68ディアンの変身
フウ達を抱きしめながらオニキス達が帰ってくるの待ってたら、急に空が暗くなりました。パッて顔を上げると、ディアンが羽を広げて降りてくるところでした。全然音しなかったんだけど…。あれだけ大きいのに。
まぁそれはいいや。地面にディアンが降りるとオニキスがロイの洋服咥えて、ぴょんって地面に降りてきました。
「オニキス!!」
僕は立ち上がってオニキスに駆け寄ると、オニキスのモフモフの気持ちのいい毛を体全体で感じるように、ぎゅうって抱きつきました。良かったぁ。オニキスちゃんと帰ってきた。誰にも何もされてないよね。
「ハルト、起きてオニキス居なくてとっても心配してたの。フウ、街に行っただけだからすぐ帰るって言ったんだけど」
「今までずっと一緒に居たのに、寝てるうちに居なくなっちゃったから、ハルトとってもオニキスのこと心配したんだ」
「ボクもちんぱい」
ブレイブとアーサーがオニキスの顔をしっぽでバシバシ叩きます。だって黒服達のこともあるし、このまま帰って来なかったらどうしようと思ったんだもん。僕の家族。僕がこの世界に来てから1番ずっと一緒にいる家族だよ。そんなオニキスが居なくなったら僕やだよ。僕いつの間にか泣いちゃってました。
「すまないハルト。こんな知らない森じゃなくて、早く家に帰してやりたくていろいろ調べに行ったんだ」
オニキスがすりすりしてくれます。なんとか泣くのが落ち着いてから、僕はオニキスに寄りかかって座りながらオニキスとロイの話を聞きました。
街に行ってきたオニキスとロイ。地図を手に入れて、これから必要になるかもしれないいろいろな物を買って帰ってきました。僕におもちゃと絵本まで買ってきてくれたんだよ。あとオニキスのぬいぐるみも。今僕そのぬいぐるみ抱っこしてます。
それから買ってきて貰った洋服にも着替えて今さっぱりしてます。汚れてボロボロの洋服はオニキスに汚れだけ浄化してもらいました。新しい洋服があるから大丈夫だろうけど一応ね。ボロボロでも着ないといけないかもしれないし。
ロイの話だと、ディアンに乗ってシーライトの街まで帰ればかなり早く帰れるみたい。僕達がそのまま歩けば何十日もかかるけどね。でも問題はディアンです。ファイアードレイクのディアン。そんなディアンを街の人達が見たら大騒ぎです。まぁ、珍しいって言うのは分かってたつもりだけど、そんなに珍しいのかなって思ってロイに聞きました。
普通のドラゴンはたまに冒険者が見たり戦ったりするから、そんなにみんな驚かないみたい。でもディアンは、ファイアードレイクはみんな本の中に書いてあるだけって、居ないって思ってるんだって。
そんなドラゴンがいきなり街に現れたら? 飛んでるところを見られたら…。そりゃ大騒ぎになるよね。
「それについてだが」
話を聞いてたディアンが、森の上を飛ぶのは問題ないって言ってきました。ディアンね人の気配を察知できるから、森の上や林の上を飛んでる時はもし人が居たら避けて飛べば良いって。う~ん。それでもディアン大きいから遠くから見えるんじゃ。
「あまり人間が居るようならその時は隠れて動かなければ良い。まぁその間はハルトに待ってもらうことになってしまうが」
隠れる…。ここみたいに広い隠れる場所あるかな? オニキスは他にも問題があるって。
「確かにそれなら大丈夫そうだが。だが他にも問題があるだろう。街の近くや街ではどうするんだ。お前だけ森の中で隠れて暮らすつもりなのか? そしたらハルトとはずっと一緒に居られないんだぞ」
そうだよ。もし家に帰れてもディアンが一緒じゃなきゃ。だってせっかく家族になったんだよ。1人だけ隠れて暮らすなんてダメだよ。
「それもな。説明するよりやった方が早いか? 昔な皆の前でやったことがあるんだが、どうもはっきりと人間を見たことがなかったからな。我も皆も合っているのか間違っているのか分からなかったのだ。どれ…」
ディアンはそう言うと目を瞑りました。一瞬してディアンの体が光り始めます。ぽわぁって優しい光からだんだん強い光に。最後には僕達が目を瞑らないといけないくらい明るく光りました。
やっと光が落ち着いてきて目を開けたとき、僕達の目の前に1人の男の人が立ってました。髪の毛は真っ赤で洋服は冒険者が来てるような洋服。背が高くてダンディーなおじ様って感じの男の人です。
「おじしゃん」
僕が思わずそう言ったら、
「おじさんか…。もう少しこう。そうだな」
おじさんが光り始めます。次に光から現れたのはロイと同じくらいの歳の、ハンサムな…、おじさんでした。
「どうだ。ちゃんと人間に見えるか」
なんとディアンがおじさんに変身しました! それもカッコいいハンサムなおじさん。思わずみんなでディアンに駆け寄ります。周りをぐるっと回って洋服とか手とか触って、最後に顔をじぃーって見ます。どっからどう見ても人間です。
「ディアン、カッコいい! へんちんしゅごい! カッコいいおじしゃんね」
「そうか。だがまだおじさんか。我は若く見てもらいたいんだが。いつもオヤジやおじさんや魔獣の子には大きいじいじだったからな。人間の姿のときくらいお兄さんでもいいだろう?」
え? お兄さん? ディアンってそういうの気にするの? でも僕さっきのダンディーなディアンも今のディアンもとっても好きだよ。フウ達もみんなカッコいいって言ってるし。スノーなんてボクもカッコいいおじさんに変身したい、って周り跳ね回ってるし。
でもこれなら街で歩いてても、誰もディアンがドラゴンだなんて分かんないよね。ずっと一緒に居られるよね。
パッてオニキスとロイ見たら、ロイが何とも言えない顔してました。それで固まってるの。僕ロイに近づいて洋服の端っこのところ引っ張ります。そしたらハッてなって僕の方見るロイ。
「ロイ、どちたの? とまってりゅ」
「あ、いえ、まさか姿を変えられるとは」
それからも独り言ぶつぶつ言ってるロイ。本当にどうしたんだろうね。
まぁそんなロイはほっといて、もう1回ディアンの所に行って、カッコよく変身したディアンにみんなで拍手です。
「お前が言っていたのはこれのことだったのか。これなら森を飛んでいて急に人間の気配がしてもすぐに隠れることができるな」
オニキスがゆっくり近づきながらそう言いました。そうだね。これでどこでもサッて隠れられるね。
ディアンの問題も解決して、オニキスが次の話をするって。え? まだ問題があるのって思ったら、まずもう1回みんなでご飯食べて少しゆっくりして、僕の家の方に向かいながらディアンの背中の上でお話するって。
そうだよね。オニキス達今帰って来たばっかりだもん。ごめんね僕自分のことしか考えてなかったよ。せっかくぬいぐるみとか買って来てくれたのに、ほらゆっくり休んで。みんなで葉っぱ集めて葉っぱのお布団作って3人に座ってもらいました。それからご飯を並べます。
「どじょ。おみじゅは…、ロイだちて」
ロイは僕より先に食べるなんてって言ったけど、ロイが食べないと僕が食べないって言ったら渋々食べ始めました。3人が食べ始めたの見て僕達もご飯です。移動前のゆっくり時間。
ご飯食べてゴロゴロして今夕方です。ゆっくりし過ぎちゃった? 移動は明日から?
「いやなるべく夜に移動する。ディアンは夜でも問題なく移動できるからな。街へ行った時に確認した」
「ああ。全く問題ない」
夜の真っ暗の中移動した方が暗闇に紛れて移動できて、他の人達に姿を見られる心配が減るからって。なるほど。
完璧に日が沈んで僕達の周りはライが居ないと何にも見えません。さぁ、いよいよお家に向かって出発です。前と一緒でまず僕がオニキスにディアンの背中に乗せてもらって次にロイ、その次がマロン達でその後にどんどんみんなが乗っかりました。僕が怖くないようにライがずっと光ってくれてます。ロイの魔法と交代で光ってくれるって。ありがとうライ。
フワッと浮かび上がるディアン。そしてビュッて前に飛び始めました。それを確認したオニキスが後ろに乗ってる魔獣達に話し掛けます。オニキスがさっき言ってたお話です。
「ハルトや俺達は家のあるシーライトに戻るが、お前達はこれからどうする。」
あっ! そうだマロン達のお家。とっても大事なこと忘れてたね。マロン達黒服達に捕まる前どこで暮らしてたのかな。もしかして僕のお家と別の方向? もしそうだったら先にマロン達送ってあげなくちゃ。
オニキスの言葉に、最初に話し始めたのはガーディーお父さんでした。