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月影の守護師  作者: ドッグファイター
第一章 守護師覚醒編
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08話 守護師と陰陽師

先に謝ります。すいません。


陰陽師がにわかに動き出した。だがそれは守護師の思惑が絡んでいるようであった。

 緩やかな上りが続く山道。幅は人が三人程度並んで歩けるぐらいだろうか、山道にしては比較的広い土道である。辺りに立ち並ぶ木々が、山上へと続く曲がりくねった道の全容を隠している。

 街は春の陽気に人の服装も徐々に薄くなっているが、山に入るとまだまだ肌寒い。ましてやこれから陽が落ちて気温が下がる夜になることを考えると、まだまだ防寒対策が必要だろう。

 そんな中を準と泰典は気にすることなく黙々と歩いていたのだが、泰典が強張った強面の表情のまま愚痴を零した。


「もうそろそろ月の出の時間か。まったく、こんな夜にこんな場所で集会を開くなんて、やっぱり君たちは正気じゃないな。よほど自分たちの力に自信がないと出来ないことだからな」


 泰典は空を見上げてから、また一つ溜息を吐いた。そして浮かない表情のまま歩を進める。


「それに関しては俺も同じ意見や。わざわざこんな日に名家の当主を集めるなんて、何か起きるでって言ってるようなもんやからな。たぶんやけど、根石家当主の思惑が絡んでると思うで。昨日も犬走家の屋敷に来て、美姫さんと何か話してたし」


「歴代の根石家の中で、最も秀逸と謳われる根石三姉妹。その長女であり、当主の舞美子さんのことだな。自他ともに認める犬走家当主の懐刀であり、深慮の軍師。確かに、あの人が出張ると普通は何かあると考えるな」


「さすがおかしらさん、よう知ってるやん。ちまたでは天眼てんがんの持ち主っちゅう噂もあるぐらい、何でも見通せるらしいからな。あの人にはもう何か見えてるんかもな。それこそ魔霊の線もやっぱ、あり得るで」


「魔霊が出現すれば、陰陽師では対処が難しい。いくら式神を駆使しても限度があるからな。あいつらはそれを簡単に越えてくる存在だ。戦国武将の魂とは本当に厄介なものだ」


 泰典は何かを思い出しているのか、神妙な顔つきで前を見たままそう答えた。魔霊とは戦国武将の魂が悪霊となって現れた霊なのだろう。この泰典も魔霊には色々と苦戦させられてきたような言い回しである。


「せやからこそ、守護霊を使える守護師がおるんやろ。戦国武将には戦国武将で対抗する。それで俺等は今の平穏を維持してきたんやからな」


 なぜかドヤ顔の準に泰典は苦笑しながらも「そうだな」と一言答えて、今度はまた神妙な顔つきで準を見た。


「ちなみに君は守護霊持ちなのか?」


 泰典の問い掛けに準は首を横に振った。


「まだや。『御霊降(みたまお)ろしの儀』は主家に認められんと受けることは出来(でけ)へん。悔しいけど俺はまだそこまではいってない。実力も経験もまだまだや。でもな、絶対にそこまでいったるって決めてるんや。そしていずれは美姫さんの片腕と呼ばれるようになるんが俺の目標や!」


「そうか。ちなみにその犬走家の新当主には、もう守護霊はいるのだろ?」


「当然や。でもちょっと癖のある守護霊で、なかなか言うこと聞いてくれへんみたいで難儀してるようやけど」


「そうなのか。守護霊にも色々いるとは聞くが、やはり戦国武将を御するのも一筋縄ではいかないってことだな」


「そうやな。でも、なんでそんなこと聞くんや? 美姫さんには何度も会ったことあるやろ」 


 準は不思議そうな顔で泰典の顔を覗き込むように見ている。


「ああ、もちろんだ。だが、あまり話したことは無い。基本的に陰陽師との窓口は根石家当主ということになっているからな」


「ああ、そういうことか。それで根石家当主の舞美子さんのことはよう知ってる訳や。じゃあ魔霊についても聞いてるんか?」


「まあ、色々とな。君はどこまで知っているんだ?」


「それは()()()のことを言うてるんか? それやったらはっきり言うて俺はほとんど知らん。過去に何があったかとかは、大まかには聞いてるけど詳しくは知らへん。機密事項みたいなもんやから、いくら名家の従者って言うても知らされてへん。四年前の事とかもな」


「そうか」


 そう言って泰典は黙り込んだ。この話題にはあまり触れたくないのか、素っ気ない態度で返事をした。それに対して準も気にすることなく黙々と歩いている。

 守護師として、そして陰陽師としての立場がそうさせているのか。思うところはそれぞれあるのだろう。先程も話題には出たが詳しくは話をしていない。四年前に何か大きな出来事があったようだが、それについてお互いに詮索することもなかった。

 しばらくの沈黙の後、口を開いたのは泰典だった。 


「まあ、魔霊については俺も詳しくはわからない。今日だって現れたとか確証は何も無いから気にしないでくれ」


「ああ、わかってる」


 前を向いたまま準は頷いた。


「それより、望楼家との関係は相変わらずなのか? 守護師同士のいざこざに陰陽師が巻き込まれると困るんだがな」


 泰典は少し苦笑いになるが、準も同じように苦い顔つきになった。


「それについても同意見や。ちょい根が深いような気もするけど、それは俺の知るところやないわ。まあ、俺は与えられた任務を遂行するだけや」


「ということは、犬走家当主から既に命が下されているのか」


「ああ、そうや。お出迎えっちゅう大事な任務がな」


「そうか。それでは、ほぼ任務完了ってとこか」


 泰典と準は雑談しながら山道を歩き続け、気が付けば辺りは薄っすらと暗くなり始めていた。そしてある場所まで辿り着いたところで二人は歩を止めた。

 道は二股に分かれており、一つはそのまま緩やかな山道が道なりに続いている。そしてもう一つは脇に逸れていく道で、入口の両側に人間大ほどの大きな石が二つ並んでおり、その間を塞ぐように注連縄しめなわで結ばれている。


「やっと結界が張られているところまで辿り着いたな。ちゃんと結界の術も機能している。それに周辺の結界もここから見る限り問題無いようだ」


「そうやな。そしたらここからは一人で向かってくれへんか」


「ここで任務完了か?」


「いや、お迎えはもう一人おるんや」


「もう一人だって!? っておいっ!」


 準はニコッと笑ってから泰典の呼びかけに答えることなく、注連縄の下を潜り抜けた。準が一度立ち止まった瞬間、準の体の周りが瞬く間に薄っすらと黄色に光り出した。すると準が走り出したと思えば、瞬く間に山上の方へと消えていった。


「人外なる力……か。確かに、あれは俺たちには狂気の沙汰にしか見えないな」


 準があっという間に走り去った方向を眺めながら、泰典はゆっくりと注連縄の下を通り抜けて立ち止まる。空を見上げれば、東の方角に夕月が顔を見せていた。まだ薄っすらとしたその姿はまるで寝起きのような顔だ。これから起こる()()を見届けようと目を覚ましたのだろうか。それともこの月がその()()を呼び寄せるのだろうか。


「それにしても、もう一人って誰なんだ」


 一人で考えても解決しないであろう疑問を自問自答しているようだ。しばらく立ち止まっていたが、先に見える山上を見上げ泰典は再び歩を進めた。



ここまで読んで頂き、ありがとうございます!


今回もまた主人公が……。すみません。次話からは間違いなく出て来ます、はい。

どうしてもこの二人にもう少し喋って欲しかったので。お許しください。


では、次回もお楽しみに。よろしくお願いします!

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