95ギガントロックは優しいです
カッコいい鎧を着たおじさんが下りてきたけど、僕はギガントロックに夢中です。だってカッコいいし可愛いんだもん。知らず知らずギガントロックに近づいていきます。
「ハルトお目々キラキラ」
「フウもキラキラ」
「みんなきりゃきりゃ」
みんなも僕にくっついてギガントロックの方に。もっと近づこうとしたら、誰かが僕達のこと止めました。そして僕のこと抱っこして、僕の顔の前には知らないおじさんの顔が。ビクッて固まる僕。それはフウ達も同じね。
「お前がハルトか。可愛いな。俺の名前はペインだ。お前のお母さんの兄さんだぞ。よろしくな」
「………」
「ん? どうした?」
「お兄様、手紙でハルトちゃんは人見知りだと知らせてあったでしょう」
お母さんがペインおじさんから僕を抱き直して、ちょっと離れてくれます。それのおかげでハッとした僕。あ、挨拶しないと。ギガントロックに触らせて貰えないかも。
すぐに抱っこから下ろしてもらって挨拶です。まぁ、挨拶して、オニキスが居ないから、すぐにお父さんの後ろに隠れちゃったけど。
「あなた、怖がらせてどうするのもう。ハルトちゃんこんにちは。ルイチェルよ」
紫の長いサラサラした毛でとっても美人な女の人が、ペインおじさんにの隣に立ちます。それからお兄さんとお姉さんがそれぞれ挨拶してくれて、クイールお兄さんとバーバラお姉さんです。
「あ~、なんだ。うちの家族で久しぶりの小さい子だったからな。見た瞬間クイール達の小さな頃を思い出して、懐かしくてすぐに声をかけっちまった。すまんすまん」
ってペインおじさんが話してる最中にも、僕達の目はギガントロックの方に。だって本当にカッコいいんだよ。
それに気がついたペインおじさんが、ギガントロックの名前教えてくれました。名前はロガー。おじさんがもっとずっと若い頃から一緒にいる大切な友達だって。
僕はお父さんから少し出て、ロガーなでなでしてもいいか聞きました。そしたらロガーに挨拶して、ロガーが僕のこと友達になっても良いって思ってくれたら触っても良いって。認められないと触った瞬間飛ばされるって。
こ、こわっ!! でもなでなでしたい。そしてできるなら肩の乗せて歩いて欲しい。
「ハルトにはまだちょっと無理かもしれないな」
「お兄様、ハルトちゃんは誰とでもお友達になれる、素晴らしい子なのよ」
僕はフウ達とうんって頷き合って、そっとロガーに近づきます。ロガーの前に立ってみんなできおつけ! 初めましての挨拶から。
「はじめまちて、ハルトでしゅ! おともだちなってくだしゃい!」
僕の後にフウ達も挨拶して、最後にもう1回みんなでお願いしました。
じぃーっと見つめてくるロガー。少ししてロガーが手を動かして、手を振り上げる格好しました。ペインおじさんが僕の前に出てこようとしてお母さんが止めます。きっとペインおじさん僕達が攻撃されるって思ったから、僕達の所に来てくれようとしたんだね。でも大丈夫だよ。何でだか分かんないけど、ロガー怒ってないって分かるんだ。
ロガーが振り上げた手を自分の頭の方に。そして頭に手を置くと、『グガガガッ!!』って笑ったんだよ。お顔もとってもニコニコ。それからそっと手を下ろしてきて、僕達の前に手を下ろしてくれました。僕が触っても良いか聞いたら、こくんって頷くロガー。僕はロガーの手をそっとなでなでします。
うわぁ! 本当に岩だ! ゴツゴツしてるし、それからちょっとだけひやっとします。僕がなでなでしてるうちに、フウ達はちゃっかり手のひらに乗って楽しんでるし。僕の頭の上でロガーが『グガガァッ』って何か言ってます。スノーがなんて言ってるか教えてくれたよ。オニキスもディアンもいないからね。スノーだけが頼りだよ。大丈夫かな?
スノーによると、ロガーは僕にも手のひらに乗れって言ってるって。え? 乗って良いの? まさかこんなすぐに乗せてくれるなんて。僕思わず聞いちゃったよ。本当に乗っても良いのかって。そしたロガーが頷きました。
嬉しいけど靴のままで良いの? そしたらそれで良いって。
手のひらと言っても大きなロガーの手に僕が乗るのはひと苦労。お父さんが抱っこして乗せてくれました。
みんなで手のひらに座って、そしたら手が上に上がっていきます。ロガーの胸の辺りまで僕達を上げると、ロガーは立ち上がって、玄関前をゆっくり歩き始めました。
ドシンッ、ドシンッ! ぜんぜん揺れなくて、岩で硬いはずの手なのに乗り心地最高です。
僕達が喜んでたら、何とロガーがジャンプ! ドッシーンッ!! けっこう凄い音が。でもそれも楽しくてみんなでキャッキャはしゃいじゃいます。
「これは…あの手紙の内容は本当だったんだな。こんなにすぐにロガーが懐いたのを初めて見たぞ」
「だから言ったでしょう。誰とでもお友達になれる、素晴らしい子だって」
「おいペイン、後で地面を直せよ」
「………何の事だ?」
そのまま少しの間、僕達を連れて歩いてくれたロガー。みんなの前に戻ってそっと手を下ろします。またお父さんに抱っこしてもらって、ロガーの手から下りました。すぐにみんなでお礼を言います。お礼を言ったら喜んでくれたよ。
『ガガガ』
「?」
「まいにち、あしょぶってきいてりゅの」
「まいにち、いいの?」
『ガギギギギッ!!』
ペインおじさんに聞いたら、訓練とおじさんの用事がない時なら、ロガーと遊んで良いって。優しいロガーだけど、契約主のおじさんがいないところで何かあったら、ロガーもおじさんも責任を取らなくちゃいけないから。約束守れるなら遊んで良いって言いました。
もちろん約束守るよ! 僕達みんなで頭の上で拍手です。ロガーも喜んでもう1回ジャンプ。…あ~あ、また地面が割れちゃった。
ロガーがゆっくり休めるように、特別にレイモンドおじさんの屋敷の庭に、ロガー専用のテントが。テントっていうか小屋っていうか。小屋と小屋の入り口以外には布がかぶせてあるの。イーサンさんがロガーのために作っておいてくれたんだよ。
ロガーにバイバイして、お出かけしようと思ってたけど、ペインおじさん達が到着したから、お出かけは明日に。ゆっくりお話がしたいからって、みんなでお屋敷に入りました。ロガーまた後でね。手を振ったら振り返してくれたよ。また後で遊ぼうね。
お屋敷に入って、みんなで休憩の部屋に。僕はオニキスとディアンがいなくてちょっと寂しいけど、ロガーのおかげで元気になれました。僕はペインおじさんにたくさん質問。フウ達も質問してるよ。
「ロガー、なにたべりゅの?」
「何でも食べるぞ。野菜も肉も魚も、石だって食べるんだぞ。でもロガーは花が好きだからな、花は食べない」
「フウ達はお外でもお部屋でも遊ぶの好きなの。ロガーはどっち?」
「ロガーは大きいからな。部屋には入れないだろう? 外で小さな魔獣達と遊ぶのが好きなんだ」
「今度、オレ達と川で遊んでもいいか?」
「いいが、この近くの川だと何処だ?」
「シュノーね、ロガーのあちゃまのうえに、のりちゃいの」
「頼めば乗せてくれるぞ」
「ハルト、そろそろ質問は終わりだ。ゆっくりお父さん達も話がしたいんだ」
質問の途中でお父さんに止められちゃいました。う~ん、しょうがない。後でまた質問しよう。
お父さん達がお話始めたから、レイモンドおじさんにロガーが見える場所聞いて、ロイと一緒にその場所に。椅子借りて窓からロガーのこと見ます。ロガーはイーサンさんが作ってくれた小屋の中からちょっとだけ出て、近くを飛んでた蝶々見てるみたい。ロガー! って呼んで手を振ったら、僕達の方見て手を振ってくれます。
立ち上がったロガー、下向いて何かして、それから僕達の所まで来ました。ロガーは立ち上がると、背がね2階までとどいちゃうんだよ。お屋敷は大きいからすれすれだけど、普通の家なら余裕です。
手を差し出してきたロガー。小さな花を上手に持ってます。
「くれりゅの?」
僕が両手出したら、その上にそっと、可愛い小さな花を置いてくれました。
『ぐぎぎ』
「ぷれじぇんとだって」
「ありがとう」
今度僕達もロガーに何かプレゼントしよう。何が良いか後でみんなで相談しなきゃ。オニキスやディアンも紹介したいし。2人とも早く帰ってこないかなぁ。