88イーサンさんのお友達と契約魔獣
朝のご飯を、こっくりこっくりしながら、やっとこさ食べてたら、僕の隣で食べてたフウとライが急に窓の方見たかと思うとすぐに窓の方に飛んでいきます。グルグル飛ぶ2人。その後ニコニコしながら僕のところに戻って来ました。
「ねぇねぇハルト、フウ達遊んできてもいい?」
「この街の妖精が、オレ達と遊びたいって、連絡してきたんだぞ」
え? 何? 誰が連絡してきたって? 僕眠たくてフウ達の言ってることが理解できません。そんな僕の代わりにオニキスが2人と話します。
「分かった行ってこい。ハルトもきっとどこかに遊びに行くぞ」
「うん分かってる。でも他の街の子とも仲良しになれば、きっといろいろなこと教えてくれるもん。だからフウ達今日は妖精と遊ぶね」
「じゃぁ、行ってくるな」
窓のちょっと開いてる所から2人が出て行きました。遊びに行くって言った? 行ってらっしゃい。気をつけてね。
それから結局途中で朝のご飯をギブアップした僕。オニキスに寄りかかってもう少し寝て、やっと目が覚めました。お昼ちょっと前ぐらいに。お母さんがいつもより寝坊助さんねって。いつもはもう少し早く目が覚めるもんね。久しぶりにしっかりしたベッドで寝たし、なんだかんだ言って馬車の旅で疲れてたのかも。
さて今日はどこに行くのかな。大会に参加するために登録しに行く? それとも街に遊びに行く? ワクワクしてたらお父さんが今日も1日準備だって。え~、何処にも行かないの?
大会参加の申請するのは、もう少し落ち着いてからにするみたいです。今は大会に参加する人達が1番集まってる時なんだって。だからスタジアムの周りは参加者で溢れかえってます。もう少し落ち着くとたくさん並ばなくても参加の申請ができるようになるみたい。まぁ、ずっと混んでるんだけど、少しでも空いてる時の方が良いからって。
それにもう少し荷物の整理したいから、きょうは遊びに行くのやめとこうって言うの。お母さんはなんかアイラさんとやる事があるんだって。
でも魔獣見に行きたいのに…。僕がしょぼんとしてたら、イーサンさんが一緒に魔獣見に行くかって言ってくれました。
ほんと!? 本当に一緒に行ってくれるの?
「イーサン良いのか? ハルトはあっちこっちけっこう動き回るぞ」
「これだけしょげてたら可愛そうだからね。ハルト君魔獣見に行くか?」
「うん!!」
「よしじゃぁ準備してくるからちょっと待っててくれるか。ハルト君も準備して、玄関ホールで待っていろ」
僕はすぐに泊ってる部屋に戻って遊びに行く準備です。オニキスカバンにお母さんがハンカチ入れてくれて、後は飴をみんなの分入れて、それからそれから。
隣を見たらフレッドお兄ちゃんも遊びに行く準備してます。お兄ちゃんも一緒に魔獣見に行くの。
カバンを首から下げて、外は暑いからお母さんが帽子被りなさいって帽子被って、よし! 僕の準備は完了です。でも僕は準備できたのに、お兄ちゃんはまだ準備してるんだよ。早く早く、もうきっとたくさん魔獣が集まってるよ。
「フレッド、きっと周りのお店見たら、ハルトちゃん欲しがるだろうから、これで買ってあげて。あなたもきっと買いたくなるでしょうからね」
「ありがとうお母さん」
お兄ちゃんがお母さんから小さな袋受け取ります。中にはお金が。僕達の今日のお小遣いです。街に来た時の、可愛いクッキーとか売ってたもんね。僕あれが欲しいなぁ。でもあそこまで行かなくてもスタジアムの周りにも屋台がいっぱいあったから、僕目移りしちゃいそうだよ。
お兄ちゃんがカバンにお金の入った袋をしまって、これで2人とも準備はバッチリ。僕はお兄ちゃんの手を引っ張って玄関ホールに向かいます。それ見て笑うお母さんとお父さん。だってもうイーサンさん待ってるかもしれないし。
と、思ったんだけど、まだ玄関ホールにイーサンさん居ませんでした。
あっちへふらふら、こっちへふらふら。止まってソワソワ。お父さんが笑います。
「ハハハッ、そんなにソワソワ慌てなくても、魔獣達は居なくならないし、お店だってなくならないぞ」
分かってるけどじっとしてられないの。
しばらくふらふらとソワソワ繰り返してたら、やっとイーサンさんが階段を下りてきました。洋服がピシッとした洋服から、街の人達が着てる動きやすそうな洋服に変わってます。
「お待たせ。ごめんな遅くなって」
「ようふくちがう?」
「ん? ああ、街に仕事以外で遊びに行く時は、動きやすくて汚れても良い洋服を着ていくんだ。さぁ、それじゃあ出発するか」
「2人ともイーサンの言うこと良く聞くんだぞ。ハルト勝手にふらふらするんじゃないぞ。それから…」
分かって、分かってるよ。早く行こう! イーサンさんとお兄ちゃんと手を繋いで歩き始めます。まずはやっぱり、魔獣が集まってるあの場所に行かなくちゃね。昨日は馬車で移動だったけど、今日は街の中を歩くだけ、しかも時間的にはスタジアムの周りを見るだけになりそうだから、馬とかにも乗らずに歩いて移動です。
どんな魔獣が居るかなぁ。可愛い魔獣も見たいしカッコいい魔獣も見たいよね。
レイモンドおじさんの家からはとっても良くスタジアムが見えます。見えてたし昨日は馬車に乗ってたから僕間違ってました。けっこうスタジアムまでかかるんだね。しかも僕歩くの遅いから、スタジアムに着くまでにかなり時間がかかっちゃったよ。
「ふおぉぉぉぉ!」
「いっぱい!」
『『キュキュキュイ』』
「大きな魔獣がいっぱいだと言っているぞ」
そう、集まってる魔獣は大きい魔獣がいっぱいでした。頭の角から炎が出てる馬? みたいな魔獣、白くて大きな牙が生えてる大きな猿みたいな魔獣。後はオニキスよりちょっと大きいライオンみたいな魔獣でしょう、サイに似てる魔獣も居るし、シカやヒョウそれから鷹の大きいバージョンみたいな魔獣達、他にもたくさんの魔獣が集まってます。もちろん大きい魔獣ばっかりじゃなくて、中ぐらいの魔獣や、肩に乗るくらいの魔獣も集まってるよ。
「ハルト、あそこに小さい魔獣が居るだろう?」
イーサンさんが指差した方を見たら、モモンガみたいな可愛い魔獣が肩に乗ってました。モモンガみたいな魔獣の種類はイファーモって言って、小さい魔獣なのに炎と氷の魔法を使える珍しい魔獣なんだって。しかもなんと、去年の準優勝の魔獣でした。
大会の申請が終わったのか、イファーモを連れた男の人がこっちに歩いてきます。ブレイブとアーサーがオニキスから下りて男の人の方へ走って行っちゃって、慌てて僕2人を追いかけます。
2人が男の人に近づくと、男の人はにっこり笑って2人に手を差し伸べて、2人がサササって手から男の人の肩に上と、上手い具合に2人で肩に座りました。
「ずいぶん懐いてるルーリアだな。君の友達かい?」
男の人がニコニコしたまま僕に話しかけてきました。ぺこんってお辞儀だけして、すぐにオニキスの後ろに隠れます。そんなに僕の隣に立つイーサンさんとおにいちゃん。
「久しぶりだな」
「ああ、前回の大会ぶりか。それにそれもお前、いつの間に結婚してたんだ? 子供までいるなんて、前回あった時は何も教えてくれなかったのか?」
「俺はまだ結婚してないぞ。この子はハルト君、キアル殿の息子だ」
「キアル様の」
「ハルト君はちょっと人見知りでな」
イーサンさんが僕のこと紹介してくれて、男の人の紹介もしてくれます。男の人はイーサンさんと同じ歳で、この街で一緒に育った幼なじみです。名前はクロウリーさん。相棒のイファーモの名前はパティーです。
「ハルト君は魔獣が大好きなんだ。パティーのこと触らせてくれないか?」
「良いぞ。だがパティーは人を選ぶからな」
そうクロウリーさんが言ったときでした。ブレイブ達と何か話してたパティーが、スルスルスルってクロウリーさんから下りてきて、僕の方に走ってきました。それからまたスルスルスルって僕を上ってきて僕の肩に。それからお顔スリスリしてくれたの。か、可愛いぃぃ!!
「ほう、珍しいな。こんなに懐いてるパティーは初めて見たぞ。てか、いつの間にお前も魔獣と契約したんだ? しかもこんなにたくさんの魔獣と」
「いや俺が契約したんじゃない」
「じゃあキアル様か」
イーサンさんが上手く誤魔化してくれました。レイモンドおじさん家族は僕のこと分かってるけど、他の人達には僕のこと内緒だからね。
パティーを撫でる僕を見て、クロウリーさんが誰かを呼びました。受付の方から男の人と、それから最初に目のいった角から炎が出てる馬っぽい魔獣が歩いてきました。