43グレンの実力
じっとグレンを見ます。そしたら後ろで屋台のおじさんの声が。
「は?!」
え?何々?おじさんの方を見ると、おじさんが驚いた顔して固まってました。どうしたの?不思議に思ってたら、いつの間にかグレンが戻ってきました。あれ、もう戻ってきたの。やっぱりダメだった?
「3本全部入れたんです。しかもあなたの言う通りあの遠い場所から。人形3体下さいね。」
それを聞いて僕は急いで棒を見ました。そこには輪っかが3つ完璧に棒に入ってました。いつの間に投げたの。僕じっと見てたのに。おじさんは驚いた顔のまま僕にオニキスのぬいぐるみを3つ渡してくれました。僕はニコニコです。
でも持ってると前が見えないからグレンが持ってきてた袋に2つ入れて持ってくれました。僕は1つをぎゅっと抱っこして歩きます。
次は綿飴を食べました。これは地球と同じなんだね。でもこっちの方がもっとふわふわしてる感じがするかな。キメが細かいっていうか。どっちにしてもとっても美味しかったです。もう1袋買って明日のおやつに。この綿飴はすぐにしぼんだりしないんだって。そういえばお祭りで買った綿飴、次の日には半分くらいまでしぼんでたっけ。オニキスの首に綿飴の袋についてた紐を通して持ってもらいます。
さあさあ次々。どんどん回らないとすぐに帰る時間になっちゃう。
次は紐を引っ張って、商品を取るゲーム。紐の先におもちゃが付いててそれが貰えるんだ。うーん。あっ、あれが良い!おもちゃっていうかバンダナ?みたいなのがあったんだ。赤と青のシマシマの模様の入った。オニキスにピッタリだと思うんだよね。
「ハルト様はどれが欲しいのですか?」
「えと、あのバンダナ?みたいのがいいでしゅ。オニキスにあげりゅ。」
「そうですか。では…。2回引けますから、1回目はこの紐を引っ張ってみてください。あとはご自由にどうぞ。」
最初はグレンに言われた通りの紐を引っ張ります。そしたら何とバンダナが引っ張られました。おじさんにバンダナを貰います。どうして分かったの?紐は途中の所が見えなくなってて、どれが取れるかなんて分かんないはずなのに。じっとグレンのこと見ちゃったよ。
「さあハルト様、もう1回引いて下さい。後ろの方が待っていますからね。」
ハッとして慌てて紐を選びます。よし、これだ!紐を力いっぱい引っ張ったら小さいボールでした。中に魔力石が入ってて、魔力を流すと光ってキラキラするボール。スノーが喜んでました。僕はバンダナをオニキスに付けます。うん。やっぱり似合う。
「グレン、どちてわかったの?」
「ふふ。何ででしょうね。」
グレン教えてくれないんだ。予想したとか?それとも紐が見えてたとか?う~ん…。
その後もいろいろなお店をまわりました。子供に人気とかで、シャボン玉が勝手に出てくるおもちゃも買って貰いました。勝手にっていうか、これも魔力石に魔力流して、風を起こしてシャボン玉飛ばすんだけど、こういうのは大人が魔力を流して、子供に遊ばせるみたい。そうだよね。普通の子供は8歳頃まで魔力使えないんだから。
あと、お面も買って貰いました。ドラゴンのお面。この世界にはドラゴンが居るらしいです。
「ドラゴンは居ますが、見た人はそんなに居ないでしょうね。そんなにというか、今生きている人の中では見た人は居ないのでは?それぐらい珍しい生き物なのですよ。」
へえ。確かに僕が読んでた本にもドラゴンとか出て来たけど、その本でもドラゴンはそうホイホイ出てくるような生き物じゃなかったもんね。それと同じ感じかな?ちょっと見てみたかったから残念。でも街がなくなっちゃうような強いドラゴンには会いたくないし複雑。
そろそろ夕方になってきて、僕が遊べるのはもう少しだけ。あと屋台2つぐらい回れるかな。本当は夜もずっと賑やからしいんだけど、今日はお父さん達いないからダメだって。でもあと何日もここで遊べるんだから今日は我慢我慢。
遊ぶ屋台最後は、的当てゲームの屋台。的の真ん中に当てるとお菓子の詰め合わせが貰えます。このお菓子が高級品みたいで、子供だけじゃなくて大人も参加してました。もちろん大人はさっきの輪投げと一緒で、遠くから玉を投げます。さっきの輪投げよりも遠いかも。しかも大人用には、的の前に障害物まであるんだ。絶対に当たらないようにしてあるの。ちょっと、これ酷くない?でもこれが普通みたい。誰も怒ったりしてません。僕はもちろんグレンと一緒に参加です。
「大丈夫ですよ。ハルト様が的に当てられなくても、私がしっかり当てますからね。」
予想通り僕は全部当てられませんでした。子供の方には障害物ないのに…。いよいよグレンの番です。と、玉を持ったグレンが軽くジャンプしました。近くにあった大きい石を足場に、高くジャンプします。そして…。
横から上から、最後の一球は反対の横から、全部の玉が的の中心に大当たり!そしてその途端。
「きゃああああ!!グレン様ぁぁぁ!!」
「カッコいいぃぃぃ!!」
女の人達から黄色い悲鳴が。え?何?後ろを振り返れば女の人達が屋台を囲んでます。みんなグレンを見て頬を染めてます。それを見て嫌な顔をする男達。あ~。グレン人気者なのね。特に若い女性に。
そんな黄色い悲鳴を無視して、高級お菓子を3セット受け取り、戻ってくるグレン。僕達は女の人達の間を通り最後のお店へ向かいます。
「グレン、しゅごい。しょれににんきもの。」
「あの人達は放って置いていいのですよ。今の私は旦那様家族のことが全てですからね。そうですね。今家族の中でも1番はハルト様です。」
ニッっと笑うグレン。うっ、まぶしい!!どうしてそんなに男前なの。でも1番って言ってもらえてとっても嬉しい。僕もニコニコでグレンと手を繋いで歩きます。
そして最後に行ったお店は、いろいろな物を売ってるお店。そこでグレンがある物を見つけました。オニキスの顔した首からかけるタイプの鞄です。それを買って貰ってる間、僕もいい物見つけました。
カッコいいドラゴンの形したカフスボタンです。グレンいつもカフスボタン付けてるんだけど、このカフスボタンも良いと思うんだよね。グレンにプレゼントしたいけど僕お金持ってないし、グレンに買って貰ったら意味ないし。う~ん。今度お父さんと一緒に来た時買ってもらおう。それまで残ってるといいけど。明日またすぐ来れないかな?
カバン買ってもらって、それを首に下げて、今日の遊びは終わりです。チラッとお店を見ながら家に向かって歩き始めます。どうか次来る時まで残ってますように。そう思いながら家に帰りました。
「おっ、帰ってきたか?」
「おとうしゃん、ただいまでしゅ。」
「随分いろんな物持って帰ってきたな。よし、夕ご飯食べたら話聞かせてくれ。」
「うん!」
ご飯のあと休憩室で、どんな屋台に行って遊んだのか全部報告しました。グレンが凄い事とか、人気者って事も全部ね。
「相変わらずだなグレン。いつも容赦ないよな。」
お父さんが高級お菓子を食べながら紅茶飲んでます。お母さんもね。あの高級お菓子高級っていうか、珍しいお菓子っていう方があってるかも。なかなかシーライトに入ってこないお菓子だから、高級品って言ってるみたい。お菓子に使ってる材料もね、ある街でしか取れなくて、しかも他の街に流通させてないらしいです。
楽しかった時間も今日はおしまい。僕眠くなってきちゃった。ふらふらする僕をお父さんが抱っこして部屋まで連れて行ってくれました。ベッドには今日グレンがとってくれたオニキスのぬいぐるみが3匹。ベッドに入りながらあのカフスボタンを思い出します。明日も遊びに行けたら最初にあのお店に行こう。もう場所も分かってるから大丈夫。グレン喜んでくれるといいなぁ。