89もう1人の幼馴染み
「よう久しぶりだな。元気にしてたか?」
近づいてきた男の人がイーサンさん達に挨拶しながら、僕の方を見てきました。僕はパティーを肩に乗っけたままオニキスの後ろに。こんにちわって小さな声で挨拶しました。
「なんだ、いつの間に結婚して子供ができたんだ?」
同じこと言われてるし。
「俺はまだ結婚していない。キアル殿の息子だ」
イーサンさんが僕の紹介してくれます。それから男の人の紹介も。
この男の人もイーサンさん達の幼馴染みで、名前はアトールさんそして契約魔獣はファイアーフォースのレッド。アトールさんは前回の契約魔獣の部門でクロウリーさんに続きけっこう良い順位だったみたい。
ここでちょっとした疑問が。この前火山帯で見たファイアーフォースと、アトールさんと一緒にいるファイアーフォース、ちょっと違うんだけど。火山帯にいたファイアーフォースは体全体から炎が出てたんだけど、レッドは頭の角から炎が出てます。あとよく見たらしっぽからも。体全体からじゃないの。
オニキスにそっと聞いてみたら、ファイアーフォースにはいろいろな種類があって、顔からだけ炎が出てるのもいれば、しっぽだけのもいるし、他には足から炎が出てるのもいるんだって。何だろう個性なのかな?
僕がチラチラレッドのこと見てたら、アトールさんがレッドに乗ってみるかって。良いの! やったぁ! アトールさんにちょっと小さい声だけど、オニキスの後ろから顔出してちゃんとありがとうって言います。アトールさんはニッて笑って、ズンズン近づいてくると、僕の頭を勢いよくなでなで。頭がガクンガクンして、なでなで終わったときには頭がくらくらに。
ふらふらしながらレッドに近づきます。アトールさんが最初にレッドにちゃんと挨拶すると、大人しく背中に乗せてくれるって。だからレッドの前に立って、
「こんちわ。よろちくね」
そう言って挨拶しました。そしたらレッドが僕の顔に自分の顔近づけてスリスリしてくれたの。くっ、可愛い…。
顔が近いから炎が出てる角がよく見れます。この角って触っても熱くないのか? 近くに居る分には熱く感じないんだけど。この前はファイアーフォースはいても、ここまで近くに寄らなかったから分かんないや。
そんなこと考えてたらアトールさんが、僕の考えてたことそのまま聞いてきました。
「レッドが顔を近づけるなんて珍しいな。危ないと思って離そうと思ったんだが、ハルト君熱くないのか?」
「あちゅくない?」
てことは、やっぱり本当は熱いの?
ファイアーフォースから出てる炎は、ファイアーフォースが認めた人間しか熱くて近寄れないんだって。だからアトールさんはレッドの炎が全然熱くありません。
でも他の人は違います。もしこういうたくさん人が居る場所や、僕みたいに小さの子が急に近づいてくるかもしれない時は、契約主が炎の威力を下げろって命令して、他の人が熱くないようにするの。
でもいくら炎の威力を下げても、完全に下げることはできません。だからレッドが僕に顔を近づけたから、ちょっと慌てたんだけど、僕が熱いともなんとも言わないからびっくりしたみたい。
全然熱くないよ。これってもしかして触っても大丈夫なんじゃ。オニキスがレッドに触ってもいいか聞いてくれます。そしたらレッドがもう少し頭を下げて、僕が触りやすいようにしてくれたの。
「『触っても良いが、そっと触ってくれ』だと。角は大事だからな。ハルトそっとだぞ」
「うん! しょっと」
そっと角に触ります。僕の手が角と一緒に炎で包まれるけど、全然熱くありません。それよりも角がひんやり冷たくて変な感じです。
「おいおい、俺以外が角に触れるなんて」
「凄いなハルト君。俺達付き合いが長いのに、今まで触らせてもらえたことないんだぞ」
「パティーはよく頭に乗っかっるけどな。俺が触ろうとしたら、近づいた途端蹴られそうになったんだぞ」
レッドがオニキスに何か話します。話が終わるとこっそりオニキスが教えてくれました。
イーサンさんはレッドに、可愛い花冠とか乗せてこようとしたり、契約魔獣の証の首輪をアトールさんがイーサンさんに頼んで、これまた可愛い首輪にしようとしたから嫌いなんだって。
クロウリーさんは、礼儀もなくガサツだから嫌いなんだって。初めて会った時、挨拶もなく体に触ってきて、しかも乗ろうとしてきたから。パティーのことは大好きって。
僕それ聞いてからレッドのこと見たら、レッドがすんって顔して堂々と立ってました。それからイーサンさん達をみて鼻を鳴らします。フンって。
イーサンさん、こんなにカッコいいレッドに可愛いは似合わないよ。花冠もちょっと…。それからクロウリーさんは初対面でそれはダメだよ。仲良くしたいならちゃんと挨拶しないと。
でもそれならアトールさんも僕からしたら大雑把な感じで、レッドが好きじゃないタイプだと思うんだけど?
オニキスがそれも聞いてくれました。そしたら森で初めて会った時に何か感じるものがあって、自分から戦いを挑んだんだって。なかなか良い戦いでかなりの時間戦ってたんだけど、最終的には負けちゃって、その戦いでアトールさんのことを認めたレッド。アトールさんもレッドの事を認めて契約したんだって。
感じるもの…僕やオニキス達と一緒かな。波長が合うとか。でもお互いに認め合ってるのは良い事だよね。
なでなで終わって、アトールさんにレッドの背中に乗せてもらいます。体もひんやりしてて外は暑いからとっても気持ちが良いです。それから首のところに掴まって、近くを少し歩いてもらいました。
その後はクロウリーさんとパティー、アトールさんとレッドとまた会う約束して、今度はスタジアムの周りにあるお店を回ることにしました。お母さんにお小遣い貰ったからね。クッキーとか美味しいもの食べたいな。それか何か記念になるような物があったら、みんなでお揃いで買いたいな。
スタジアムの周りには大会だけでしか売ってない物もあるんだって、お兄ちゃんが教えてくれたの。前回は大会のシンボルの剣とドラゴンが一緒のバッチを売ってたんだって。良いなぁバッチ。
後はシンボルの描いてあるコップとかお皿とか。おもちゃも売ってたみたい。うん、おままごとに使えるかもね。
そうこの大会にはシンボルマークがあって、剣とドラゴンがバッテンで重なってる絵がシンボルマークになってます。何百年前、ドラゴンと契約してた冒険者がいて、その人が優勝したときの様子をシンボルにした、って言われてるみたい。
「ドラゴンか。我は最近他のドラゴンに会っていない。久しぶりに会って戦いたい物だ。ドラゴンの肉は美味しいのだぞ」
ちょっと変なの倒して持ってこないでよ。ドラゴン何か持って帰ってきたら大騒ぎになっちゃうよ。確かにこの前森に居た時とかはいろいろ狩ってきてくれて、僕もそれ食べたけど、僕やロイだけだったから大丈夫だったんだからね。ちょっと変わった魔獣でも騒がなかったんだからね。
ニヤニヤするディアンを見て、ちょっと不安になって来ちゃったよ。そしてそんなディアンを見て、顔を引きつかせるイーサンさん。………そうなるよね。
「と、とりあえず、俺が美味しいクッキーを売ってるお店に連れて行こう。フレッドは前に連れて行ったことがあるが、ハルト君は初めてだからな」
その美味しいクッキーを売ってるお店は、大会期間中しかお店を出さなくて、イーサンさんも食べるの楽しみにしてたんだって。
とりあえず、今日はクッキーを買って、それをおやつにすることにしました。後はいろいろお店見て、これから長い間街に居るからね、ゆっくり欲しいもの探せば良いって。そうだね。慌てて買わなくても良いよね。フウやライも一緒に選んだ方が良いもん。
お店はスタジアムの裏側にあります。それで裏側に行ってすぐに長い長い列が。
「やっぱりか」
この長い列、クッキー買う人の列だって。こんなに!? だってスタジアムの裏に回って来てすぐだよ。ちなみにクッキー売ってるお店は、僕達の反対側のスタジアムの裏に。
「まぁ、こんなに並んでるが、そんなに長い時間はかからない。さぁ並べ並べ」
「ハルト頑張って並ぼう。クッキー本当に美味しいんだよ」
お兄ちゃんがそう言うなら…。僕待てるかな?