87ペインおじさんは冒険者?
今日の夜のご飯はレイモンドおじさん家族と、僕の家族みんな一緒に食べました。全員一緒だからね、大きなテーブルなのに席は満席。これだけの大人数で食べるの僕初めてで、嬉しくてちょっとテンションあがっちゃったよ。もちろんオニキス達は僕の隣にみんな座って、一緒にご飯食べてます。
それに料理もとっても美味しくて、僕の家の料理人さん達と同じくらい美味しかったです。僕が1番気に入ったのはワンタンみたいなものが入ったスープ。こうもっちりしてて、お肉ときのこのみじん切りがたくさん詰まってるの。ひと口食べるとじゅわぁぁぁって。1つが大きいからお父さん達大人組は4つ。僕とお兄ちゃんは2つずつ。もっと食べたかったけど、他にも美味しい料理がいっぱいだからしょうがないね。
「それでお兄様、ペインお兄様はいつ頃着く予定なの?」
「もうすぐ着くだろう。俺と一緒で楽しみにしていたからな。お前に2人目の子供ができたって。それにこのところ大会から招待状がいっても、断ってずっと来てなかったからな。久しぶりに参加するとも言っていた」
「あらそうなの。なら少し落ち着いたのかしら」
「ずっと冒険だとか言って、家を空けていたからな。ルイチェルがかなり怒っているらしい。こちらにも一緒に来るらしいぞ」
「ならアイラお姉様、久しぶりにゆっくりお茶会ができそうですね」
ペインおじさんの家族は奥さんのルイチェルさんと子供が2人。イーサンさんより5歳年下のクイールさん、さらに2歳年下のバーバラさん。お兄さんのクイールさんは騎士で妹さんのバーバラさんは冒険者です。
ペインおじさんは騎士でもあるし冒険者でもあります。本当は騎士が正しいんだけど、冒険者の活動ばっかりしてあんまり屋敷に帰って来なかったもんだから、ついに奥さんのルイチェルさんが怒ったらしいよ。
今は屋敷に戻って騎士として、領主として、ルイチェルさんに監視されながら生活してます。
ペインおじさん家族もレイモンドおじさんの家にお泊りなんだって。みんな揃ったらご飯食べるのがもっと楽しくなるね。あとはフウ達を可愛がってくれると良いなぁ。だって僕の大切な家族だもん。魔獣とか嫌いな人達だったら嫌だなぁ。
イーサンさんはフウ達のこと良い子良い子してくれるから、大好きな人に認定されて、今もご飯食べ終わったフウ達はイーサンさんの周りに集まって、まだご飯を食べてるイーサンさんの肩に乗ってお腹出して寝てたり、頭に乗ってリラックスモードです。
「みんなまだごはんたべてりゅの。もどってきて」
「フウね、お腹いっぱいだから眠いの」
「オレも」
『『キュキュイ…』』
「はりゅと、ボクも」
「オニキスのうえでねちぇちぇ」
ご飯の時は邪魔しちゃダメ。チェって言いながら戻ってくるフウ達。オニキスに群がってオニキスの上でリラックスモードです。
そうそう、お父さんの契約魔獣のルティーも、今オニキスの頭に乗ってリラックスしてます。あのね、ルティーも大会に出るんだよ。ルティーは伝達部門で大会に参加です。どれだけ早く正確に契約主に情報を届けるか、それを競うんだって。ルティーなら1番なの間違いなしだよ!
「本当に言葉が分かるんだな」
ってレイモンドさんが。あっ、もしかして不味かった? お母さんの家族だし、大丈夫って勝手に思ってたけど、粉かけるマネしてからの方が良かったかな?チラッてお父さんの方を見ます。お父さん笑って大丈夫だって。
もしルリトリアで何か僕に問題が起きた時、この街のことを全て知ってるレイモンドおじさんがすぐに対処できるようにって、お母さんが手紙である程度知らせてくれてたみたい。たくさん人や魔獣が集まる大会だからね。この前みたいに何か問題が起きたら大変。僕も気をつけなくちゃ。
「そういえば、ペインもイーサンみたく、かなりの勢いでハルトを気にいるはずだ。なんて言ったってあいつも魔獣大好き人間だからな。それにハルト、ハルトもきっとペインのことを気にいるぞ。あいつも契約魔獣が2匹いるんだ。楽しみにしてるといい」
どんな魔獣と契約してるのかな。フウ達みたいに可愛い魔獣かな、それともカッコいいオニキス達みたいな魔獣? 大きさは? ちょっとワクワクしてきました。でも僕の人見知りが…。
ご飯食べ終わって休憩室でゆっくりして、グレンが部屋の準備が終わったって呼びに来てくれたから今日はお休みなさい。お母さんと泊まる部屋に移動します。
部屋はお父さんとお母さんが泊まる部屋、僕とお兄ちゃんが泊まる部屋、グレン達が泊まる部屋、いろいろ分かれてます。いっしょに来た騎士さん達は街の宿に泊まったりです。
僕達の部屋はグレンが僕用に飾り付けてくれたぬいぐるみと、あと絵本とかお兄ちゃんが持ってきた本をしまった本棚、クローゼットには洋服がきれいにしまってあって、いつもの僕達の部屋と全然変わりません。あとは洋服に上手く隠して、フェニックスの羽が入ってるカゴが置いてありました。ありがとうグレン。
みんなでベッドに入って、明日は何しようかなとか考えながら目を瞑ります。あの大会に出る魔獣が集まってた受付の所に行きたいけど、お父さん達明日の予定はどうなんだろう。お父さん達も受付しないといけないから行くと思うけど…。
僕も自慢大会の受付しないとね。オニキスやブレイブにアーサーなら絶対優勝できるよね。あとは、僕が緊張しないかだけど…僕頑張って練習しなくちゃ。だんだん不安になってきちゃった。オニキス達は優勝間違いなしでも僕がオニキス達の紹介失敗しちゃったら大変だよ。
いろいろ考えてたら、いつの間にか寝ちゃってた僕。僕のベッドの横にオニキス用ベッドとディアンのベッドも用意してもらってたのに、ディアンがオニキスにベッドになれって、ディアンとオニキスが夜中中ケンカしてたなんて知りませんでした。
お父さんが様子見に来てケンカしてる2人を発見。僕達が起きないように、お父さん達の部屋に移動してお説教されてたなんて。まったく何やってるのさ。
お父さんが、起きて朝のご飯食べに食堂にきた僕とお兄ちゃんに、あれだけ騒がしくケンカしてたのによく起きなかったなって。そんなに激しいケンカしてたの?
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「まったくこの街の警備兵ときたら! 私を誰だと思っているんだ!」
「まったくですな。ドルサッチ様を待たせるなど。ドルサッチ様は他のそこいらの騎士団長とは違うというのに」
「これも全てこの街に居るあの男のせいだ。しかもあの男についている貴族共も同じ考えと来ている」
まったく忌々しいレイモンド家め。階級は確かに大事だが、皆が集まるああいう門の並びでは、階級関係なくちゃんと列に並べなどと。なんのための階級だと思っているのだ。しかもレイモンド自ら対処しに来るなど。とんだ恥をかいたではないか。
私がイライラしていたからか、家から付いてきた側近のグイダエスが、1度部屋から出てすぐに、布がかぶせられたカゴを持って戻ってきた。
「ドルサッチ様、ようやく新しい物が届きました。こちらです」
布を取れば、カゴの中にはきれいな青い小さな鳥が。この鳥はクフスという種類の鳥で、普通は全身灰色をしていて、私のコレクションになるような鳥ではないのだが、突然変異でこのきれいな透き通るような青い色になったらしい。久しぶりに良い物が手に入った。今日のイライラもこれで少しは治りそうだ。
何しろ今までこういう魔獣を手に入れるために手を組んでいた取引相手が、この前私とは違う別の相手との取引で、そこにたまたま居合わせたシーライトの領主に全員捕まってしまって以来、珍しい物が手に入らなくなってしまった。まったく迷惑な領主共が。
机の上にカゴを置き、さてこの大会中にどれだけこういう物を集めてられるか。集めた物は帰ってから全て剥製にしよう。
少し気分のよくなった私は、グイダエスに酒を持ってくるように言い椅子に座ると、クフスを眺めながら思い出す。
そう言えばあいつは妖精の死骸を手に入れたとか言っていたな。本当かどうか分からんが。妖精は生まれた場所から動けないはずだ。それは死体だろうと関係ないはず。だがあいつには負けていられないな。なんとか妖精も手に入らないものか。まぁ、妖精と言わずに、珍しければなんでも良いのだが。