58突然の作戦開始
僕がここに来てからどのくらい経ったのか、僕やロイには分からなかったけど、オニキス達は感覚で分かってるみたい。今は2日目の夜だって。オニキス達が僕のこととっても心配してくれてます。ここに来て、口にしたのはサーカス団員と黒服の手下?が持ってきた、リンゴくらいの大きさの木の実が6個だけ。僕、ちょっと疲れて来ちゃったんだ。
それにたまに声が聞こえてくるから具合悪くなったりして。フウ達が花結界張ってくれてるけど、作戦会議するのに大切な結界。あんまり何回も使うと粉なくなっちゃう気がしてやめてもらったの。オニキス達は大丈夫だからって言ったけどね。もしかしたらってこともあるでしょう。スノーも苦しいのにごめんね。僕は具合が悪くなると、スノーのことなでなでしてあげて、何とか我慢して貰ってます。
そんな感じで待つ僕達。次にガーディーお父さんかラナお母さん、マロンかその他の魔獣が僕達の所に来るときには、いよいよ計画の最終確認だと思ってた僕。でもそれは突然だったの。
「いいか! 見張っているんだぞ! もし何かあれば分かっているな!」
凄い勢いで黒服の手下に連れられて来たのはガーディーお父さんでした。手下はガーディーお父さんを部屋に入れるとさっさとドアを閉めて行っちゃいました。オニキスがすぐにフウ達に花結界を張らせます。
「何だ? 何かあったのか?」
「分からん。が、今だ。黒服の数もサーカス団の連中も数が異様に少ない。ハルトがどれだけ離れた仲間の首輪を外せるか試すなら今がその時だ。そして首輪がちゃんと外せるようなら、すぐに計画を実行した方がいい。もしかしたらこれが動ける最後のチャンスになるかも知れん」
え? こんなに急に?
ガーディーお父さんが自分達がいる部屋と、捕まってる子供魔獣達が何処にいるか説明を始めました。ここから1番遠い大きな部屋に入れられてるのが、ガーディーお父さんやラナお母さんマロン達に他の魔獣。それで閉じ込められて人質にされてる子供魔獣達は、僕達とガーディーお父さんさん達のちょうど真ん中の部屋みたい。
ガーディーお父さんが、自分の毛の中から体を揺らして紙を取り出しました。へぇ、随分器用に入れられるねって感心してたら、早く見ろって急かされちゃったよ。紙はサーカス団の街に来たよって知らせるためのチラシでした。サーカス団が街に来たときに街にも貼ってあったやつ。
その絵の中のある部分をガーディーお父さんが大きな前足で指しました。ん~? どれ? ウサギと犬とサル。どれのこと指してるの?
「そのブリザードモンキーが分かるか?」
モンキーってことはこのサルのこと指してたんだね。前足が大きいから何種類も指してるように見えるんだよ。でもモンキーって、この世界の魔獣は地球と結構似てる生き物が多いんだね。まあ、地球の生き物は魔法使えないけど。
「しゃる」
「しゃる? モンキーだが?」
サルとは言わないんだね。
「今、このブリザードモンキーは我々が居る部屋にいる。今この場でハルトにこのブリザードモンキーの首輪を外して貰いたいのだ。外すことが成功すれば、あちらから合図がある。私には聞こえるからな」
僕が首輪外しやすいように、ブリザードモンキーがどんな魔獣かチラシで教えてくれたみたい。そっか。この前は近くにいたし、ほとんど姿が見えてたもんね。どのくらい離れてるか分かんないけど、外れなかったら大変だもん。
それと、ブリザードモンキーは手が器用だから外した首輪、もし黒服達に見られても、手で付けてるようにカモフラージュ出来るって。
最初の計画です。僕がまずブリザードモンキーの首輪外します。外すのに成功したら次に僕達の首輪外します。ガーディーお父さんのもね。それで外し終わったら、今は何でかこの家にあんまり居ないサーカス団員と黒服の目を盗んで、僕達だけ先に外に出ます。外に出るの、壁壊したりすれば早いけど、残ってる黒服達が全員で攻撃してきたら面倒だからって、いい逃げ道があるからそこまでガーディーお父さんが案内してくれるって。その出口でブリザードモンキーと合流です。
家の中を比較的自由に動けるブリザードモンキー。手先が器用なせいで、雑用押し付けられてるから、フラフラしててもあんまりおかしくないみたい。それにね、僕が外に出るのに、ブリザードモンキーは絶対に必要なんだって。外はとっても熱くて、僕なんかすぐに具合が悪くなって倒れちゃうって。体を冷やせる魔力石があってもダメ。火山の熱さに耐えられるのはブリザードモンキーの魔法だけなんだって。
それで僕達が外に出たら、今度は僕が全部の魔獣の首輪外します。それでそれも成功したら、家の中に居る黒服達を、一気に残ってたメンバーが攻撃します。あの1番強い黒服と団長達が居ないと、今残ってるのはラナお母さん達で倒せるくらいの奴らばっかりだって。
どうしてこんなことするのか。何かの方法で連絡されても困るから、全員で一気に動いて倒した方が良いって。それにね、もし連絡されちゃって黒服達が戻ってきても、先に外に出てた僕達が外に居れば、僕達だけでも逃げられるかもしれないから。僕が逃げるのが大事って言ってくれたんだ。ダメだよそんなの。絶対にみんなで逃げるんだから。僕頑張るからね。
気合を入れる僕に、ガーディーお父さんがまた体揺らして、2つの木の実を毛の中から出してきました。
「これは食べると魔力と体力を回復できるとても珍しい木の実だ。この前お前を拐ってきた日に団長が我に渡してきたものと、今日の朝、奴らの目を盗んでとって来たのだ。ハルトがこれからどれだけ魔力も体力も使うか分からん。だからこれはハルトお前が持っているのだ。オニキス、ハルトの様子がおかしいと感じたらすぐに食べさせろ」
「分かった」
こんな大切な木の実まで用意してくれたの。僕はガーディーお父さんの足に抱きつきます。
首輪を外す前に、ここからすぐに出れるように、みんなでオニキスに乗っかります。ブレイブとアーサーはガーディーお父さんに乗っかりました。それから黒服達に渡されてた部屋を涼しくしてた魔力石も一応持ちました。ブリザードモンキーが僕達冷やしてくれるけど一応ね。
この時僕大切なこと聞くの忘れてました。声が聞こえた魔獣のこと聞くの忘れてたんだ。だってオニキス達、どんな魔獣が僕とスノーと波長があったか知ってるんでしょう。それ思い出して聞こうと思ったんだけど、オニキスとガーディーお父さんが早く早くって言うから、逃げてるときに聞くことにしました。
さあ、準備は万端。いよいよ首輪外します。僕は体の中にあのあったかい魔力を溜めるイメージです。久しぶりの魔力。ちょっとだけ時間がかかっちゃったけど、何とか魔力を溜めることが出来ました。
「よち。だいじょぶ」
フウとライが結界をしまいます。首輪外すときの魔力、どうかバレませんように。僕はそう思いながらこの前みたいに言いました。ブリザードモンキーの首輪が外れるように、
「くびわ、はじゅれちゃえ!!」
部屋がシーンって静まりかえります。ブリザードモンキー居ないからね。反応が…。
僕が外れちゃえって言ったほんの少しあと、ガーディーお父さんがビクってしました。
「…そうか分かった! ハルトちゃんと首輪は外れた。次は我々だ!」
ふう、良かったぁ。とりあえず1番最初のミッション完了だね。よし次は僕達。またまた外れちゃえって言います。僕とガーディーお父さんの首に付いてた首輪が、カチャンって音がして外れて下に落ちました。よし、僕達の方も成功。ロイが凄いって言ってます。
それで僕達はすぐに、そっと部屋から抜け出しました。オニキスとガーディーお父さんが気配を探りながら廊下を歩き始めます。2人とも凄いんだよ。全前足音立てないで歩くの。僕なんて歩くとき、パッタパッタ、パタパタパタってすごく幼い足音が…。
廊下を右に曲がろうとしたとき、ガーディーお父さんがまっすぐ先を前足で指してコソッて僕に教えてくれました。
「見えるか。まっすぐ行って1番初めの部屋。あそこの部屋に閉じ込められている子供達がいる。1番奥の部屋が、ラナやマロン、他の魔獣達が集まる部屋だ」
よし了解。まったくどこの部屋に居るか分かんないより、部屋だけでもここって分かってる方が、首輪外し易い感じがするでしょう。
確認してすぐに右に曲がりました。ガーディーお父さんが言った通り、本当に手下達の人数が少ないみたい。もちろん2人が気配を探って歩いてくれてるけど、全然僕達の方に来ないって。それにオニキスは部屋の中に居たときよりも気配を探り易いって。閉じ込められてた部屋、何か対策がしてあったのかもって言ってました。
そしてついにブリザードモンキーと合流する場所に着きました。そしてそこには真っ白な、ブレイブ達くらいのおサルさんが居たんだ。