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65さようならとその先へ

目を瞑ってからどれくらい経ったかな。来るはずの衝撃が来なくて、しかも周りが急にシンって鎮まりました。僕は恐る恐る目を開けます。

 目を開けてすぐです。僕のことを綺麗な光が包みました。それから隣で寝てるマロンのことも。あとは怪我してる魔獣達もね。どんどん怪我が治っていきます。僕の背中の怪我もマロンのお腹の傷も。スッてどんどん治っちゃうんだ。


 そして光が消えたときには完全に痛みも怪我も、全部が治ってました。オニキス達の姿探したら、オニキス達がびっくりした顔して僕のこと見つめてました。それからすぐにパッてみんながある方向見上げました。オニキス達だけじゃなくて、マロンのお母さんも他の魔獣も。黒服と団長まで同じ方向見上げてます。みんなが見上げてるんだ。


 何見てるんだろう。そう言えば今まで僕達を襲ってた黒いモヤモヤは? 僕はみんなが見てる方見ながら周りの真っ黒いモヤモヤが全部消えてることに気づきました。一体何が起きてるの?そして見上げた先には…。


「何で……」


 僕は囁くようにそう言ってました。

 

 見上げた先にはフェニックスが飛んでたんだけど、フェニックスの全てが穢れに包まれていました。それも祓う前よりももっと禍々しい穢れに包まれてて。

 何で?! 僕頑張って祓ったのに。何でまた穢れに飲み込まれちゃってるの?! 

 愕然とフェニックスを見る僕。そんな僕にフェニックスが気づいて。フェニックスが笑った気がしました。


 次の瞬間フェニックスが攻撃態勢に入りました。あんな穢れに取り込まれたまま力を使ったら。力を使ったら…? もしかして僕やマロンみんなの怪我が治ったあの綺麗な光って…。それに周りに全く真っ黒いモヤモヤが無いのって…。

 黒服と団長に攻撃しようとするフェニックスを見ながら、それに気づいた僕。モヤモヤを消して、僕達の怪我を治すのに力を使ったから、そのせいで祓えてた穢れが…。


 黒服がフェニックスの攻撃が届く前に、黒い丸を出しました。その中に黒服と団長が入って行きます。2人が入るとすぐに黒い丸は消えました。黒服が居なくなれば、あの変な魔法使える人間はいないから、手下の黒服達を次々に魔獣達が倒して行きます。


 でもフェニックスは…。もう1度飛びながら僕の方見て、今度こそハッキリと笑った顔が分かりました。次の瞬間フェニックスは落ち始めます。慌てて僕駆け寄ろうとしました。でも足場が悪くて転びそうになっちゃって。オニキスが僕の洋服咥えて支えてくれました。その時前からドシャって音が。少しの土煙の後、穢れが溢れ始めました。


 穢れの中心に地面に落下したフェニックスが見えます。早く祓わなきゃ!! また急いで近づこうとしたら、オニキスが洋服離してくれません。バタバタしても何しても離してくれないの。


「オニキス、はなちて!! フェニックシュしんじゃう!!」


「ダメだハルト」


 言ったのオニキスじゃありませんでした。ドレイクが僕達の隣に来て言います。


「もうダメなのだハルト。奴は助からん」


 そんな事ないよ! だって子ファングのお父さんの穢れ祓った時だって、なんとか祓えたんだから。絶対大丈夫だよ!

 

 僕が暴れてる時、他の魔獣がフェニックスの周りに集まって来ました。そして穢れが届かない所でお座りをします。それからみんなが鳴き始めました。みんな何してるの?


「別れの挨拶だ。皆、奴が死ぬのが分かっている。ハルト、これはもう避けられない事なのだ」


 ダメ! ダメだよ! 僕何とかフェニックスの所に行こうとしました。その時、フェニックスの大きな声が。僕の名前呼んでます。バッてフェニックスの顔見ました。フェニックスがニコって笑ってます。それから静かに話し始めました。


「ハルト。あそこまで穢れを祓って貰ったのにすまない。だが、我にとって黒服の攻撃でハルト達を失う方が耐えられることではないのだ。それに最後にハルトの暖かい魔力に触れることができて、もう思い残すことはない。我の言っていることは分かるか? ハルトはまだとてもとても幼いからな」


 僕はコクって思いっきり頷きます。いつの間にかポロポロ涙が溢れてきました。


「そうか。なら我がもうここにいられない事も、オニキス達の話からちゃんと分かっているだろう」


 僕は小さく頷きます。分かってる…、本当は分かってるの。でも、もしかしたらって。何とかなるんじゃないかって。


「ハルトに我からお願いがあるのだが」


 お願い? 僕に出来ること? 僕何でもするよ!!


「我はこれから穢れに全てを取り込まれる前に、自らこの世から消える」


 僕の体がビクッてしました。その言葉の意味ちゃんと分かってるから。でも…。僕は涙をゴシゴシしてまっすぐフェニックスの目を見ます。だってフェニックスの最後のお願いだもん。


「我が消えると、我の一部だけがこの世に残る。それをハルトに持っていて貰いたいのだ。それは新しい我が生まれるためにとても大切な物。どれだけ時間がかかるか分からないが、新しく生まれてくる我をハルトに任せたい」


 そうか! フェニックスって復活するって、僕達の世界ではそう言ってたよね。それのことだよね多分。


「我の意思は次の我に引き継がれる。きっと我のハルトの記憶がある分、次の我は生まれた瞬間からハルトのそばから離れず、ハルトの力になるだろう。次の我のことをよろしく頼む」

 

 僕はしっかり頷きます。フェニックスがもっとにっこり笑いました。それから今度はニヤッって。え? 何? 何その笑い。僕達真面目な話してたよね。フェニックスはドレイクの方見ました。


「どうせお前はハルトについて行くのだろう? お前はすでにハルトの虜だからな。ならばお前にも…、そうだなこれは我からの命令か? いいかハルトにとってお前は強力な力になる。これからハルトには黒服達のような者が何人も近づいてくるだろう。そんな輩から絶対にハルトを守れ。そして生まれ変わった小さい我のことも守れいいな」


「最後がこれか…。はぁ。そんなこと当たり前であろう」


 ドレイクが頷きます。それから僕のこと見て頷きます。フェニックスが時間がないから早くしろってドレイクに言ったけど何のこと?ドレイクが僕の前に座り直ります。


「ハルト我と契約してくれ。我はハルトから絶対に離れず、ハルトのピンチには全力でハルトを守ると誓おう」


 ああそうか。フェニックスはこれを見届けてから逝くつもりなんだ…。なら安心して逝けるように、ドレイクとちゃんと契約しなきゃ。

 僕もピシッてドレイクの前に立ちます。オニキスに手伝って貰って魔力を溜めたら、いつもみたいに契約です。


 が、ここで問題が。僕名前考えてない! こんな急に契約になると思わなかったから。どうしようどうしよう。どんな名前がドレイクにピッタリ? 早く考えないと、う~んう~ん。あっ、そうだ! うんこれが良い。


「ドレイク、なまえディアン。えと、ガーディアンみんなまもっちぇくりぇるひと。ガーディーはガーディーおとうしゃんいりゅからダメ。だからディアン。」


「ディアンか。とても良い名前だ。それで頼む」


「ディアンぼくとけいやくちてくだしゃい」


 ディアンが体全部が光ってすぐに光が消えました。ディアンの羽が前よりもカッコよく大きくなってます。これでも僕の家族だね。僕は爪に抱きつきました。


「さあ、そろそろ時間だ。皆に見守られながら逝けるのはとても嬉しいことだ」


 フェニックスがスッて飛び上がりました。体が全体がオレンジ色の炎で包まれます。包まれた途端、今までフェニックスにまとわり付いてた穢れが一瞬で消えました。あの炎は聖なる炎なんだって。全ての物を浄化しちゃうとっても綺麗な炎です。


 どんどん炎が大きくなって、もうほとんどフェニックスの姿が見えません。うん、やっぱり寂しい…。止まってた涙がまた出てきちゃいました。そんな僕に、フェニックスの声が。


「ハルトありがとう」


 その言葉とともに炎が弾け飛びました。もうそこにフェニックスの姿はありません。どんどん涙が溢れてきます。


「うえっ……」


 涙で霞む視界に、ある物が映りました。涙で良く見えない。何とか涙を拭いて見たら、ヒラヒラと何かが落ちて来てます。ヒラヒラ、ヒラヒラ。ヒラヒラしながらどんどん僕の方に近づいて来ました。僕は急いで両方の手のひらをくっつけて前に出します。

 ヒラヒラ落ちて来たのは1枚の綺麗なフェニックスの羽でした。


「ハルト、それがフェニックスの言っていた一部だ。大切に持っているんだぞ」


 ディアンがそう教えてくれました。僕はそっと羽を抱きしめます。


 大丈夫。いつ会えるか分からないけど、僕絶対次のフェニックスのこと守るよ。だから早く帰って来てね。

 そう思った瞬間、火山のせいで曇ってるはずの空に、一筋の光がさしました。

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― 新着の感想 ―
[一言] これと物凄く似た展開の話見た事あるけど同じ人?
2021/01/22 13:10 退会済み
管理
[気になる点] 作者様 羽より 鳳凰玉(卵)の方が良いのでは 理由は 凄く単純なのですが 他に 現存する抜けた羽が1枚も無い設定なら問題無いのですが・・・ ※フェニックスの加護に羽を与える事が出来な…
[一言] お疲れ様ですm(*_ _)m うぅぅぅ フェニックス~( > <。) はやく戻ってきてぇ
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