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月影の守護師  作者: ドッグファイター
第一章 守護師覚醒編
38/67

38話 軍師・根石舞美子

遅くなりました。


冬馬が暴走して魔霊秀吉とぶつかった結果、膨大な霊気が辺りに飛散しようとしてした。

根石美音が防壁をさらに大きく作ろうとするが……

 舞美子に幾多の修羅場を潜り抜けてきた経験があると言っても、やはり感情が表情に出てしまうこともある。そして、それがマイナスに作用してしまうこともあるのだ。 

 美音の精神状態が不安定になって霊気の操作が上手く出来ないのは、負の感情が心を支配し始めたからだろう。


 ここ、守護之(しゅごの)御魂(みたま)神社(じんじゃ)は元々霊気の濃度が異様に高い場所だ。日本中に張り巡らされている霊脈の中心部がここなのだ。その霊脈に乗って霊気がここで集結して、そしてまた日本中へ散らばって行く。人間の体に例えると心臓部に当たり、守護師や陰陽師にとって極めて重要な場所なのである。

 そんな所で霊気を調整する結界が破れ、今はその流れが乱れているのだ。激しい霊気を用いた戦いをすれば、必然的に精神状態をコントロールするのも守護師と言えども簡単ではない。ましてや美音は守護師としての戦いはまだまだ経験が浅いので、些細な精神的な乱れでもそれが大きく影響してしまうのである。


 舞美子は心眼の術を使って美音の心を覗いてみる。


(あの完璧な舞美姉ちゃんでも、やられることがあるんや……。どうしよう……あの暴れてるお兄ちゃんはもうあかんかもしれへんし……)


 やはり冬馬が自我を失ったことで、舞美子がこの戦いにおける軍師としての役割に失敗したとでも思っているようだ。


 美音は歳が離れていることもあり、小さい頃から舞美子に甘えて育ってきた。だから、こういった局面になるとどうしても姉に頼ってしまう。それは明日美にも言えることだが、姉に守られているという安心感があるようだ。それがいまいち危機感に欠けるところに繋がっているのだ。だが、これは何事も完璧に(こな)し、難しい局面でもいつも余裕で対応している舞美子がそうさせている面もあった。だからこそ、今回は経験を積ませるために敢えてこの危険な戦いに参加させたのである。

 美音は霊力で言えば、三姉妹の中では一番と言っていい程の持ち主だ。それに霊気の扱いも秀逸で、器用に何でも(こな)す。だが、繊細が故に心には(もろ)い側面もあった。しかも、今回妹たちは魔霊を相手に戦闘をするのが初めてなのだ。図太い性格の明日美は全く心配していなかったが、さすがに美音はまだ少し早かったかもしれない。

 それでも舞美子にとってはこれも想定内だった。周りには主家を始め、名家の当主たちが勢揃いしている。姉の自分や明日美が居て、美音が慕って止まない犬走美姫もいるのだ。美音に経験を積ませるには絶好の機会と思い、両親の反対を押し切り連れてきた経緯もある。自分が絶対に守るという舞美子の決意は並々ならぬものがあった。


 美音の霊気がさらに弱まってきたところで、舞美子が美音の真後ろに立って補助するような形で手を前に突き出した。


「美音、うちを誰やと思うてるんやぁ? これも全部想定内やし、大したことやあらへんわぁ。明日美!」


「わかってる!」


 明日美が待ってましたと言わんばかりの顔で美音の横に来ると、舞美子と同じように両手を前に出した。


「美音! あたしら姉妹が三人揃ったら無敵なん忘れてへんか! お前は(なん)も心配せんと、思いっきり霊気使(つこ)うてたらええんや!」


 明日美に声を掛けられた美音の顔から不安の色が消えていく。


「うん!」


 明日美も普段は美音といつも喧嘩ばかりしているが、根は妹想いの優しい女の子なのだ。明日美は大雑把で自由奔放に見えるが、人の気持ちがわかる優しい子だということを舞美子はよく知っている。舞美子の意図は、明日美には話さなくてもよくわかっているようだ。

 ここで美音はようやく安心したのか、霊気の大きな壁を完成させた。三姉妹で作り上げた大きな白い防壁が目の前に現れたのである。美音の顔もいつの間にか自信に満ちたドヤ顔に戻っていた。


「ようやったなぁ、美音」


「バッチリや!」


 美音はいつものように「クックックッ」と薄ら笑いを浮かべる。実はこれ、舞美子の不敵な笑みを真似ているのだが、全く不敵に見えなくて舞美子はいつも微笑ましく見てしまう。可愛くて仕方のない妹を愛らしく感じるのだが、今はそうも言っていられない状況である。明日美が体を寄せ合うように美音へ小突いてじゃれ合っているところで舞美子が叫ぶ。


「二人共、来るで!」


 舞美子がそう叫んだ直後、冬馬と魔霊秀吉がいる二人の場所から(まばゆ)い閃光が走ったかと思えば、「ドンッ‼」という轟音と共に霊気の大爆発が起きる。暗い神社の参道が明るく照らされ、桜並木と奇麗に並んだ石畳が姿を現すが、誰もそれに見惚れる余裕もない。


「うぐぐっ……! なんちゅう霊気の量なんや……!」


 こちらもまだ経験の浅い準が体を地に這うようにして耐えている。さすがに霊力の強い二人が無作為に暴れると、周りにいる者たちは(たま)ったものではない。準だけでなく、守護師たちは一斉に身体強化を強めてその爆発に(こら)えていた。

 これは霊気の爆発なので、物理的な被害はほとんど出ない。精々が風圧による建築物や木々の倒壊ぐらいだが、それも舞美子が闇夜結界を張ったので被害はほとんど出ないはずだ。だが、霊気を宿している守護師にとって大量の霊気は爆弾に匹敵するほどの危険なものなのだ。霊気の障壁を作っていなければ、どんなダメージが出るかわかったものではない。

 しばらくして霊気の爆風も収まり、舞美子はすぐさま周囲の状況を確認する。冬馬と魔霊秀吉は少し距離を取っていて、お互いの出方を窺っているように見える。この二人が再び動き出す前に、こちらも出来ることは手を打たなければならない。

 この場所は三姉妹で作った防壁が完璧な役割を果たしていて問題なかった。唯一心配だったのは、社付近で一人でいた雪である。社が壊れると大変なことになるし、何よりあの爆風を雪は一人で耐えなければならなかったからだ。

 社の側にいる雪を見ると、立ち上がって夜空を見上げる元気な姿が見えた。身体強化で白く光った大きな体が煌々と輝いていたので、恐らく心配はないだろう。少しホッとした舞美子は離れている雪に頭の中で話し掛けた。


⦅雪ちゃん、無事で良かったわぁ⦆


⦅何とかね。でも、本気で心配してるようには聞こえないよ?⦆


 雪が冗談めかして返してくるのは珍しい。違和感を感じた舞美子が雪をよく見てみると、彼女は微笑んでいるようにも見えた。普段の雪が感情を表に出すことはまずないと言っていい。急に不安になった舞美子は駆け寄ろうとしたのだが、雪が左手を前に出してそれを制した。


⦅ああ、ボクは大丈夫。それよりも今はあの二人を何とかする方が最優先。でも、さすがに魔霊の霊気を二回もまともに食らったから、ボクはしばらく何も出来ないかも⦆


 そう言って雪はまたも微笑んで見せた。雪の表情に感情が垣間見えた時は、彼女にとって異常事態だと言える。雪とは子どもの頃からの長い付き合いになる舞美子にとって、それが(つぶさ)にわかるのが返って心苦しい。だが、今は雪の言う通り、冬馬の暴走と魔霊秀吉の悪巧みを阻止しなければならないのだ。


⦅わかったわぁ。そしたら、雪ちゃんはそこで待機しててくれへんやろかぁ⦆


(やしろ)を守ればいいんだね?⦆


⦅さすがわかってるなぁ。一応、陰陽師はんも守ってくれるとは思うけどぉ⦆


 陰陽師の泰典を見やると、彼は社のすぐ横で隠れるように身を潜めている。恐らくは神社周辺に張ってある結界の維持に注力しているのだろう。魔霊との戦いには干渉しないつもりのようだ。


⦅念のため、従家の二人にも回ってもらうさかいになぁ⦆


⦅承知。ありがとう、まーちゃん⦆


⦅じゃあ、頼むわなぁ⦆


 舞美子は頭の中でそう言うと不敵な笑みから微笑みに変えた。

 天端石雪とは同い年であり、幼馴染でもあるのだ。幼い頃からよく共に行動しているので、お互いの性格や考え方などは知り尽くしている。気心知れた間柄なので、こういう場合はすぐに意図を理解してくれるのは頼もしい限りである。

 この頭の中でする会話は思念術といって、心が通じている者同士なら声に出さなくとも会話が出来るという霊気術の一種である。実は冬馬の心を読んだ心眼術もこの応用でもあるのだ。


「さてと、あとはあの御二方にも」


「言われんでもわかっとるわ。しかし、あの天端石の娘もあれを一人で耐えるのだから大したものだ」


 舞美子が本丸家当主と三之丸当主に依頼しようとしたが、その前に二人は動き出していた。舞美子としては、この二人は家格で言えば上に当たるので、(わずら)わしい手間が省けて渡りに船である。


「よろしゅうお願いします」


 軽く頭を下げた舞美子のお辞儀に二人は手を上げて応え、青と赤の光を体に宿しながら雪の居る方へ即座に移動した。


 ちなみに、残りの名家である雪以外の八下(はっか)の当主たちもしっかりと動いている。不測の事態に備え、離れた場所でここを取り囲むようにして見守っているのだ。これは一度に名家の当主たちの身に万が一の事態が起こると、その後の対応が出来なくなるからである。

 本来ならば、両主のうちのどちらかは別の場所に居なければならないのだが、この場に主家の二人がいること自体が異例と言える。それでも舞美子は結界の構築も含めて何重にも策を巡らせ、いかなる状況下でも対応出来るように手は打ってあるのだ。美姫が戦っても月也が静観しているのは、この事も関係しているのである。

 強力な魔霊を相手にするには、神経質になるぐらいが丁度良いのだ。これは舞美子が今まで培ってきた対魔霊戦で起こり得る、最大限の可能性を考慮してのものであった。


(さてと、どないしたもんかいなぁ)


 空を見上げると、相も変わらず満月の十四夜月が煌々と輝いている。悪霊に力を与える月明りは、同じように守護師にも力を与えてくれる。


「あんさんの力を借りひん手はないかぁ」


 そう呟いた舞美子は、トレードマークの不敵な笑みが妖艶に輝き出す。舞美子が再び頭の中を高速で回転させていると、美姫が話し掛けてきた。

 常人の者なら真剣に思案しているところに話し掛けられると、その思考は一旦止まるのが普通だろう。だが、舞美子はこれが止まらないのである。舞美子は肩まで伸びた髪を左指でクリクリと弄らせながら美姫を見た。失礼に当たるようなこの態度だが、これは彼女特有の“癖”である。集中して考えを巡らせている時によくする仕草であり、もちろん美姫にもそれがわかっているので気にする様子もない。


「舞美姉さん、秀吉は復活するまでに下準備をしてたってことなの?」


「そういう事ですなぁ。少なくとも、復活するまでの間に情報収集してはったってことになりますなぁ」


 これは舞美子の憶測である。だが、そう考えることで魔霊秀吉の行動や言動に辻褄が合うのだ。

 それにしても、情報収集するにしても魔霊秀吉一人では限界があるはずだ。ひょっとすると協力者がいるのかもしれないと舞美子は考える。だが、魔霊という死者の魂に協力出来るのは、かなり特殊な人間ということになるだろう。

 ここで今度は、準が二人の間を割るように質問を投げかけた。


「情報収集ってどういう意味ですか!? 魔霊は実体化せーへんでも、そんなん出来るんですか!?」


「たぶん霊脈を活用して、何らかの方法で入手したってことだと思うわ。所詮は死者の魂のことなんて、生きている人間からしてみればわからない事だらけなのよ」


 準の言うことは最もだろう。悪霊は実体化していなければ存在しているのかもわからないのに、そこに意思を持った魂に何が出来るというのか。魔霊とはよくよく考えてみても、実体化していること自体が不可思議な存在なのだ。魂だけで何かが出来たとしても、何ら不思議ではないと考えるのは当然かもしれない。美姫が上空を睨みながら答えているが、この場にいる全員の注目は上空である。


「フフフッ。魔霊というものは本当に厄介な存在ですよ。人間と同じように自我があって知恵があるのですから。まあ、元々は人間だったわけですから当然かもしれませんが」


 望楼月也も皆と同じように冬馬と魔霊秀吉のいる方角を見上げながら、独り言のように呟く。

 月也の言う通り、悪霊と違って魔霊には自我がある。それに、悪霊にだって全く意思が無いとは言い切れないのだ。生きている人間の魂に反応するのだから、無意識的にも本能という意思で動いているようなものだ。それが霊気の塊となって実体化しているのだから、常人では対抗出来ない恐ろしい力を持っているのは当然なのである。

 そしてその中でも、魔霊は何よりもその霊力があまりにも強大過ぎるのだ。いくら右指輪でパワーアップした守護師とはいえ、簡単には倒せない相手なのである。


 魔霊を倒す方法は大きく分けて二つある。


 一つは魔霊を術によって封印することだ。幸いなことに、ここには封印するのに必要な媒体となるもの、つまり社がすぐ近くにあるので実行可能である。ここに封印の術で閉じ込めてしまえば一番手っ取り早いのである。

 そしてもう一つは、魔霊秀吉の魂に集まる霊気を分散させて実体化を解くことである。これは悪霊を倒すことと同じ原理なのだが、魔霊の場合は魂が崇高なので消滅することはない。それでも、上手くいけば数年から数十年は実体化が出来なくなる。前回、魔霊秀吉が現れた時もこの手段で難を逃れていたのである。


 強力な魔霊に対抗し得る可能性があるのは、右指輪をした守護師ぐらいだろう。陰陽師も式神を使役すれば出来るのだが、魔霊は悪霊を大量に呼び出すことが多いので、一度に相手をするには守護師の方が向いている。

 そんな守護師でも右指輪で戦える時間は限られている。持てる力を全開にして戦えば、数分と持たないだろう。魔霊と戦うには守護師が召喚する守護霊を使役するのが定石なのである。守護霊もまた戦国武将の魂が実体化したもので、その力もまた強力なのである。

 だが、舞美子は魔霊が現れたにも拘わらず、まだ守護霊を召喚していない。美姫からも自分の指示で召喚術を使うと申し出があったが、舞美子はまだその判断に至っていなかった。なぜなら、魔霊秀吉から()()()()を手に入れなくてはならないからだ。守護霊を召喚すると、その情報を手に入れることが難しくなると考えていたのである。


 実のところ、今回の戦いには何段にも重ね合わせた作戦があったのだ。


 まず第一段として、二之丸冬馬の守護師としての適性を見極めることだった。冬馬の情報は詳細に掴んではいたが、当主たちが実際に見るのは今回が初めてなのである。従家第二位の地位でもある二之丸家の復活は、先代が亡くなって以来の守護師界での悲願なのだ。その力を見る為に、わざわざ因縁のある光太と勇一を相手にさせたのだ。冬馬の力を他の当主たちに認めさせなければならなかったからである。これに関してはすでにクリアしたと言えるだろう。


 第二段は冬馬が二之丸家当主を受け継ぐことである。当主の権限は親から子へ本来は伝授されるのだが、先代当主の冬二はもうこの世にはいない。こうした場合は主家と従家の当主たちによって、ここ守護之御魂神社で『相承(そうしょう)の儀』を行わなければならない。ただし、先代の遺志がどのような形で受け継がれるかは、他の当主ではわからないことなのだ。こればかりは二之丸家の血を引く冬馬に任せるしかないのである。最悪は今日が無理でも、受け継がれる方法を冬馬が見つければ問題はない。それから両主の二家が承認すれば、冬馬を二之丸家当主として迎え入れることが可能にはなる。


 そして重要な案件がもう一つあった。それが狭間直輝のことだった。これに関しては完全に舞美子の独断で決めていた秘策でもあったのだが、今は望楼月也にも気付かれてしまっている。ただ、知られていることがわかった時点で返ってやりやすくなったのも事実であった。


(まずは情報を掴まへんと意味ありまへんからなぁ)


 舞美子は頭の中の記憶を四年前に戻した。


 狭間直輝が死んだ後の葬式の日だった。通夜と葬式が終わり、あとは火葬するという時だった。狭間直輝の遺体が()()()のだ。誰かが持ち去ったのか、それとも直輝が蘇生でもしたのか。現実的には前者なのだが、後者もあり得なくはなかったのだ。


 厳密にいえば、霊気術による蘇生は可能ではある。


 だが、それは禁忌であり、すでに継承されていないはずの術なのだ。誰が何のためにと考えると、魔霊秀吉が残した言葉が手掛かりになった。


『ワシはただでは転ばにゃあ男だぎゃ』


 この言葉が直輝のことに繋がるという確信はなかった。しかし、直輝の遺体が消えたと同時に、名家の守護師一人が姿を消したのだ。もしかすると、その消えた守護師が直輝の遺体を持ち去ったのかもしれない。何かの間違いであると思いたかったが、舞美子にはその因果関係を否定することが出来なかった。なぜなら、その消えた守護師は禁忌の術を使い得る立場だったからである。だが、検証するにはあまりにも情報が無さ過ぎた。この四年間で手掛かりになる事は一つとして出て来ていない。しかも、直輝の遺体も消息不明になった守護師も未だに見つかっていないのだ。

 だからこそ、その情報を入手するまでは下手に相手を刺激しない方が良いと考えている。舞美子も四年間この時を待っていたのだ。だからといって、ようやく表に出て来た魔霊秀吉を易々見逃すというミスを犯してもいけない。魔霊は野に放っておいてはいけない存在なのである。

 舞美子は魔霊を倒す前に、何としてでも直輝の情報を入手することを考えていた。魔霊秀吉を封印するのは、それからでも遅くないと思っている。その為にこれまでに舞美子は色々な可能性を考え抜いて、主家の美姫にも隠して秘密裏(ひみつり)に準備をしてきたのだ。


「それで、この状況をどうするかですね。守護霊を召喚すると、あの太閤さんはどんな手段を使ってくるかわかりません。ですが、時と場合によっては急がなければなりませんよ?」


 どうやら月也も舞美子と同じ考えのようだ。

 この望楼月也も舞美子同様、いわゆる頭脳派で戦う守護師である。もちろん、守護師としての資質も主家という立場に遜色のない実力の持ち主ではある。だが、それ以上に緻密(ちみつ)な戦略を立てて戦うタイプの守護師なのだ。今日は舞美子に指揮を任せてはいるが、恐らくは自分の考えと似たような戦略を立てているに違いないと舞美子は見ている。


 舞美子が月也とは表向きのやり取りをするには理由があった。それは両主の望楼家と犬走家は仲がよろしくないからである。昔から「両雄並び立たず」と言うが、守護師界でもそれは例外ではなかった。この二家は当然ながら仲間ではあるのだが、お互いにライバル心が非常に強い。そして、それは昔から血筋として霊力と共に代々へ脈々と受け継がれているのである。

 望楼家を本丸家と三之丸家が、犬走家を二之丸家と根石家が支持するという構図が何百年と続いているのである。そういった背景もあってか、舞美子は望楼家の当主をある意味で一番警戒していると言ってもいいだろう。だが、先の会議でも言っていたが、今はいがみ合っている場合ではないのだ。ここはお互いに腹の探り合いをするよりも、狭間直輝の情報を手に入れることが先決だと舞美子は考えていた。


「ええ、その通りです。まあ少なくとも、あの太閤はんはまだ何か手を隠したはりますけど」


「隠しているというより、仲間がいる……とかでしょうか。それならばこれまでの事も辻褄が合いますし、ひょっとすると消息不明になったあの人も現れるかもしれませんね」


 月也がわずかにニヤリとした顔を見せた時、それとは逆にほんの少し沈んだ顔になった守護師がいた。舞美子はその光景を、やれやれといった表情で見るしかなかった。




ここまで読んで頂き、ありがとうございます!


予告よりもかなり遅くなり本当に申し訳ありません。

今後は書きあがり次第、なるべく早く投稿するようにします。今後とも、どうぞよろしくお願いします。

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