82オニキスサーカス軍団の練習と、いよいよ街に到着!!
少し気分転換できた僕達。どんどん旅は続いて、あと残り約2日。またまた飽きる時間とイライラの時間が。でも我慢我慢。
そんな我慢してる僕達の顔見てお父さんが笑います。
「何だそのなんとも言えない顔は。ククククっ」
「あなた、ハルトちゃん達頑張って我慢してるのよ」
「分かってるが、面白くてな。わっ、ちょっと待て!! イテテ!」
フウ達がお父さんのお顔にアタックします。あのうるさいやつね。それとブレイブ達のしっぽ攻撃。お母さんの言う通り、僕達達頑張って我慢してるんだから笑わないでよもう!
外からその様子を見てたオニキスが、オニキスサーカス団の練習したらどうだって言ってきました。あっ、それいいね。フウ達がやる事だったら、そんなに場所取らないのもあるから、馬車の中でも練習できるよ。
僕達お家に帰って来てから、時々サーカス団の練習してました。オニキスとフウ達が一緒にやる綱渡りとか、オニキスがその運動神経を使ってやる空中3回転とか、ディアンも混ざって、マロン達みたいな戦いながら相手の的を壊すのとか。いろいろな練習してるの。
僕は…。フウ達ちびっ子だけでやる綱渡りで綱持ったり、お父さんが僕の遊び道具として買って来てくれた押し車みたいなのに乗って、みんなでポーズ取ったりとか…。
僕のことは別にいいんだよ。それよりもオニキス達とってもとっても上手にできるようになったんだよ。もっと練習して、今度おうちで発表会するんだ。
「ちゅなわたり、やる?」
「うん! 今日はフウからね」
「フウずるいぞ! オレからだ!」
「シュノーはね~、おりたときの、ぽーじゅのれんしゅう!」
『『キュキュイ!!』』
ブレイブとアーサーは2人で組体操みたいな技の練習だって。2人でしっぽ絡めて斜めに立って?ポーズしたりするんだよ。とっても可愛いんだ。グレンがそのポーズしてる2人のぬいぐるみも作ってくれるって。
サーカス団の練習しながら2日。なんとか頑張って目的地ルリトリアへ。御者さんが街の壁が見えてきたって前から大きな声で教えてくれました。馬車の馬を操る人、御者さんって言うんだって。これは僕知らなかったよ。
「待て待て、今抱っこしてやるから」
お父さんが僕を抱っこして、窓から外見させてくれます。窓から顔出して進んでる方角を見れば壁が見えました。近づくに連れてその壁が大きく大きく見えてきます。シーライトよりも大きい壁です。お父さんが言ってた通り大きな街なんだね。
と、何この行列。まさかこの列って…。
「この街は相変わらずだな。しかも混んでるのは当たり前だが、大会が近いから余計に列が大変なことになってるな」
やっぱりこの列って、街に入るためのチェック待ちの人達の列なんだ。だって壁はまだまだ先だよ。こんな所から並んでたら、夜までに街に入れないんじゃ。僕が心配してたら、お母さんが教えてくれました。
チェックする門は他にもあって、街の騎士さん達が列の状況見て、どの列に並べとか指示するから、夜までにはなんとかみんな街に入れるみたい。それでも中に入れなかったら、この街は夜でも門閉めないから、騎士さん達が護衛してくれながらチェックして中に入れてくれるんだって。
ルリトリアは夜中も人がたくさん働いてる街。何かどっかで聞いたことあるね。眠らない街なんとかとか。そんな感じなのかな?
もちろん僕達は貴族や騎士さん達が通る、特別な門から中に入るから、すぐに中に入れちゃいます。
壁の前につけば、その大きさに改めてビックリ。大きすぎない? これ誰が作ったの? 見上げてたらそろそろ中に入れって言われて、お父さんのお膝の上に。もうね、お父さんのお膝の上もお母さんのお膝の上も完璧になれたよ。自然と座れるもん。
僕達が入る門まで行ったら、馬車が急に止まって、そのあとはのろのろとしか進まなくなりました。もう1度だけお外見せてもらったら、なんとこっちの入り口にも長い列が。そりゃああっちの列程じゃないけど、いつものシーライトのみんなが並ぶ列くらいには並んでるんじゃないかな。
早く街の中見たかったけど、これはもう少し我慢かな。お父さんももう少しだから、あんまり馬車の中におもちゃ出すなって言うし、大人しくしてろって。
大人しく何して待ってよう?
とりあえず出してたおままごとの道具を籠にしまって、サーカスの道具もしまって、お片付けは終了。後は僕が持ってきたぬいぐるみだけど…。
僕はちらちら窓の方見ます。お外見てれば、少しは時間潰せるんじゃないかな。変わりのない草原とか林とか森じゃなくて、ここにはいろいろな人達が並んでるんだから、その人達見て待ってても良いんじゃない?
僕はお膝から下りて窓に近づきます。フウ達は僕の頭とか肩に乗っかります。それで外見てあっちの人はあ~だとか、こっちの人はどうだとかお話し始めました。みんなはそれで見えるかもしれないけど僕見えないんだから、そんなにはしゃがないでよ。
よしここはあの攻撃で…。
「おとうしゃん、だっこ?」
僕は首を傾けてじっとお父さんのお顔見ます。これぞお願い攻撃。お父さん僕のこれにとっても弱いんだ。
「ああもう、分かった分かった。外見ても良いがあんまり騒ぐなよ。お前達は興奮すると何するか分からんからな」
良し! お願い攻撃が成功しました。だっこしてもらってお外見ます。
僕達の並んでる列には、カッコいい馬車がいっぱいだし、騎士さん達もいっぱい。2列に並んでます。それでね僕達の列の方が少し早く進んでるみたいなんだけど、少したった時に、前の方で怒鳴り合う声が聞こえてきました。どうしたのかなと思って、少し窓から乗り出して前の方見ようとしたんだけど、スッと馬車の中に戻されて、絶対にお外に出るなって言われて、お父さんだけ外に出ちゃいました。
と、外からディアンが馬車の中覗き込みます。
「面白そうだ。我も見てくる。今度はちゃんと言ったからな」
そう言って前の方に歩き始めました。お母さん止めたんだけどね。
相変わらず怒鳴り合う声はずっと続いてたけど、お父さんが出て行って少しして、怒鳴り合いもっと酷くなりました。「私を誰だと思っている!」「私はどこそこの騎士団団長で…!」とか、ずっとおんなじ人が怒鳴ってます。その人が怒鳴り終われば、「これは決められた事ですので」って。
僕の予想だけど、自分は偉いんだから、先に入れろって感じで揉めてるのかな? それか検査する人が何かしちゃったとか。でもあの言い方からして、絶対早く入れろって怒ってるんだと思うんだよね。
と、急に怒鳴ってた領主の声が聞こえなくなりました。そして静かになった後すぐに、何か焦ってる声が聞こえてきました。それからすぐに馬車の横を、多分馬に乗った人達が、街と反対方向に走って行ったの。
「なんだつまらない。もう終わってしまった」
外からディアンの声が聞こえてすぐ、馬車のドアを叩く音が。お父さん戻って来たのかな? でも何でドア叩くのかな? いつもサッサとドア開けて乗ってくるのに。誰か来たの?
お母さんが返事しようとしたとき、ドアがガタンって開いて、ドアの前にはカッコいいお洋服着たこれまたカッコいい男の人が立ってました。お父さんと歳同じくらいかな。う~んでも、お父さんの方が若い気もするし。
「パトリシア、遅かったじゃないか。もう少し早く着くと思っていたんだが」
「お兄様、いつもお話しているはずです。返事をする前にドアを開けないでくださいと」
「ははは、すまんすまん。揉め事だと聞いて来てみれば、キアルの馬車が見えたもんで。嬉しくて思わず開けてしまった」
お兄様? 今お兄様って言ったよね。もしかして街に居るって言うお母さんのお兄さん? 僕はスノー抱っこして、肩にフウとライ、肩にぶら下がる形でブレイブとアーサーの格好して、じぃ~と男の人見つめます。
男の人がお兄ちゃんによく来たなって言いながら、最後に僕のこと見ました。
「パトリシアこの子か。お前が言っていた新しい家族は」
「ええ、そうよ」
「おっと馬車が動くな。乗るぞ」
お母さんの言葉を聞いた男の人が馬車に乗って来ます。その後ろからお父さんも乗ってきました。
「ハルトちゃん。私の兄のレイモンドよ」