70僕のお家。僕の家族。みんなただいま!!
どんどん近づいてくる街の大きな壁。壁の外に並んでる街の中へ入るための検査を待つ人達の列も見えてきました。もうね、ドキドキが止まりません。と、ロイが僕達に止まるように言いました。それで壁からちょっと離れたこの場所で待ってろって。
え? 何で? もう僕ドキドキし過ぎて疲れて来ちゃってるんだ。もうね早く会うなら会うで、どんなこと言われても良いように覚悟してるんだけど。オニキス達も何でってロイに突っかかってます。
フウ達の攻撃を避けながらロイがお話します。
「ハルト様。おそらくハルト様の捜索がされていたでしょうが、ハルト様が拐われてからかなりの日にちが過ぎています」
僕が拐われてからお父さん達が街の騎士や冒険者に、僕のこと探すように命令したはずだって。もちろん僕の似顔絵を全員に渡してるって。僕は知らなかったけど、僕が今回みたいに拐われたり行方不明になった時は、似顔絵を配って全員で捜索するって話になってたみたいです。騎士の方はお父さんが冒険者の方はお母さんが指揮をとってるみたい。
それで今回のことになるけど、街中に僕の顔が知れ渡って、壁の門の所では警備の騎士達が街に来た人達に僕の似顔絵見せて、僕を見てないか確認してるはず。だからもし僕がこのまま普通に街に戻ったら街に入る前に大騒ぎになって大変なことになるって言われました。
あ~うん、そうね。それだけ僕の似顔絵みんなに見せて捜索してたら、僕が街に近づいた途端に大騒ぎになるね。だからねロイだけ先に街に戻ってお父さん達呼んできてくれるって言いました。
「私はハルト様の護衛です。特別に騎士の門から入ることを許されています。そこからこっそり入れば大丈夫なはずです。警備の騎士にはハルト様の安全のために騒ぐなと言えばいい。いいですか。ハルト様絶対ここから動かないでください」
「我等が居るのだ安心しろ。早くハルトの家族を呼んでこい」
ロイがフードをかぶって歩いていきます。僕は大きな木の下に座ってロイがお父さん達呼んで来てくれるまで、オニキスに寄っかかって休憩です。少しドキドキおさまったかな。
ディアンにはここに着くまでに僕の家族のこと教えました。お父さんとお母さんお兄ちゃんのこと、それからグレンやビアンカのこと。話したら随分家族が多いんだなって。みんな僕の大切な家族だよ。もちろんディアンといつ復活するか分からないけどフェニックスもねって言ったら、ディアンとっても嬉しそうな顔してました。
その話した日の夜、ディアン夜のご飯の狩りに出掛けたんだけど、狩ってきた魔獣見てロイが気を失いそうになってました。うんもちろん僕はびっくりして気絶したけどね。
だってね狩ってきた魔獣キマイラだったの。僕の前にドシンッてキマイラを置いたディアン。人の姿に変身してニコニコ顔で僕の所に。
「珍しい奴が居たからな。この肉は美味しいのだ。我でもなかなか出会うことが出来ず何十年ぶりに見つけたのでな。ハルトと契約して魔力の調子も良く一瞬で仕留めることができた」
その時の僕の前には大きなライオンの頭が。大きな牙と独特の獣の匂い…。ディアンがニコニコ話をしてる最中、僕はそのまま気を失いました。僕が気を失ってる最中にオニキスが怒ってくれたみたい。もちろんフウ達も怒ってくれてあの煩い攻撃してくれたって。起きた僕にディアンは土下座してました。この世界にも土下座ってあるのね。
キマイラのお肉はロイがなんとか気を失わないで切り分けて、みんなで分けて食べました。味は…、凄く美味しかったよ。高級な和牛みたいな感じ? あの見た目と迫力のことがなければもっと美味しく味わえたんだけどね。
大きなキマイラも、僕達とみんなで食べたら綺麗になくなっちゃいました。
どれくらいの時間が経ったかな。ロイ上手く街に入れたかな何て考えてたら、それまで伏せしてたオニキスが顔上げて耳をピクピク。
「街の方が騒がしいぞ」
「そうだな。あれば馬の足音か?」
ってディアンも。え? 何々? もしかしてロイの作戦失敗しちゃったの?
僕は立ち上がって木の影から街の方を見ます。ん~、確かに馬が走って来てます。それから馬車も。結構なスピードが出てるみたい。
どんどん近づいてくる馬と馬車。それで僕気が付きました。向かってくる馬車に付いてるマーク、あれって確かお家のキアル家のマークだったはず。じゃあ今走って来てるのって…。
僕の隣に立つオニキスとディアン。それからいつもみたいに僕の肩の乗るフウ達と僕が抱っこするスノー。オニキスの上にブレイブ達が乗っかって、あの馬と馬車が僕達の所に着くの待ちます。
最初に騎士が乗った馬がバッて陣取って、僕達の周り囲みます。その囲みの中に馬車が入ってきて僕の目の前で止まりました。馬車の後ろからロイが馬に乗って現れて、僕の方見てニコッて笑ったあと馬車の扉を開けました。
最初に馬車から下りて来たのはお父さん、次にお母さんが下りて来て最後にお兄ちゃんが下りて来ました。僕の前に並ぶお父さん達。何だろう。みんな無表情っていうか、僕のこと見て何とも言えない顔? してます。どうしよう。今までまったりしちゃってたからここに着いた頃の1番酷いドキドキが再発しちゃったよ。
やっぱりもう僕のこと諦めてた。それとも簡単に拐われたこと怒ってる? 僕オニキスにしがみつきます。
「おい!」
オニキスの声にビクってしてお父さん。その瞬間お母さんが走り寄ってきて僕の事をギュウゥゥゥって抱きしめてきました。何が起こったのか分からない僕。僕とお母さんに挟まれてスノーが、
「くりゅちいぃぃ…。」
って言ってます。でもお母さんのギュウゥゥゥっが終わりません。それにお母さんちょっと震えてる? 僕がどうしたらいいかオロオロ考えてたらお母さんが。
「ハルトちゃんごめんなさい。辛かったでしょう。怖かったでしょう。お母さん助けにいけなくて迎えにいけなくて。良かった。良かったわハルトちゃん!!」
お母さん涙声でずっと僕の名前呼んでます。そんな僕とお母さんに今度はお父さんが寄ってきて僕とお母さん両方を抱きしめました。お父さんも力強く僕達の事抱きしめてくれます。
「ハルト、無事で良かった。良く戻ってきたな。不甲斐ないお父さんですまない。それからなかなか迎えにいけなくて悪かった」
そっと顔を上げると、お父さんと目が合ってお父さんの目にも涙が溜まってました。
「おとうしゃん。おかあしゃん。おこってない? ぼくかっていなくなっちゃ。しゅぐにかえってこなかったかりゃ。ごめんしゃい。かっていなくなっちぇごめんしゃい。しんぱいごめんしゃい。ぼくかえっちぇうれち?」
今僕が言える精一杯の気持ちを伝えました。それを聞いたお父さんとお母さんがそれぞれ僕のこと見ます。泣いてるお母さんとお父さんがびっくりしたお顔してます。それからすぐに2人はまた僕の事抱きしめてきました。そして、
「バカやろう! お前は俺達の子供だろう! 心配しない親がどこに居る! お前がごめんと言う必要ないんだ! 分かるか? 帰ってきてくれて嬉しいに決まってる!」
「ハルトちゃんお母さん達の所に帰ってきてくれてありがとう。お帰りなさい。」
「ハルトお帰り。」
僕の頬を知らないうちに涙がポロポロ溢れます。
「ヒックっ、エックっ…、ただいまでしゅ…。ふえぇ、うわあぁぁぁぁぁぁん!!」
もうね涙が止まりませんでした。こんなに泣いたのは向こうの世界のお父さんとお母さんが死んだ時以来かな? それから僕のことお帰りって言ってくれる人がいるの何時ぶりだろう。帰って来てくれてありがとうなんて喜んでもらえるの何時ぶり? 向こうの世界の僕の優しいお父さんとお母さんに、今のお父さんとお母さんが重なります。
あぁ僕帰って来たんだ。僕ここ居ても良いんだ。僕の家族。ここに帰ってこれて本当に良かった。
僕が泣いてる最中にお父さんがお兄ちゃんのこと呼びました。ずっと静かに馬車の前で待ってたお兄ちゃん。お兄ちゃんが僕達の所に来るとお父さんはみんなまとめて抱きしめました。
それからしばらく僕が落ち着くまで、みんな離れずずっと僕のこと抱きしめていてくれました。
みんなただいま! 僕帰って来たよ!