73ディアンの普通の力?
「それでどうしてファイアードレイクと出会うことになったんだ」
ようやく少し落ち着いたお父さん、嫌々そうな顔しながらディアンに会うまでのお話聞いてきました。ふぅ、フェニックスのことは忘れてるみたい。良かったぁ。これでフェニックスのことで止まったら、お話が進まないよ。と、思ってたんだけど…。
「さっきお母さん、フェニックスッてディアンが言ってたの聞いたんだけど」
ってお母さんが。お母さんはニコニコのまま普通にフェニックスのこと聞いてきました。しかももうディアンって名前呼んで話進めてるし。そしてそれを聞いたお父さんはハッとしたお顔して、それから天井を向いて手で顔を覆いました。
「そういえばそんなこと言ってたような…。オニキス、まさかフェニックスまでハルトと契約したとか言わないよな」
お部屋の中がし~んと静まりかえります。バッと僕の方を見たお父さん。それからオニキス見てディアン見て、最後にはガックリと肩を落としました。
そんなお父さん達にオニキスが、ディアン達に会うまでのこと話します。それからディアン達に会ったあとのこと、全部詳しくお話しました。最初疲れた表情してたお父さん、だんだんと険しい表情に変わっていきます。この短時間でいろいろな表情をするお父さん。明日お顔が筋肉痛になってないといいけど。
最後まで話を聞いたお父さんが、大きくため息をつきました。
「逃してしまった団長のことも問題だが、その黒服達のことも大問題だな。まぁそれは俺達が後で考えることか……」
お父さんの言葉にお母さんとグレン、リスターとロイみんなが頷きます。
「と、今はハルトのことと、森で隠れてるっていう魔獣達の話だな」
ディアンはさっきからずっとニコニコして堂々と僕の隣にいます。僕がチラチラディアンのこと見たらディアンが僕の頭なでなでしてくれました。
「言っておくが、我は絶対に契約破棄はしないぞ。もし無理やり破棄しろと言ってきたりそういう行動を取ろうとすれば、すぐにでもこの街を消しお前達を消し、ハルトと森で暮らそう。ハルトに害を及ぼそうとする輩がハルトに近づかないように。」
また部屋の中がし~んです。ちょっと何言ってるの?! そんな不穏なこと言うからまたみんな黙っちゃったじゃん。僕はディアンのことキッて睨みます。そしたら睨む顔も可愛いってディアンが…。オニキスも平和に暮らしたいなら邪魔するなって言いました。
「はぁ。分かってる。契約というものがどれほど大切なものか。俺にもルティーが居るんだ。今更離れることができないのも、もしルティーを奪う者がいれば俺だって容赦しないだろう。だから言われなくとも邪魔はしない」
お父さんがルティーのことなでなでしながらそう言いました。
「が、いろいろ聞かなくてはいけないことがあるんだ。これからハルトとここで暮らす上で大切なことなんだ」
お父さんがディアンにいろいろ話を聞きます。もし変身をやめたらどのくらいの大きさになるとか、ずっと変身してられるのかとか。そうだね。これは聞かなきゃね。僕そんなこと全然考えてなかったよ。もし突然街の中で変身が解けちゃったら、大騒ぎじゃすまないよ。
でも、これについては何にも問題ないってディアンが。ずっと人間の姿でいられるし、変身は自分の意思で簡単に変えられるから、僕がドラゴンに戻っちゃダメって言った所ではドラゴンにならないって約束してくれました。
お父さんが次の質問しようとしたとき、今度はグレンが質問してきました。
「攻撃範囲はどのくらいですか? まぁ先程の話からこの街を1つくらいなら簡単に消せるのでしょうが」
「そうだな。この広さならばあと5つ分は一気に消せるぞ」
しかもねそれが最大じゃなくて最低なんだって。最大だったらどれくらいの攻撃ができるか、自分でも分からないって言いました。
し~ん。この沈黙何回目? 改めて僕すごい生き物と契約しちゃったって思いました。すぐに復活のグレンが質問続けます。
「すみませんが、そのドア開けてもらっても?」
変な質問するね。ディアンがドアに近づいてドアを…バキッて開けました。何バキッて? 普通そんな音する? お父さんがハァ~って大きなため息つきました。ソファーに深く座っちゃうとなかなか起き上がれない僕。もぞもぞふぬぬって力入れてたらオニキスが僕のこと咥えて、ソファーから下ろしてくれました。
ドアの方見たら…、ディアンがドアを持って立ってました。ドアは根本のところがバキバキに割れてて、引き剥がされたッて感じ? もしかしてディアンドア壊しちゃったの? 僕見えなかったから。でもあの音とディアンの持ってるドア見たら、やっぱりそういうことだよね。
グレンがため息ついてから、次は窓を開けてみてくださいって。窓を開けるディアン。またバキッて音がしてガシャンッ!! ってガラスが粉々に…。
「やはり思った通りですね。力が強すぎでしょう。これでは屋敷の物を全部壊されかねません。今までドラゴンの姿で魔獣しかいない広い場所に住んでいたのですから、その調子で動かれては大変です」
おお、グレンよく気づいたね。でも今まで何かディアン壊したっけ? なんで気づいたの? ていうか、それならよく普通にソファーとかに座ってたね。と、思ったときでした。ガタンッて音がしてスノー達が、
「「「わあぁぁぁっ!!」」」
『『キュキュイ!!』』
って叫んでソファーの上を転がりました。さっきまでディアンが座ってた方のソファーの足が折れてました。
「そういえば先程ディアンが座るとき変な音がしてましたね」
さっきグレンとディアンが少しもめたでしょ。そのとき手加減されてることに気付いてたグレン。それも相当な手加減されてるのが分かったみたいです。もしその力のままドアの開け閉めしたら、絶対に壊されると思ったんだけど、一応手加減してくれるか確かめたみたい。
今まではロイや使用人がドアの開け閉めしてたから、何も壊されなくて誰も気づきませんでした。
よくソファーは座った途端に壊れなかったなって、そのことディアンに言ったら、僕さっきちょっとだけ寝ちゃってたでしょう。起こさないように静かに座ったみたいです。でも壊れちゃったけどね。
「これは少し私が訓練する必要がありますね。私があなたに常識を教えなければ」
「なぜ我が人間にそのような事をされなければいけない?」
「ここはハルト様が暮らす屋敷ですよ。ハルト様のものを壊すつもりですか。それにこの様子では街の中での行動についても教える必要があるはず。いいですか? ハルト様のお側にずっと居たいのならば、明日から私と訓練です。口答えは許しません。これは決定事項です。いいですか。もう1度言いますよ。これはハルト様のためです」
「むう。仕方ないこれもハルトのためか」
「お前凄いな。ドラゴン相手に」
お父さんの言う通りです。凄い、ディアンが渋々だけどグレンの言うこと聞きました。さすがグレンだね。
そんなお話の最中お母さんがソファーに近づきます。それで軽々とソファー持ち上げて脚を拾うと、ソファーの下に入れました。転がってたスノー達がちょこんってまた普通に座ります。
「明日までに新しいソファーを用意しないとね。いいスノーちゃん達、危ないからそっと座っててね。あなた達だけなら今の状態でも大丈夫なはずだけど」
あのソファーってあんなに軽く持てる程軽いの? え? 僕がお目めパチパチしてる間にどんどん話が進みます。明日捨てられちゃう前にちょっとだけ触ってみようかな?
「さてと、今度はフェニックスの話だが。オニキス達の話だと今フェニックスは眠っているって話だが、どこで眠ってるんだ? それにハルトはまだフェニックスとは契約していないんだろう?」
「まだしていないが、眠りから覚めれば確実に契約するぞ。ハルト見せてやれ」
ディアンに言われて、僕はオニキスカバンからそっと包みを取り出して机の上に置きました。それからやっぱりそっと包みを広げます。とっても綺麗なフェニックスの羽が出てきました。良かった羽がちぎれたり、ボロボロに折れてなくて。
みんながフェニックスの羽を見つめました。