41いよいよサーカス団が街にやって来た
(***視点)
「ねぇねぇおじちゃん、この頃変な人間達が居るんだ。何かねぇ、気持ち悪い人達。」
「そうか。メイスターはどうしている?」
「うんとねぇ、その人間達見張ってる。」
何故こんな場所に人間が?ここは人間が近づかない火山地帯。ここ何百年も人の姿は見ていなかったが…?
「おい!オヤジ!!」
メイスターか?何だあんなに慌てて走ってきて。
「おい、人間どもがこんな火山の所に家を建てて、連れて来た魔獣達を閉じ込め、何か始めたぞ!」
一体何が起こっている?俺も様子を見に行くために姿を変える。この山で勝手はさせない。見極めてもし害をなす者達ならば始末してやる。
俺はメイスターと共に、人間達の元へと向かった。まさかそこで運命的な出会いを果たすとは、この時の俺は知る由もなかった。
(ハルト視点)
「サーカスが来るときや、舞台の人達が来る時は、街の人達に来ましたよって教えるために、お店通りを行進するのよ。街の人達も歓迎のために、いろいろな事するの。例えば花びらをひらひらって、綺麗に建物から降らしたりね」
お母さんが僕にねこの着ぐるみ着せながら、いろいろ教えてくれます。
サーカス団の団長が言った通り、8日後サーカス団が街にやって来ました。お店通りを行進するって言うから、もちろんこれからみんなで見に行くんだけど…。今日は僕のねこの着ぐるみにも、スノーの着ぐるみにも、頭の所に大きなリボンが付いてます。それからしっぽの付け根の所にもね。これいる?
「だってせっかく歓迎しに行くのだから、可愛いくして行かなきゃ。はい出来上がり。さあ、準備も出来たし行きましょうか」
お母さんに手を引かれて、オニキス達と玄関ホールに向かいます。玄関ホールにはもうみんな集まってました。お父さんが渋い顔してます。うん。だいぶ待たされてたはず。
「遅いぞ」
「あらそう?だってハルトちゃん達、ちゃんと可愛い格好させないと。街の人達だって今日は派手な格好して出迎えるでしょう。お祭りみたいなものなんですから」
街で何かある時は、例えば今回は、サーカス団がテントを張る所に、たくさん屋台が出るんだって。サーカス団にくっ付いて商人の人達も来るみたいで、普段食べられない物や、他の街の商品を売ります。あとはサーカス団の人達がサーカスとは別に、ちょっとした出し物をしたりするみたい。僕それも楽しみ。
僕達がゆっくりお店通りに行けるのはお父さんのおかげ。だって領主様だからね。場所がとってあります。
さあ、出発です。お店通りの方から花火が上がってます。外は明るいのにけっこう綺麗に観えるんだ。それから花びらが舞ってるのも見えます。
今日のお父さんからの注意事項、勝手にフラフラしない。どっか行きたくなったらちゃんとお父さんに言って、必ず一緒に行くこと。ブレイブ達も今日はオニキスの背中から降りないこと。
「ふわわ、しゅごいねぇ~。たくしゃんひと!まじゅうも!」
お店通りはすごい人に魔獣達。歩く場所なんてないくらい。それにねよく見たら、花びらも舞ってるんだけど、花自体も舞ってるんだ。風魔法でふわふわって。それがとっても綺麗なの。スノーが前足でシュッ、シュッ!って花で遊びます。ブレイブとアーサーはオニキスの背中の上で何回も宙返り。フウとライは降って来た花びらを集めて何かやってます。
「なにちてるの?」
「えへへ、ないしょ」
「オレ達ちゃんと静かにしてるから大丈夫」
「?」
僕達の行進を見る場所は、お店通りのちょうど中心くらい。いつもは屋台がある場所に椅子が用意してありました。こう段差になってて、前の人がいても観られるようになってます。僕達は席の1番上。1番良く見られる所です。僕達が座ってその下の席はライネルさん達が座りました。久しぶりぶりのライネルさん達。お仕事で少しの間街に居なかったみたい。
「ハルトくん、久しぶりですね。ふふ。相変わらず可愛い格好してますね」
ライネルさん、それには触れないで。確かに僕も可愛いと思うけど。ぬいぐるみ作ったりするのと、着たりするのは何か違うんだよ。僕はお父さん達みたいに格好良い洋服を着たいの。そうそう、この前あの洋服屋さんに行ったんだけど、そこの店主のルイスさんに、お母さんが洋服見てるうちにちょっとだけお願いしたんだ。ちゃんと伝わったか怪しいけど。カッコいい洋服でスノーとお揃いの洋服が良いって。ルイスさんお母さんの方チラチラ見ながら苦笑いしてたよ…。大丈夫だよねルイスさん!!
そして街の入り口の方で、今までで1番大きくて綺麗な花火が上がりました。行進開始の合図です。街の人達から歓声が上がります。今までよりもたくさん花びらと花が舞います。それからシャボン玉みたいなのも。これは水魔法なんだって。
「あっ、おとうしゃん!みえちゃ!!」
「ああもうハルト、乗り出すな。落っこちるぞ」
前のめりになる僕を、お父さんが洋服掴んで落ちないようにしてくれます。
最初に見えて来たのは、大きな虎?みたいな魔獣の乗り物と、あれはドラゴン?みたいな魔獣の乗り物に乗ったサーカス団の人達。みんな自分の隣に魔獣がいます。
「あれは魔獣を使った技を披露する人達だ。サーカスの中で1番人気があるんだぞ。」
へぇ~。どんな事するのかな。この前の団長さんの火の輪潜りもけっこう凄かったよ。楽しみだなぁ~。
次に来たのはロープにぶら下がって技を披露してる人や、ブランコに乗った人、うん。地球と同じ感じ。僕は空中ブランコが好きかな。
どんどん行進は続きます。全部で10台くらい行進するんだって。
そしてもちろん最後は団長さん達が乗った乗り物です。団長さんは僕達の前に来ると1度止まって、お父さんに挨拶しました。それからオニキス達見てスノー見て、最後に僕のことを見ました。軽く頭を下げて前に向き直ります。
「あの団長とかいう男。俺たちを見た笑い顔が気に食わない。何か違和感がある。」
そうオニキスが小さな声で言いました。そう?普通の笑顔だと思ったけど。
全部の行進が終わって、街の人達も行進に続きサーカスのテントが張られる広場に移動して行きます。後は荷物が運ばれて来るだけだからね。僕達は人が少なくなってから広場に行くことになりました。
お父さんが言ってたみたいに、続々と荷物を積んだ荷馬車が入って来ます。座ってた段差の椅子から降りて、近くのお店を見ながら人が少なくなるのを待ちます。
僕が屋台を見てたら後ろでガタンッ、ガタタッて音がしました。振り向いたら荷馬車からいくつも荷物が落ちちゃって、中身が外に飛び出しちゃってました。木の実がたくさんです。僕の足元まで転がってきちゃいました。近くにいた人達がみんなで拾ってあげます。僕もね。
「申し訳ありません。サーカスの魔獣達のための餌なんです。」
荷馬車を運んでた男の人が謝りながら木の実を拾ってました。スノーが木の実を手でコロコロ転がします。
「シュノーだめ。ほかのまじゅうのごはん。」
僕は小さい手だからね、3つしか拾えなかったけど、落とした男の人に木の実を渡しました。僕ので最後。
「ありがとうございます。おや、可愛い洋服をお召しで。お揃いですか?」
「うん。」
「拾って頂いたお礼に、この大きな木の実1つ差し上げます。」
男の人がくれた木の実は、僕の顔くらいある大きな木の実でした。もらって嬉しかったけど、お、おもいぃぃぃ~。
「良かったなハルト。この木の実はこの辺じゃ食べられない木の実なんだぞ。」
木の実が重くてフラフラな僕の代わりに、お父さんが持ってくれました。
「いい毛並みですね。触っても?」
男の人がスノーに近づこうとした時でした。男の人とスノーの間に割り込むようにオニキスが入って唸り始めました。僕は慌ててオニキスを撫でて静かにしようとしました。
「赤ちゃん魔獣を守ろうとしたのかな。仲良くなりたかったのですが残念です。」
最後の箱を積み終えて男の人が荷馬車に乗り込みなす。
「今日仲良くなれなかったのは残念ですが、近々、そうですね、すぐに仲良くなれるでしょう。楽しみです。くくくくくっ。」
そう言い残して男の人は行っちゃいました。オニキスに何で唸ったのかお父さんが聞いたら、2人で何かコソコソお話始めちゃったよ。
お話はすぐに終わったけど、そのあとお父さんは急いで屋敷に帰っちゃった。代わりにグレンが僕とテントに行ってくれたよ。
後で何話してたかオニキスに聞いてみよう。