44朝からいろいろ
サーカスが来て次の日、朝からいろいろな事がありました。いろいろあったんだけど、1番ショックな事は朝1番に。
さあ広場に行ってカフスボタンを買って貰おうと思ってたら、何と今日はお留守番らしいです。サーカスがいる時は、広場で毎日遊んでも良いって言ってたのに。ちゃんと説明してくれなかったけど、何かあったみたい。僕が安全に遊べるように、明日まではおうちに居なさいって。うう。どうしようあれ売れちゃったら。
何があったか知らないけど、でも僕の安全のためって、心配してくれてるお父さん達の考えも僕嬉しいし。何とも言えない気分だよ。もしかしてオニキスが昨日お父さんに何かお話してたアレが原因かな。今日はお出かけしないから後でゆっくり聞いてみよう。
それからサーカスを見るのはちょうど真ん中の日と、最終日の1番盛り上がる日に決まりました。これも本当は今日も行く予定だったんだよ。もう残念な事ばっかり。しょうがなく朝ご飯食べて、僕は自分の部屋に。戻ってからオニキスに昨日のこと聞いてみました。あの時のお父さんあきらかに慌ててたからね。
「オニキス、きのう、スノーのためにうなったの、どちて?」
「ああ、あれはな」
オニキスすぐに教えてくれました。スノーを助けた街で、闇の力が襲って来たでしょう。僕はあの時見てないけど、オニキスは変な男の人見たんだって。その変な人が闇の力を使った人で、凄く嫌な感じがしたみたい。その男の人と同じ感じが、あの飼育係の人からして、お父さんに注意するように言ったって。
そっか、だからお父さん、僕とスノーのこと心配して、安全に遊べるまでダメって言ったんだね。でも安全ってどうするのかな?
よし、カフスボタンの事は気になるけど、今日はお父さんの言いつけ守って屋敷の中で遊ぼう。
まずはいろいろ揃って来た道具でおままごとから。昨日もフウとライは自分たちでベッドもらってきたしね。でも今日はそのベッド使えなさそう。最近ブレイブとアーサーが屋台でご飯売ってるおじさんの真似するのにハマってて、今日もおままごとならぬ屋台ごっこに。フウとライはブーブーです。そうだよね。新しいおもちゃ使いたかったよね。次のおままごとは2人のやりたい事してあげよう。
因みに、オニキスがおもちゃ屋さんで買った、大きな器あったでしょう?あれねおままごとのために買ったんじゃなかったよ。自分の本当のご飯食べる時に使う器に使うために買ってました。
お昼までおままごとで遊んで、お昼ご飯を食べに食堂に。食べ終わってすぐ、僕はお父さんの仕事の部屋に、お母さんに連れられて来ました。部屋に入ると部屋の中にはお父さん以外に、男の人が4人いて入ってきた僕とオニキス達の事じっと見てきました。誰?これが今日2つ目の大きな出来事。
顔の頬の所に大きな1本の傷がある、大きな体の人が初めに僕に声をかけてきました。
「お前がハルトか?それにそいつらが契約してるって言う奴らだな」
本当に誰?ちょっと馴れ馴れしくない?僕はさっとオニキスの後ろに隠れます。
「ハルトご挨拶だ」
僕は前みたいにオニキスのしっぽから顔だけ出して、
「こんにわ」
言ってからサッてまた隠れます。あーもう、慌てると言葉が…。それからオニキスに誰にも聞こえないくらい小さい声で、お父さんの所まで行ってって言って、男の人達から隠れながらお父さんの所に。到着するとお父さんに抱きつきます。それでまたチラチラ観察。
「何だ話とは違って、ずいぶん大人しい子供じゃないか」
「ハルトは人見知りなんだ。もっと優しく声をかけてくれ」
「俺は別に怖がらせてないだろう」
「お前の存在自体が怖いからな。」
「うるせぇ!」
最初に声をかけてきた男の人と隣の人が言い争い始めちゃった。ケンカ始めたもう1人の男の人の目の所にも3本の傷ががありました。そんな2人を無視してお父さんは話を進めます。
「ハルト、最初に声をかけてきたのが、冒険者ギルドのギルドマスターのダイスだ。ちょっと怖そうに見えるが、そんなに怖くないから大丈夫だ。それからその隣で喧嘩してるのが商業ギルドのギルドマスターのサイナンスだ。サイナンスは商人兼冒険者だぞ」
え?!ギルドマスターなの!これも本みたいじゃん。強面のギルドマスターで実は優しいっていう。でも現実は…、怖いものは怖いよ。僕いろいろな事やってみたかったけど、ギルドとかに行ってもやっていけるかな?心配になってきた。
「2人はオニキスに話があるんだ。もしかしたらハルトにも話を聞くかもしれないからな。だから来てもらったんだ」
そこでようやく喧嘩を止めたギルマス2人。お父さんの話に入って来ました。
「本当は昨日話を聞こうと思って待ってたんだがな、サーカスが来たせいで、ハメを外した連中がいてな、捕まえに行くことになって、お前さん達を待ってられんかった。それに腹も減ってたしな、ガハハハハッ!」
「俺の方も急な取引があってな。結局2人で帰るハメになった。こんなむさい男と帰りたくはなかったが」
「何だと!!」
あ~あ、また始まったよ。いつもこんな感じなのかな?別に仲が悪いわけじゃないんだろうけど。それに2人のケンカ見てたらだんだん怖くなくなってきたよ。でもやっぱりまだ近づくのはちょっとね。僕はお父さんに抱っこされたまま、2人とお話することに。まあほとんどオニキスが話したけどね。
話はこの前の事件の事と、あの飼育係の男の人の話でした。確かにあの事件と関係あるかも知れない人が居るってなれば、お父さん達だけでなく、ギルドの人達だって気になるよね。それに街の見回りは、お父さんの騎士だけじゃなくて、冒険者や商業ギルドの職員もするんだって。冒険者は分かるけど、商業ギルドにもそういう人達が居るんだね。守ってもらうばっかりじゃないんだ。
「ギルドの中で暴れる奴も居るからな。そういうのをすぐに止められるように、サイナンスが冒険者とは別に、強い人間を雇ってるんだ」
ふうん?そうなの。警備員みたいな感じかな?僕が話聞いて頷いてたら、オニキスと話が終わったのか、ギルマス2人がこっちを見てきました。
「ほう、ちゃんと話が分かってるようだな」
「ずいぶん賢い坊ちゃんだ」
「それで、聞きたかった事は聞けたか?」
「ああ。やはり見張りを強化した方がいいな。そっちの騎士、そうだなライネルと話して、見回りの場所を手分けすることにする。力のバランスもあるからな」
「俺達の方は、やはり店中心で警戒しよう。それから持ち物検査など抜き打ちで実施だな」
「よしじゃあそれで頼む」
ギルマス2人が部屋から出て行こうとして、ダイスさんが急に止まったかと思ったら、クルッとUターンしてこっちに向かって来ました。そしてヒョイって僕のこと持ち上げました。僕は足がブラブラ。ちょっと怖いから早く下ろして!
「何だ何だ。そんな顔して。俺は良くここに、お父さんの所に遊びに来るんだ。ハルトはまだ小さいからギルドには入れないからな。ここに来た時は遊んでやるぞ。楽しみにしてろ!ガハハハハハッ!」
そう言って僕をお父さんに戻して、ドタドタと部屋から2人で出て行きました。な、何だったの?
「ダイスは子供と遊ぶのが好きなんだ。最初は怖いかもしれないが、遊んでやってくれ。きっとハルトも楽しい筈だぞ」
へえ、子供好きなんだ。人は見かけによらないってこういうこと言うんだね。大丈夫かな、僕ちゃんと遊んであげられるかな。
「さて」
お父さんが僕を下ろして、部屋に残ってる男の人2人の方に。そういえばさっきから2人とも何も話さないけど、ギルマス達の関係者じゃなかったんだ?お父さんは2人の横に立って、僕の方を見ました。