77戻ってきた日常?
いろいろな事があってから数日。数日というか2日後、僕は今ぼけっと自分の部屋に立ってます。そして深呼吸してグレンに抱きつきました。それから元の位置に。
今僕の目の前にはマロンの等身大のぬいぐるみが。マロンだけじゃありません。他の魔獣のぬいぐるみも殆ど揃ってます。僕がグレンにお願いしてたぬいぐるみが今目の前に。
てかグレンこれだけの数のぬいぐるみ、どうやって2日で作ったの? だってずっと仕事してたでしょう。お父さんの仕事の見張りして、自分の仕事もして。僕グレンが休憩してるところ1回も見なかったんだけど。まぁ、休憩してるところは今までに1回も見た事ないけどさ。
でも、でもだよ、夜寝る前に作ったってこんな量のぬいぐるみ。それに等身大のぬいぐるみもマロン以外に何個かあるし。僕が前の世界でぬいぐるみ作ってた時は、手のひらサイズだったら1日で作れたけど…。凄すぎない?
そして僕がとっても嬉しかったぬいぐるみ達。等身大のマロンのぬいぐるみの隣に、そのマロンと同じくらいの大きさのディアンぬいぐるみと、その隣には等身大オニキス。オニキスの背中にはスノー、ブレイブにアーサーの等身大ぬいぐるみが乗ってます。そして…。
「わあぁ! これフウにそっくり!」
「僕のぬいぐるみもそっくりだ! 凄いや」
そうフウとライのそっくりなぬいぐるみまで背中に乗ってます。何で姿の分からないグレンが、そっくりな2人のぬいぐるみが作れたか…。そっか。帰って来てからのあの怒涛のような質問は、このぬいぐるみのためだったんだね。
家に帰ってきた次の日の、夜休憩室で休んでた時、僕グレンから質問攻めにあったんだ。フウとライの特徴をしつこく質問されて、僕ぐったりしちゃったの。顔の形、洋服の形、大きさ、髪の毛の色、特徴、もうねそれは細かく。何でこんなに質問してくるのって、ちょっとぶーたれてた僕だけど。
うん。これなら納得です。これだけ似てるフウとライ作ってくれたなんて、あのときぶーたれてごめんね。
僕はぬいぐるみに近づいて、まずマロンのぬいぐるみに抱きつきます。え? ちょっとこれ気持ち良すぎない? 確かにマロンのあのもふもふの毛もとっても気持ち良かったけど、それ以上にぬいぐるみの毛質が…。
次はオニキスに抱きつきます。オニキスは…。オニキスは本物のオニキスの方が気持ちいいや。
僕の真似してみんなが自分のぬいぐるみに抱きつきます。それを見て後ろに居たお母さんとビアンカが悲鳴あげてました。それからこれからもっと着ぐるみの洋服増やさないととか何とか…。うん。気のせいだよね。気のせいに決まってるよ。気のせいだよね?
全部のぬいぐるみ抱きしめた後は、これをどうやって飾るか考えなくちゃ。そう思ってたらグレンが僕のこと止めました。
「ハルト様。料理長のケイドリックがハルト様にご帰還のお祝いを用意したと」
僕のお家の料理長のケイドリック。街で1番美味しいご飯を作ってくれる人です。
グレンに言われてぬいぐるみのことはあとで考えることにして、先に食堂に向かいました。
僕の椅子に座って待ってると、ノックしてケイドリックが入ってきました。
「ハルト様、お祝いが遅くなって申し訳ない。ですがとびっきりを用意しました」
そう言うと別の料理人さん2人が、大きな台を押して部屋の中に入ってきました。台の上には大きなお皿と、その上にこれまた大きな蓋がかぶさってます。何々。一体何なの。
ドキドキしながら待ってると、大きなお皿だからね、ケイドリックとほか2人、3人でお皿を持ち上げて、テーブルの上にお皿を乗せました。フウとライが周り飛んでスンスン匂い嗅いで戻ってきます。
「とっても甘い匂い!」
「フウの好きな果物の匂いも!」
小さな椅子の上にケイドリックが立って蓋に手をかけます。
「良いですか。いきますよ」
ガバッと蓋を持ち上げるケイドリック。中から出てきたのは…。
オニキス達みんなの形したケーキやお菓子。それからいろいろなお菓子でできた装飾品でした。
「ケーキやクッキーやゼリー、いろいろなお菓子や果物で、オニキス達を作ってみました。フウとライはグレン様に聞きながら作ったんですよ」
「しゅごい!!」
お菓子で作ったって思えないくらい、オニキス達完璧に作ってあります。前の世界でテレビとか雑誌でこういうの見たことあるけど、本物初めてみたよ。
お父さんに抱っこしてもらって、反対側からも眺めます。オニキス達だけじゃなくて、切り株とか沢山の可愛い花とか、全部がお菓子で出来てます。
「ハルト様、いかがですか? ハルト様?」
「これはダメね。完璧に意識がお菓子にいっちゃってるわ。あんなに目をキラキラさせて。かなり気に入ったみたいよケイドリック。良かったわね」
「確かにキラキラの目をしてますね。喜んで頂けたようで」
僕に何か聞いた? ごめんね。僕今それどころじゃないんだ。僕嬉しくて前から見たり後ろから見たり横からも見たり。お父さんに何回もあっちこっちってお願いして動いてもらいます。フウとライもお菓子の周りグルグル回って。
それと今日は特別。いつもはテーブルの上に乗っちゃいけないスノーとブレイブとアーサーが、テーブルの上に乗っかって、自分のお菓子の前でしっぽフリフリです。
あんまり喜びすぎて、お母さんにそろそろ座りなさいって言われちゃったよ。椅子に戻ったけど、嬉しくて足のブラブラが止まりません。
ケイドリックが包丁でケーキを切り分けようとします。ああ!? ダメダメ、オニキス切るなんて。僕慌てて止めます。じゃあって今度はスノーのしっぽのところ切ろうとします。わあぁぁぁ! ダメダメそんな可愛そうなこと!!
「ハルトちゃん、確かに気持ちは分かるけど、切らなくちゃ食べられないのよ。せっかくケイドリック達が作ってくれたんだから、ちゃんと食べないとダメよ」
うう、だって…。でもお母さんの言う通り、せっかく僕のために作ってくれたんだもんね。ちゃんと食べなきゃ。
僕がちょっとしょんぼりしてる間に、お母さんがここの部分はオニキスにとか、ケイドリックにお願いして切ってもらってます。結局僕はオニキスの耳の部分とディアンの羽の部分をもらって、フウ達は自分を食べることになりました。
最初は目を瞑ってた僕。でも食べ始めたら落ち着いてきて、どんどん食べちゃいました。味はもちろん美味しいに決まってます。みんなもぺろっと食べちゃいました。
残ったケーキやお菓子は、夜のご飯の後のデザートに。さっき喜んでてありがとうちゃんと言ってなかった僕達は、みんなで並んでケイドリックにありがとうしました。
部屋に戻った僕は、ぬいぐるみの置き場所考えます。まさか等身大まで作ってくれると思ってなかったから、予定してた場所じゃ置ききれません。さて、どうしよう。
考えてるうちに時間が経ちすぎて、もう夜のご飯の時間です。いろいろやってみたんだけど、どうしてもうまくおけなくて、今僕のお部屋ぬいぐるみで散らかってます。
そのことお母さんとお話してたら、お父さんがとんでもないこと言ってきました。
「そうか置く場所こまってるのか。そうだな…。じゃあ隣の部屋までハルトの部屋の改築するか。フレッドの部屋よりは小さいが、まだハルトは小さいからな。それでも今の部屋は小さいと思ってたんだ」
え? 小さい? あの部屋で? いやいや小さくないでしょう。かなり広いよあの部屋。うまく片付ければ大丈夫だから、別に改築何て。と思ってたらお母さん達まで、
「そうね。それが良いかもしれないわ。グレン明日建築士を呼んでちょうだい」
「かしこまりました」
「ハルトちゃん、少し待っててちょうだいね。それまでは窓のところにみな並べておきましょう」
僕の部屋の改築が決まっちゃいました。話がどんどん進んじゃって、僕止める暇なかったよ…。良いのかなぁ。そんなに広いお部屋僕が使っちゃって。
ちょっと申し訳ない気持ちになりながら、さっきの残りのケーキやお菓子を食べる僕。もちろんお菓子は美味しかったけど…。
なんてこと考えてた僕。2日後にはお部屋の改築が終了しちゃいました。何この早さ。この世界の人達って、何しても早いわけ? グレンにしたって建築してくれた人にしたって、出来る早さがおかしいよ。
でもお父さんがお部屋改築してくれたおかげで、綺麗にぬいぐるみ並べることができました。ありがとうお父さん。
そして広くなったお部屋の真ん中の棚の上に、フェニックスの羽を置きました。早く戻ってきてね。何十年も戻ってこないなんてなったら、僕おじいちゃんになっちゃうからね。それはダメだよ。