84レイモンドおじさん一家
「おとうしゃん、まじゅういっぱい」
「ん? ああ、あそこに集まってるのは試合に出る魔獣達で、名前と魔獣の種類を申請しているところだ。あと契約者の名前な。直前に違う魔獣で参加しないようにするためだ。この街には大会のために魔獣がたくさん集まるから、大型魔獣が泊まれる宿がたくさんあるんだぞ」
前の世界には動物が大好きな人苦手な人が居て、それから人だけが泊まれるホテル、ペットと泊まれるホテルがあって、こっちの世界でもそういうのがあるみたい。魔獣が苦手で魔獣が泊まれない宿に泊まる人、魔獣といつも一緒にパートナーとして行動している人達は魔獣が泊まれる宿に。
普通は街に半分位ずつ宿があるんだけど、ここは大きな街で大会も行われるから、街に来る魔獣も多くて、魔獣可の宿の方が多いんだって。
それから契約者によっては魔獣に触らせてくれる人もいるみたい。お父さんが街で遊ぶとき触らせてもらうと良いって。僕ちょっと楽しみ。オニキス達やマロン達みたいな可愛くてカッコよくて、ふわふわもふもふな魔獣いるかな?
でも大会前なのに、自分の大切な魔獣他人に触らせて良いのかな? 何かいたずらとかされたら大変じゃない?
「しゃわってだいじょぶ? たいかいだいじょぶ?」
「ああ、それは…」
そういう人は大会が目的じゃなくて、自分の契約してる魔獣の自慢しに来てる人。それで問題になったんだって。戦いもしないのに魔獣の自慢ばっかりする人達が増えちゃって、そのおかげで今年からそういう人達のために、新しい競技ができました。
その名も『魔獣決定戦』
うんそのまんまの意味。魔獣の可愛さカッコ良さ、特技なんかを競って優勝魔獣を決めます。そしてその『魔獣決定戦』である事実が発覚。それは…。
「子供から大人まで誰で参加できたはずだな? ハルト、自分の参加できる種目も良いが、オニキス達と一緒に決定戦に参加してみるか? 確か1人3匹まで参加して良かったはずだぞ」
な、なんですと!! うちのオニキスと一緒に参加出来る!!
1人3匹まででしょう。フウとライはみんなには姿が見えないからダメだし、スノーは洋服着てるとはいえ、いっぱい人が見にくる所に出したら、誰かがスノーの正体に気づいちゃうかもしれないからダメで。フウ達にそう言ったらこんなに僕達可愛いのにって、怒ってました。ごめんね。
それからディアンは絶対ダメで、そうなると…。
「オニキス、ブレイブ、アーサーいっちょでりゅ」
「ああ良いぞ。ハルトのためだ。カッコいいところを見せて優勝させてやる」
『『キュキュキュイッ!!』』
「『ブレイブ達は可愛い姿を見せて優勝だ!』と言っている」
よし決まり!! 明日か明後日、お父さん達が荷物の整理とかいろいろ落ち着いたら、あの場所に行って参加の登録してくれるって。やったぁ!! せっかく出るんだから優勝目指さなくちゃ。僕ルンルンです。
あっ、アピールタイムに何やるか考えなくちゃね。オニキスはカッコいいアピール。ブレイブとアーサーは可愛いアピールだよね。う~ん。まだ時間はあるからみんなで相談して決めよう。
そんな事を思いながら、馬車はどんどん進んでいきます。そして見えるものは、大きな家ばっかり。その中でも特に大きいお屋敷がレイモンドおじさんのお屋敷でした。三階建で庭も凄く広いの。うちはもうちょっと小さいよ。でも門から玄関まで遠いのはうちと一緒。
やっと玄関についておじいさんが馬車のドアを開けてくれました。
「グーガー久しぶりね」
「お久しぶりでございます。ウイリアム様パトリシア様。フレッド坊っちゃまもお久しぶりですね。大きくなられて」
「おいおい、去年も会ってるだろう?」
「小さなお子様が成長するのはとても早いのですよ」
そう言ったグーガーおじいさんが僕のこと見ます。フウ達はいつもの僕の地位置にちゃんと陣取ってるよ。
「そちらの坊っちゃまは初めましてですな。私はレイモンド様の屋敷に使える筆頭執事のグーガーでございます。よろしくお願いいたします」
「ハルトでしゅ。よろちくおねがいでしゅ」
「ハルト坊っちゃまですね。しっかり挨拶ができて、さすがパトリシア様のお子様ですね」
お母さんが教えてなくてもちゃんと挨拶できるのよってグーガーおじいさんに言ったらおじいさんとっても驚いた顔してから、ニッコリ笑顔に。それから僕の事褒めてくれました。
馬車を下りると、使用人さんとメイドさん、それからお母さんみたいなドレス着た綺麗な女の人、20代前半くらいの若い男の人が立ってました。
お母さんが軽く挨拶して、女の人も挨拶しました。それから男の人も。
「お久しぶりです」
「よく来てくれたわね」
女の人はレイモンドさんの奥さんで名前はアイラさん。それから若い男の人はレイモンドさんの息子でイーサンさん。あ~あ、またサの名前が…。慣れるとなんとか名前ならいけるんだけど、話しになるとどうしてもしゃになっちゃうんだよね。
お母さん達の話が一区切りついて、お兄ちゃんが挨拶し終わったら今度は僕の番。さっきみたいに挨拶します。そしたら挨拶した僕をじぃ~と見てくるイーサンさん。僕は思わずお父さんの後ろに隠れます。さっきのグーガーおじいさんのときは平気だったんだけどな? 僕の人見知りはいつも通りに。
「すまない。ハルトは人見知りなんだ。初めての人に慣れるのに少し時間がかかるが、よろしく頼む」
「ああ、手紙にそう書いてあったわね。大丈夫時間はたっぷりあるわ。だんだんと慣れていけば良いのよ。ね、ハルトちゃん。さぁここで長話していてもね。美味しい飲み物とお菓子を用意したのよ」
みんなで休憩のお部屋に移動です。移動してる最中もイーサンさんずっと僕の事見てくるんだもん。僕お父さんの足にしがみつきます。そのせいでお父さんが歩き辛くなっちゃって、途中から抱っこしてもらって移動になっちゃったよ。
休憩室についてすぐ、お菓子と紅茶みたいな飲み物が運ばれてきました。
「さっきレイモンドの部下から連絡が来たの。レイモンドもう少し遅れるみたいだから、ゆっくりお茶して待ってましょう。フレッドにはこのお菓子を、ハルトちゃんにも特別なお菓子を用意したのよ。両方ともとっても冷えてて美味しいわよ」
お兄ちゃんに運ばれてきたのはなんと、クリームソーダみたいな食べ物。隣にいてもひんやりした感じが伝わってきてとっても美味しそう。ジュースの色は独特の濃い紫だったけど…。
そして僕に運ばれてきたのは、アイスクリームにオニキスの形したクッキーが乗ってて、アイスの周りにはいろいろな魔獣の形した小さいクッキーがいっぱいと、果物が乗ってて、パフェみたいな感じです。
というか、この世界にアイスってあったんだね。
僕嬉しくてお父さんにくっついてたんだけど、さっさと離れてスプーン持ちます。フウ達が僕も僕もって。待って待って順番だよ。
いただきますして、オニキスクッキーを少し退けて、このクッキーは最後に食べるからね、まずは僕がひと口。はむっ! ………ふおぉぉぉぉ!! お、美味しい!! 何これ本当に美味しい! もうひと口パクッ! なんて美味しいアイスなの。
僕の様子見てたフウ達がわぁって僕に群がります。最初はフウとライ。次はブレイブ、スノーにアーサー。それだけでパフェが半分以下に…。と。
「うふふふふ。そんなに気に入ってくれて、料理人も喜ぶわね。ハルトちゃん、そのアスクはそっちのおちびちゃん達にあげて、もう1つ別にアスクを持ってきてもらいましょう」
アイスの事アスクって言うみたい。なんかちょっとおしいね。フウ達にアスクわたしたら、一気に群がってすぐに無くなっちゃいました。新しいアスクが運ばれてきて、それを見るフウ達。ダメ、これは僕のだよ。ちなみにオニキスにもアスクは出たよ。それをディアンが半分寄越せって、ちょっとケンカになりそうになってお母さんに怒られてました。
食べ進めていくと、なんと中から白玉みたいのが。アスクと一緒に食べるとまたまた最高! こんな美味しいものが食べられるなんて。
すぐに食べ終わっちゃって最後のオニキスクッキーをたべます。クッキーもとっても美味しかったです。
ふぅ、満足満足。せっかく良い気分だったのに、ふと思い出してイーサンさんをチラッと見ます。相変わらずじぃ~と僕を見てるイーサンさん。もしかしてたべてる間ずっと見てたの? すぐにお父さんの横に戻って洋服掴んで、洋服の後ろに顔入れて隠れます。
「イーサン、そんなにじっと見てると、ハルトはいつまで経っても、こうやって隠れるぞ。言いたいことがあるんだろう」
ってお父さんが。何々? 僕になんの用なの?