92妖精達の穢れを祓おう!
え? ディアンが運ぶ? まさかドラゴンになって運ぶの? ダメダメそんなの。街の中でそんなことしたら大騒ぎになっちゃうよ。お父さんもそう思ったみたい。慌ててディアンのことを止めます。
ディアンは僕達が慌ててるの見て、何慌ててるんだって顔してます。
「おい、まさか我でもそんなことはせん。もう夜でその妖精がいる所は人が居ないのだろう。我が抱えていってやると言っているのだ。フウ、ライ、お前たち行くぞ」
お父さんとレイモンドおじさんが何か言う前に、僕の周りにみんながくっついて乗って、最初にオニキスが窓から外に出ます。後ろを振り向けば、ディアンがレイモンドおじさんとイーサンさんを両脇に抱えて、窓から飛び出してきました。
屋根の上や木の上を走っていくオニキスたち。窓から出た瞬間はレイモンドおじさん達の小さな叫びが。叫びっていうか文句っていうか。まぁ、大の大人が両脇に抱えられて運ばれるなんて、そんなことほとんど無いだろうからね。僕やフレッドお兄ちゃんだったらおかしく無いだろうけど。
オニキスに運んでもらいながら、お父さんが小さな声で、着いたらすぐに謝らないとって言ってました。
シーライトだったら今の時間、みんなが家に帰ってお店通りにはほとんど人が出てないのに、ルリトリアは大会があるからなのか、それとも大きい街だからなのか、そこらじゅうまだ明るくて、人がいっぱい外に出てます。それでもその人達に見つからないのは、オニキス達が素早く移動してくれてるから。
明るい所を抜けて住宅街に入れば、さすがにあたりは暗くなって、オニキスがこれならもう見つからないって。ふと後ろを振り返ったら、レイモンドおじさん達が口を押さえてました。あ~、酔うよね。そんな抱えられてジャンプされたら。
壁が近づいてきて住宅も無くなって、フウとライが案内してくれた場所につきました。ついた途端、お父さんがレイモンドおじさんに謝りに、イーサンさんにも謝ってディアンのことを怒り始めます。お父さん今は妖精の方が先だよ。
お父さんが怒ってる間に、フウとライが僕を妖精さんの所に案内してくれます。草むらに近づくとその中から何人か妖精が飛び出して来ました。みんなとっても心配な顔してて、僕のこと見ると周りをぐるぐる回って僕のこと観察します。
「フウ、ライ、ハルト?」
「そうだよ。ハルトだよ。オニキスもみんな連れてきたよ」
「早く治してもらおう!」
妖精達はもう1回僕の周り回ったあと、僕とオニキス達だけ案内してくれるって。お父さん達はここまでって言いました。お父さんにそのこと伝えて、草むらの奥に入っていきます。
草むらの1番奥、妖精が5人、草のベットの上に寝てました。みんな体を黒いモヤモヤが包んでて、とっても苦しそうに呼吸してます。ていうか5人? こんなに穢れに襲われちゃってたの?
と、そんなことより早く穢れを祓ってあげなくちゃね。
オニキスと僕が一緒に力を合わせて、まとめて5人いっぺんに穢れを祓うことにしました。1人ずつ祓ってたら他の子がもっと具合が悪くなっちゃうかもしれないし、もし祓ってる間に、街の人達がここを通りかかったら面倒だからってオニキスが。
本当はオニキスが自分も穢れを祓えるから、僕じゃなくて自分でやろうと思ったんだって。でも。思ったより穢れの力が強いし、穢れに襲われてる子が多かったからその方が良いって。
まずいつもみたいにオニキスが僕に魔力流してくれて、僕はそれを真似して魔力を溜めて、一緒に穢れを祓い始めました。
最初はなかなか黒いモヤモヤが取れなかったんだけど、もう少し魔力溜め直して、さっきよりも強い力で穢れを祓い始めたら、だんだんと黒いモヤモヤが薄くなり始めました。
「凄いな。本当に祓えるのか」
「さすがハルトだ」
後でお父さん達が話してるの聞いたんだけど、どうもこの時、後ろの方で隠れて僕達のこと見てたみたい。
最後に残った子は1番強い穢れに襲われた男の子の妖精。もう1回魔力を溜めて、一気に穢れを祓います。あと少しだからね、頑張って!
全部の黒いモヤモヤがサァーっと消えて、男の子の妖精が目を覚ましました。
「う、う~ん」
「大丈夫?」
「ここがどこか分かるか!?」
他の見守ってた妖精達が周りにどんどん集まってきます。男の子は良く分かってないみたいで、キョロキョロ周りを見たあと、僕達のこと見てびっくりしてました。そりゃあ起きてすぐに人間の子供やオニキス達が目の前にいたらびっくりするね。一応ここは妖精達が隠れて寝起きしてる場所だし。
他の妖精やフウ達が穢れが無くなって元気になった妖精達に、僕達のことお話してくれます。それでお話を聞いた妖精達が、僕とオニキスにありがとうしてくれました。
みんなが落ち着いてから、お父さん達の所に戻ります。
最初はお父さん達に近づかなかった妖精達。僕がお父さん達は悪い人間じゃないよ。僕の家族だよって言ったら、少しずつだけどそばに近づいて来たよ。
詳しい話を聞こうと思ったんだけど、レイモンドおじさんが、いくら人が来ない所でも、もしかしたら誰か来て、僕が妖精達と話してるの見つかるといけないからって、今日はゆっくりレイモンドおじさんの屋敷で休んで、明日話を聞かせてくれないかって。
フウ達が僕の遊びのお部屋の事とかお話したら、妖精達は興味深々で着いてくるって言いました。
そしてレイモンドおじさんのお屋敷に戻ろうとしたんだけど…ここであの問題が。そう、レイモンドおじさん達がディアンに抱えられることを拒否。
取り敢えず僕とイーサンさん、それから僕の周りはフウ達が、そしてしっぽに掴まる妖精や、ディアンの頭に乗っかる妖精、それぞれが位置に着きます。
レイモンドおじさんが、お父さんとレイモンドおじさんは歩いてお屋敷に戻るから、イーサンさんに妖精達のこと任せるって。
すぐにさっきみたいにオニキス達が木や屋根を移動し始めます。シュシュシュってスピード出すと妖精達がとっても喜んで、オニキスのしっぽに掴まってる妖精達見たら、しっぽに揺られて、わざとしっぽの毛を結んで、ブランコみたいにしてる子もいました。
「ちゃんと後で元に戻せよ」
オニキスが怒るけど、妖精達楽しんでて聞いてません。オニキスが溜め息ついてたよ。
お屋敷に戻ると、部屋で待ってたお母さんが僕のこと抱きしめた後、妖精達がいっぱいついて来たの見てニッコリ笑って、それからイーサンさんの話聞いて、すぐに妖精達の小さなベッドとか用意し始めました。
用意してる最中、お母さんの隣では、レイモンドおじさん達を抱えて出て行ってことを怒られるディアンが、ずっと正座で怒られてたよ。この世界にも正座があるんだね。
僕達は待ってる間、グレン達が用意してくれたホットミルク飲みながら、遊びのお部屋の説明してあげて、それから隣の部屋の訓練する部屋も見せてあげました。
妖精達は訓練の部屋に敷いてある人工芝に興味深々。ここでいつでも遊べたらいいのにって言ってました。
そっか。僕が居る時でも、お家に帰っちゃったあとでも、レイモンドおじさん達に相談して、妖精達がいつでもここで遊べるようにしてもらえないかな。だってみんな安全に遊べた方がいいでしょう? 遊びだけじゃなくてゆっくり夜寝に来たりとか。後で落ち着いたらお願いしてみよう。うん! そうしよう!
用意が終わる頃、お父さん達が帰って来ました。それで部屋に用意された小さいベッド見てびっくり。小さな机や椅子まで用意されててさらにビックリしてました。
「え? 今これ作ったのか?」
「凄いな」
「あなた、グレンがいるのよ、これくらいすぐよ」
「まぁそうか」
グレンが家具を。お母さん達がベッドマットや毛布を作って、完璧な妖精家具の出来上がりです。それ見たフウ達が欲しがったのは当たり前のこと。追加で作ってもらって、今日はフウとライは妖精達と一緒に寝るって。
準備が終わると急に眠気が襲って来て、フウ達におやすみなさいしたあと、寝る準備してすぐに自分の寝る部屋に移動しました。
お父さんとお母さんにおやすみなさいして、隣に寝てるお兄ちゃんにもおやすみなさい。
明日は妖精達に何処でどうやって穢れに襲われたのか、話を聞かないとね。だって穢れに襲われた場所に、まだ穢れが残ってたら危ないもん。