80準備はばっちり! ルリトリアに向かって出発!!
お父さんに大会があるって聞いてから、僕剣の練習頑張りました。…まぁ僕達みたいなちびっ子には剣の試合なんてないけど。でもでも気持ちは大事。
お兄ちゃんが1人で剣の練習してるときに、隣に立って一緒に練習したり。騎士さんやロイの隣で練習したり。そっちも相変わらずみんなあの笑顔だったけど。
「ふん! ふん!」
「やっぱりハルトは可愛いな」
自分の仕事が一段落ついたのか、お父さんが僕達の所に来て、お母さんと一緒に僕達の練習見てます。
「剣は別として、あの姿が可愛い」
「しっ、一生懸命練習してるんだから。それよりも仕事抜け出してきたんじゃないでしょうね。グレンに怒られるわよ」
「窓からこんな可愛い姿見たら来たくなるだろう」
仕事一段落ついたわけじゃなかったんだね…。あ~あ、また後でグレンに物凄く怒られるよ。僕し~らない。
案の定、お父さんの仕事のサボりはグレンに見つかって、強制的に連れて行かれたお父さん。それ見ててなんか悲しくなってきちゃいました。
しょうがないなぁ。きっと夜のご飯前には、ぐったりしたお父さんが戻ってくるはずだから、頭撫で撫でと、お膝抱っこで癒してあげよう。
そんな毎日を過ごしてたら、あと5日もしたら出発って時期に。お母さんとビアンカはこのところ毎日お店通りに通ってます。もちろんそうなれば僕も一緒なのは当たり前なんだけど…。
毎日毎日、着ていく洋服や、向こうで着替える洋服、僕が参加する競技に着る洋服。ずっと選んでます。
お母さん達が選ぶ洋服は可愛い洋服ばっかり。僕は盛り上がるお母さん達と店員さんの間を割って、カッコいい洋服をなんとか買ってもらおうと奮闘中。
でもね僕がお母さん達に勝てるはずないでしょう。しょんぼりしてたら、ついて来てくれてるロイが僕の味方してくれて、お母さん達にカッコいい洋服を何枚か買ってもらうことに成功しました。
「あの可愛い洋服は確かにハルト様に似合いますが、競技にはあまりふさわしくありませんからね。ですがカッコいい洋服もハルト様が着れば、全て可愛くなってしまうんですが」
ロイありがとうね。でも後半の言葉は聞かなかったことにしておくよ。
もちろんフウ達の洋服も買ってもらって、洋服の準備がバッチリ? です。凄いよね。フウとライみたいな妖精は、他の人には姿が分からないはずなのに、ピッタリサイズの洋服売ってるの。どこかの街のデザイナーさんが考えたんだって。
あ、そうそう。フウとライは前みたいに街を歩くとき、堂々と僕の隣や肩に乗って行動するようになりました。
せっかくの売り物の妖精の洋服。契約してない妖精は契約してる人居ないから、洋服買ってもらえないでしょう。それじゃあ意味がないって言って、街に居た妖精に配ったんだよ。それからデザイナーさんが、ディスプレイに使う花や木の実とか持ってきてくれたら、洋服と交換してあげるって約束したんだ。
だから今街の中は洋服着てる妖精達でいっぱい。それに洋服のおかげで妖精達と人間の関係がもっとフレンドリーになったから、僕のそばにフウとライが居ても全然目立たなくなりました。
「フウ、みんなとお揃いの洋服嬉しいよ」
「オレも。オレはハチの洋服が好きだぞ!」
そう新作でね、ハチの着ぐるみが発売されました。もちろんみんなお揃いで買ったよ。お尻プックリミツバチ風着ぐるみ。今街ではハチの子がそこら中に。僕もその中の1人です。
うん。可愛い。洋服に小さいハチのぬいぐるみもついてるんだ。ぬいぐるみは僕も好き。特別にぬいぐるみだけ別に1個も貰ったんだ。
僕の持っていく洋服が揃ったら、あとはお母さんは自分の準備。準備っていっても、僕の準備と全然違います。僕の準備には何日も何日も時間かけたのに、自分の準備には1日だけしかかかりませんでした。
玄関前に毎日置いてあるに馬車に、メイドさんや使用人さんがどんどん荷物を詰め込んでいきます。馬車は僕達が乗るので1台。荷物用の荷馬車が1台。グレンとロイ、護衛の人達は馬で移動です。
僕達が家に居ない間は、リスターやお父さんが信用している人達が家のこと守るんだって。その中にはお父さんの友達もいて、学校の同級生さんです。とっても仲がよくて、よく留守番を頼むんだって。
「ハチの格好で剣の練習か? それは確かに可愛くてあいつも見に来るな」
「おじちゃ、きょうのおかちなに?」
「おじちゃんじゃないって言ってるだろう。カイドお兄さんだ」
じぃ~。お父さんとおんなじでしょう? だったらおじさんだよ。
「なんだその目は。はぁ、まぁ良いか。ほら今日のお菓子は焼き菓子だ」
たまに遊びに来るカイドさん。今日もこれからの留守番の時の話しをしに家に来てました。カイドさん家に来る時はいつも、美味しい菓子持ってきてくれるの。だからフウ達にカイドさん大人気です。今もカイドさんの周りグルグル回って、それから肩や頭に上って、リラックスモード。僕もカイドさん好きだよ。
カイドさんはお父さんと一緒で剣が得意。でもお父さんの方が強いって。学生の頃、お父さんに1度も勝てなかったって言ってました。
それからもうすぐ赤ちゃんが生まれるんだって。赤ちゃんが生まれたら、仲良くしてくれなって、会うといつも言ってくるの。でも、僕お兄ちゃんになるんだよ。なんか嬉しいね。
そんな毎日を過ごしてたら、5日なんてあっと言う間。今日は出発の日です。
出発の日だけどね…。僕は相変わらず朝起きられません。今日もいつもみたいにビアンカが起こしに来てくれたんだけど、目が半分開いてません。ディアンが僕の洋服持って、ぶらぶらしながら食堂に運んでくれます。
「出発の日なのに、ハルトは相変わらずだな。グレンすまないが、多分今そんなに食べられないだろうから、馬車の中で食べられるようなもの用意してもらってくれるか。時間通りに休憩する街まで着かないと、お腹が空いてぐずるといけないからな」
「かしこまりました。サンドウィッチを用意してもらいます」
大丈夫だよ。ぐずったりしないよ。うう…眠い。
お父さんが言った通り、ほとんどご飯が食べられなかった僕。ディアンにブラブラ運ばれながら自分の部屋に戻って、最後の準備。
オニキスカバンを首にかけてもらって、オニキスにカゴを持ってもらいます。カゴには取っ手がついてて、それをオニキスが咥えて持ってくれます。中には僕達のおもちゃが入ってます。
それからディアンも僕をブラブラしてる反対の手で、大きなカゴ持ってくれてます。絵本が入ってるの。お父さんが馬車の中で遊べるようにって。ルリトリアに着くまで、結構かかるんだって。シーライトから10日くらい。絶対僕飽きるし、フウ達だって絶対飽きるよ。だってずっと馬車の中だよ。いくら休憩があるって言ってもね。
だからそうならないように、僕達の乗る場所に持って乗るんだ。
あとね。フェニックスの羽は、可愛い特別な入れ物に入れて、グレンが運んでくれます。グレンが持ってくれるなら安心です。僕がカバンに入れて持ち歩いて落としたり、羽をぼろぼろにしちゃう可能性があるからね。
みんなで馬車に乗り込んで、見送りに出てきてくれたカイドさんに手を振ります。
「それじゃあ頼むなカイド」
「ああ任せろ。お前の方もちゃんと優勝してくるんだぞ。それで帰ってきたら優勝祝いで酒でも飲もう」
「はは、まぁ出来る限りはやるさ」
「いってきましゅ!」
「ハルトも頑張れよ。ちびっ子の中で1番になるんだぞ。それからフレッド。お前もしっかりな」
「はい! 頑張ります!」
どんどんカイドさんや、見送りに外に出ていた使用人さんメイドさんの姿が小さくなります。
そして僕はすぐにお母さんに抱っこしてもらっちゃいました。手を振ってたときは、行ってきますの挨拶しなくちゃいけないから頑張って起きてたけど、もう限界。抱っこしてもらって、そんなにしないうちに、僕すぐに寝ちゃいました。
起きたのはお昼ちょっと前。今度こそ眠気もすっきり。窓から外を見たら草むらと木ばっかり。反対側は草原が広がってます。僕のお腹がぎゅるるるるってなりました。
「ハルトお腹空いただろ。まだ休憩の街にはつかないから、用意してもらったサンドウィッチを食べておけ」
お父さんからサンドウィッチを受け取って、モグモグ頬張ります。やっぱり予定よりも遅れてるみたい。サンドウィッチ作っておいてもらって良かったよ。
それからだいぶ経って、ようやく休憩する街に着きました。小さい街です。ここで少しだけ休憩したらすぐに出発です。