57お母さん虎魔獣
お父さん魔獣が女の人に連れられて戻って行きました。見張りのお父さん魔獣達が居ないから、ドアの前に見張りが立ってます。フウ達が様子探りながらもう1回結界張ってくれようとしたんだ。でも、大切な花の粉もったいないから今はいいよって言ったの。具合悪くない?って凄く心配してくれてます。
さっきまでちょっと気持ちが悪かったけど、今は全然平気。誰かの声も聞こえません。スノーも同じで、今は元気になりました。あの声誰の声なんだろう? でも少しでも声が聞こえるってことは、近くに居るってことだよね。だってスノーの時もそうだったでしょう。会話出来るくらい近くに行けたら、何で苦しんでるか聞けるんだけどな。それでもし僕が手伝えることがあれば手伝ってあげたいんだけど。もう1回声聞こえないかな?
僕がそんなこと考えてたら、オニキスがジッとこっち見てるのに気づきました。目が合うと溜め息つかれちゃったよ。え? 何?
よく分かんないけど、そうだ! さっきお父さん魔獣とどんな話ししたか聞きたいな。でも花の結界張ってないし、う~ん。またまた考え込んでる僕見てまたまたオニキスが溜め息。もうなんなの?
オニキスが近寄ってスリスリしながら言いました。
「次にここへくる魔獣は誰だろうな。また威嚇されるかも知れない。今は少し休め」
って。それからいつもみたいに、オニキスに寄っかかってゴロゴロしろって言いました。オニキスがそう言うなら。僕はオニキスに寄り掛かります。フウ達もみんなくっついてゴロゴロです。オニキスはロイにも少し寝るように言いました。自分が警戒してるから体力の回復と温存の為にって。そんなこと言って、オニキスはいつ休むのって聞いたら、なんとオニキス20日くらい寝なくても全然平気なんだって。すご!!
疲れてたのかな。僕ゴロゴロしながらいつの間にか寝ちゃってました。
「………ルト、ハルト起きろ。見張りが来る。奴もな」
オニキスに言われて、寝ぼけて最初ここが何処なの分かんなくなってた僕。ブレイブがしっぽで僕の顔バシバシ叩いて起こしてくれました。ちょっと痛いんだけど。まあ、目は覚めたけど、でもそれあんまりやらないでね。
目が覚めた直後、黒服と女の人、それから3匹居た虎魔獣の最後の1匹が部屋に入って来ました。赤い首輪してた虎魔獣です。
「それで話はついたか」
ロイが代表して話します。
「ハルト様はまだ幼いのだ。そう簡単に話が理解できるとでも」
「ふん。まあいいが。あと少しすればお前はもう用済みになるだけだ。それまでに話しをつけ、逆らわないようによく理解させておく事だ。(それにあちらももうすぐだろう。)」
それだけ言ってさっさと出て行っちゃいました。誰も居なくなって虎魔獣がオニキスに頷きます。それを見たオニキスがフウとライに花結界を張るように言いました。すぐに結界張ってくれてフウ達が見張りに立ちました。
「あの人から話は聞いたわ。みんなで奴らの隙ついて話し合いも終わらして来たのよ。計画を実行するなら早い方が良いってあの人言うから。と、その前に」
虎魔獣が僕の方に近づいて来て、伏せしながら座ってる僕の膝に顎乗っけてきたんだ。
「ハルト、ごめんなさいね。こんな怖い目に合わせて。それからマロンのこと。あの子のこと安心させてくれてありがとう。あの子ここから戻って来てから、いつもより元気になっててびっくりしたわ。でもそれがハルトのおかげだって分かって、マロンに元気をくれるそんな良い子を拐って来てって、本当に悪いことしたと思ってたの」
虎魔獣はマロンのお母さん。うん。お母さんって感じ。かなりすまなそうに謝るお母さん魔獣の頭をなでなでしてあげます。すぐに喉がグルグル言いました。
その後はすぐに自己紹介。僕達が名前言った後、お母さん魔獣の名前聞きました。お母さん魔獣の名前はラナ。お父さん魔獣の名前はガーディーでした。そう言えはお父さん魔獣に名前聞くの忘れてたよ。
名前だけ言ってすぐに話し合いが始まりました。オニキスがさっき休めって言ってたのは、見張りを警戒させないためだったんだって。まあ本当に僕を休ませるためでもあったんだけど、僕達がガーディーお父さん達を警戒してると見張り思い込ませるため。少しでもあやしいと思われないため。ロイも分かってたって。僕なんていろいろ考え込んじゃっててそこまで頭が回らなかったよ。2人ともさすが。
「結論から言うわね。みんなあなたの作戦に従うそうよ。大体家族で捕まってる魔獣が多いから。子供達を取り戻して今度こそ解放されたいのよ。家族がいなくて、1人で捕まってる魔獣達も、もう私達にとっては家族みたいなものだしね」
「そうか。なら、次は細かい計画を話す。それを伝えてもらい皆が了解すれば、作戦開始だ。が、問題は……」
オニキスが僕のこと見ました。今度は何? さっきからそうやって見てきて溜め息ついてたけど。
「あの人もそれを気にしていたわ。ハルトは優しい子だからと。あの人少ししかハルトと居なかったのに、もうハルトにメロメロなのよ。下手したらマロンより酷いんじゃないかしら」
それ聞いたオニキスがなんとも言えない顔してました。ガーディーお父さんが僕のこと好きなのが嫌っていうのがちゃんと伝わる顔。良いじゃない。僕のこと気に入ってくれてるんだから。やきもちやかないの。後でなでなでしてあげるから。
オニキスが僕の前に座ります。嫌な顔からすぐになんか真剣な顔に変わりました。え? 僕何かしちゃったかな? 静かにオニキスが話し始めました。
「ハルト。さっき聞こえた声だが。ここから逃げたら助けに行きたいと思っているだろう?」
うっ、やっぱりバレてた。僕言葉に詰まっちゃった。僕が助けに行きたいって言おうとしてたの。オニキスと僕のこと見て、隣でロイまで溜め息ついてるよ。
だって苦しんでるんだよ。せっかく僕とスノーに声が届いて、もしかしたら僕達に何か出来るかも知れないじゃない。苦しいのとってあげられるかも。あっ、もし穢れだったら僕が祓ってあげられるし。
僕がゴニョゴニョ言ってたら、オニキスがすっごい溜め息ついたんだ。
「はあぁぁぁぁ~」
そんな面倒くさいもの見る目で見ないでよ。オニキスの隣でラナが笑ってます。
「本当にあの人が言った通りの優しい子ね。じゃあ、それも含めて、私達の考えを伝えるわね。ハルトにオニキス。私達は貴方達の言う計画に従うわ。それからハルトが助けたがってる相手のことだけど、私達からもお願いしたいの。彼らを助けてあげて。私達を助けてくれようとしたとてもいい人達なの。もちろんオニキスがハルトを危険に晒したくないことも分かってる。だからハルトがその人達を助けてくれてる間、必ず私達がハルトを守るわ。命に替えてもね」
待って待って。命に替えてもって。そんな事しちゃダメ。もしそんな事になったらマロンどうするの? マロンとっても悲しむじゃん。お父さん魔獣だって。僕が慌ててたらラナが続けます。
「それにハルトがその人達を助けてくれれば、こちらは戦力がドンっと上がって、ここに居る悪い奴らなんか、一瞬で倒してくれるもの」
て言うかさっきからラナの話し聞いてると、僕に聞こえた声の相手分かってるみたいな感じだけど。もしかして…。僕はオニキスの顔見ました。ふいって目を逸らすオニキス。ちょっと本当に相手が誰だか分かってるの?
「ハルト。ハルトが声を聞いた人達が何処にいるか、私達が案内できるのよ」
おおお! まさかの展開。じゃあここから出られたらすぐに助けに行けるじゃん。ん? 僕が助けられるってことはやっぱり苦しんでる原因は穢れ? もう完璧じゃん。
「オニキス、たしゅけいく。みんなまもってくりぇりゅから、だいじょぶ」
「はあ、お前が助けに行くって言うのは分かってたから、なるべくだったら何処にそいつらがいるか分からないって言って、さっさと逃げようと思ってたのに。どうしてそうお前は面倒くさい方に行こうとするんだ」
「あら、それがハルトの良いところなんでしょう。そしてそんなところが貴方は好きで…。しっぽふりすぎじゃない」
あっ、本当だ。オニキスしっぽブンブン振ってます。えへへ。なんか僕嬉しくなっちゃった。オニキスに抱きついちゃったよ。
オニキスはまたまた盛大な溜め息ついて、じゃあこの後の作戦の説明をするって、真面目な顔して言いました。しっぽはブンブン振ったままだったけどね。