ……」


 ドロテアは、少し照れたように言う。


「いや、この”ダンジョン村”の出資者だから、お嬢様ってさ。なんか気恥ずかしいけど、まあ良いかなって」


「なるほど。まあ、ドロテアが良いならいいだろうさ」


 エドワードが頷くと、ドロテアは興味津々といった感じで、背負っているローパーの肉片を覗く。


「で、一体何を狩ってきたの?」



「ああ、ローパーの内臓と器官、それと肉と触手だ。いくらで買ってくれる?」


 カウンターの上に、どさっとそれらを置く。


「うお、すげえ量だ。よくこれを一人で持って来れたな……。よし、こんなもんでどうだ?」


 ミハウは、ささっと計算すると、金額を紙に書き付け、エドワードに見せる。



 エドワードはそれを見る。想定していたより少し高額で買い取ってくれるようだ。


「ああ、十分だ。それで頼む」


「あい。じゃあこれが代金な。……おい、これしまっといてくれ」


 ミハウはエドワードに硬貨を渡すと、近くの店員に指図した。



「さて……、じゃあ、ドロテアの顔も見れたし、俺は帰ろうかな」


 店から出ようとしたエドワードを、ドロテアが追ってくる。


「あっ、待ってエドワード……。ちょっと、相談したいことがあるの。道で話さない?」


「ん……?構わないぞ」




 2人は、連れ立って店を出る。


「で?ドロテア。相談したいこととは何ですかな?」


「ええ、エドワード。それなんだけど……」


 ドロテアが口を開こうとしたその時だった。




 エドワードが問屋に入る前、店の前でこちらを見て囁き交わしていた冒険者がこちらへやって来た。


 精悍な感じの男性冒険者だ。装備の程度からして、Bランクはあるだろう。


「エドワードって……、あの、貴方は、冒険者エドワード……、エドワード・ベネディクトさん、ですよね?」



 ドロテアは驚いた。


 なぜ、こんな見たこともない冒険者が、エドワードのフルネームを知っているのだろう?


「……ああ、そうだが?」


 エドワードは、特に動じることも答える。



「やっぱり……、Sランク冒険者にして、若くしてその道から消えた、謎の天才、エドワードさんだ!ここで出会えるとは、光栄です!」


 冒険者は、感極まったように叫ぶ。




「……え?」



 ドロテアは、目を丸くしてエドワードを見る。口はぽかんと空いている。



 エドワード……元冒険者とは聞いてたけど……Sランクだったの!?




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