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42嫌な予感

(キアル視点)

 突然オニキスが、男とスノーの間に割って入ったと思ったら、威嚇し唸り始めた。ハルトが宥めるように、オニキスの頭を撫で止めている。俺が止める間もなく、男はすぐに離れて、そして荷馬車に乗り込むと行ってしまった。

 良かった。噛みつきでもしてたら大問題になるところだった。オニキスに何故唸ったのか聞けば、返事は思わぬものだった。


「あいつから、この間の突然現れて消えた、黒服と同じ力を感じた。顔も様子も全然違うから、別人だと思いたいが…。それか何か関係がある奴かも知れない。気をつけた方が良いんじゃないか。」


 まさかあの黒服が?!そんなことはないと思いたかったが…。本当はこの後、ハルトや家族みんなでテントの所で遊ぶ予定でいたが、それどころではなくなってしまった。ハルトのことはグレンに任せ、フレッドのこともおつきに任せ、俺はライネル達と屋敷に戻り、この事について相談する事にした。パトリシアには冒険者ギルドに行ってもらい、ギルドマスターに伝えてもらうことにした。もし何かあればすぐに動けるようにしておいてもらうためだ。

 少し寂しそうな顔をして、グレンと一緒に移動して行ったハルト。可哀想だが仕方がない。


 屋敷に戻り話を始める。この間の事件の資料を集めているうちに、パトリシアがギルドマスターと共に屋敷に戻ってきた。商業ギルドのギルドマスターも一緒だ。冒険者ギルドマスターの名前はダイス。商業ギルドの方はサイナンス。皆椅子に座り話し合いを始めた。


 この前の事件のことは、調べたこと分かった事を全てをギルドと共有していた。事件があった街が近いせいもあり、ここシーライトにもしかしたら、うまく逃げ延びた犯人が紛れ込んだ可能性があるためだ。それに考えたくはないが、ギルド職員の中に、奴らの仲間が紛れ込んでいる可能性だってある。


「それで、その男は飼育係なんだろう。お前から見てどう見えたんだ?」


 ダイスは席につくなりすぐに質問してきた。集まった中で1番歳上で、俺やライネル達の小さい頃を知っている男。まあ簡単に言えば、頭が上がらないといった感じだな。余計な事まで知られているからな。私の失敗談や初恋もバッチリ知られている。


「俺が見た感じは、ただの飼育係だった。それどころか軟弱に見えて、何にも怪しいところはない。ハルトに木の実をくれたくらいだ。」


 俺の言葉にライネル達も頷く。ただそれが本当の姿なのかは分からないが。本当にただの飼育係で、たまたまどこかで本人も知らないうちに、あの黒服と関わったか。それか、何らかの方法で姿を変え、俺達とスノーを追ってきた黒服かも知れない。または黒服の仲間か。

 

 そんな話を進めながら、今後の事を話し合う。ここシーライトの冒険者ギルドは他の街と違って、なかなかの腕前を持った連中が集まる。それはダイスが居るからだ。ダイスは元々冒険者でかなりの実力者だ。その実力から国にも貢献した事がある。しかもダイスはまあ、言葉遣いがたまに悪くなる事もあるが、いつも若い冒険者の世話を焼き、冒険者とはなんたるかを教え、道を踏み外そうとする冒険者がいればそれを正し、依頼に成功すれば一緒に喜ぶ。そんなダイスをみんなが慕って来るため、いつも冒険者ギルドは賑やかだ。


「1度、その魔獣と話がしてみたい。息子が帰って来るまでここで待たせてもらうぞ。いいな。それから提案だがハルトには1人でも2人でも、誰でもいいからつけた方がいいかも知れんぞ。まあその魔獣がいつもくっ付いていれば、そうそう問題はないと思うが一応な。」


 確かにその通りだ。オニキスが居ればほぼほぼ安全だが、もし黒服が攻撃してきた時に、オニキスが相手をしている隙に他の仲間がハルトやスノーを狙ったら?よし!すぐに選抜しよう。


 商業ギルドの方も、何か理由をつけて見回りをしてくれる事になった。こっちのギルドマスターサイナンスも元冒険者で、そこそこの力を持っている。冒険者に守って貰う商人も多い中、サイナンスは仲間とだけで商品を運んだり、売ったりしていた。何度も盗賊を倒したこともある変わり者だ。


「人も商売する奴らも今は多いからな。悪さしてる奴がいないか、見回りをしているとでも言っておけばいい。怪しい動きや物を売っていたら調査の対象だと言って、おさえれば良いだろう。」


「それは俺と相談だ。ギルド同士話し合いをした方がいい。」


 話し合いは一旦ここまでということで、ライネル達はこれから騎士を集め、何か起こった時のために騎士を何個かの班に分け、それぞれの役割を決めに行った。パトリシアには屋敷のいろいろを任せ、ハルトとオニキス達を待っている間に、ダイスとサイナンスはここで話し合いをする事になった。どうせ話し合いをするなら、ここでしようがギルドでしようが変わらないからな。

 

 日が落ちてきて、そろそろハルト達が帰って来るはずだ。外で遊ぶことが好きなハルト。もしかしたらサーカスがいる間は、あまり外に出してやれないかも知れない。そうそう来ないサーカス団がいるうちは、毎日遊びに行かせてやろうと思っていたが…。

 さてハルトにつける人間を選抜しなければ。誰がいいだろう。


(ハルト視点)

 テントの所まで行くと、お店通りがもう1つ出来たみたいになってました。人もいっぱい屋台もいっぱい。それから、もうサーカス団の人達による出しものも、そこら中で始まってました。


「ハルト!ボクあれ食べたい!甘い良い匂いがするよ。」


 フウが指さしたのは、飴細工のお店でした。その場で魔獣の形した飴や、花の形した飴、リクエストしたものを作ってくれるんだって。面白そう。僕ああいうの見たの初めて。さっそく飴細工のお店に行きます。


「さあさあ、何を作りましょう!」


「フウはお花!」


「じゃあオレは木の実!」


「スノーはうさぎしゃん!ハリュトとおしょろいのおようふく。いちばんしゅき!」


「えと、ぼくは、オニキスがいいでしゅ。」


 名前だけは発音が良くなってきたよ。でもほかはまだまだ。はぁ、がんばろ。

 今日は妖精の話ができる粉をかけてもらってるグレンが、みんなのリクエストをお店の人に伝えます。お店の人は飴を、くるくるくる、ひょいひょい、専用の道具で形を整えていきます。簡単に作っちゃうんだ。全員分が終わるのにそんなに時間は掛かりませんでした。可愛くてそれからカッコよく作ってもらえて、帰ってお父さん達に見せてから食べることにしました。壊れないように飴の部分を紙で巻いて袋に入れて貰います。


「ちゃんと袋に入れて貰いましたが、落として壊すかも知れません。これは私が持って歩きますね。」


 うん。その方が良いと思う。僕転んじゃいそう。次に行ったのはライが行きたいって言った屋台。輪投げで遊べる屋台でした。景品は食べ物だったりおもちゃだったり、ぬいぐるみだったり。あっ!オニキスと同じ人形がある。あれが欲しいな。よし頑張ろう!!


 フウとライは2人で輪っかを持ち上げます。ずいぶん人懐っこい妖精ですね、いつもは悪戯してくるだけなのにって言われちゃった。僕はフウとライしか妖精は知らないけど、妖精って悪戯ばっかりしてるの?こんなに良い子なのに?

 2人の投げた輪投げは斜めに棒に引っかかりました。それでも屋台のおじさんは景品をくれたんだ。2人がもらったのはおもちゃのベッド。2人のサイズにぴったりのね。これおままごとで使うんだって。


 次は僕の番。投げられるのは3回。狙いを定めてひょいって投げます。1回目はかなり手前に落ちちゃった。よし次!次はもっと力を入れて投げます。そしたら今度は奥の方に落ちちゃった。うう。もう最後。今度こそ!じっと棒を見つめます。狙いを定めて…、ひょい!ぽとん。………輪っかは棒の横に落ちちゃいました。


「ぬいぐるみ…。」


「残念だったね。そうだ。一緒に来てる家族に挑戦してもらったらどうだい。」


「そうですね。ハルト様、あのぬいぐるみが欲しいのですね?」


「うん。グレン、とってくれりゅ?」


「ええ。もちろんですとも。では。」


 そう言ってグレンが輪っかを持って立ちます。立った場所は屋台からかなり離れた場所。屋台が3つ分くらい。人も通ってるのに絶対無理だよ。僕はしょぼんとしちゃった。でもね…、僕の考えは間違えでした。うん、僕、グレンが普通じゃないの忘れてました。

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