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39剣と海賊肉

 どんどんお店を見て行ったけど、結局全部見れないまま、今日のお店見学は終わりそうです。しょうがないよね。今度また連れて来てもらおう。


 今日最後のお店は、お母さんが寄りたいって言ったお店です。僕の物、買いたいんだって。僕はお店見た途端、嫌な予感が。窓の所、見た事のある洋服が並んでます。中に入ってそれは確信に。目の前にスノーの着てるうさぎの着ぐるみが…。そう、ここは僕達が着てる子供の洋服を売ってるお店でした。お母さんはスキップしそうな勢いでお店に入って行きます。僕はのろのろ。もう着ぐるみ洋服いらない。カッコいい洋服がいいよ。


 僕の気持ちは届かず、お母さんが店員さんを連れて僕の所に。店員さんの手には着ぐるみが。


「今日は店主のルイスが居ないみたいなの。せっかく着ぐるみ着た可愛いハルトちゃんを見せようと思ったのに。でもねルイス新作を取っておいてくれたみたいなの。オオカミさんの着ぐるみよ。さあ、あの個室に入って着てみましょう。」


 お母さんに言われるまま、お店の端にある小さな個室に入ります。一畳くらいの部屋。お母さんが洋服を着替えてさせてくれます。スノーもね。着替え終わって皆んなに見せたら大好評。即お買い上げです。あ~あ。また着ぐるみが増えちゃった。僕はお店の奥に飾ってある、黒と青の貴族の人が着るような、カッコいい洋服を見つめます。

 お兄ちゃんが僕がカッコいい洋服見てるの気づいて、話しかけて来ました。


「ハルトどうしたの?」


「ぼく、カッコいいようふく、あれ、しゅきでしゅ。」


「ああ、あの洋服?お母さん、ハルトあの洋服が欲しいみたい。」


「あらそう?確かに似合いそうね。じゃあ、あの洋服も包んでちょうだい。」


 やったぁ!お兄ちゃん気がついてくれてありがとう。

 お母さんとスノーは着ぐるみを買えてニコニコ。僕はカッコいい洋服を買ってもらってニコニコ。皆んな好きな物が買えて良かったね。そうだ!今度カッコいい洋服で、スノーとお揃いで着れる洋服作ってくれないかな。着ぐるみみたいに帽子がいるなら、カッコいい洋服とそれに合った帽子作ってかぶるのどう?


 洋服を買って外に出ると、外はだいぶ暗くなってきてました。お母さんが僕の目線に合わせてしゃがみます。


「今日は楽しかった?」


「うん!」


「そう、なら良かったわ。これからご飯食べて帰るけど、お母さんからハルトちゃんにプレゼントがあるのよ。」


 そう言うとお母さんは包みを出してきました。お母さんがおもちゃのお店で買った物が包んである包みです。僕はそれを受け取って、そっと包みを開けました。

 中から出てきたのは、木で出来た剣のおもちゃでした。


「ハルトちゃんはまだ本物の剣は持てないでしょう。でもこれなら今のハルトちゃんでも持てるし、それにやっぱり男の子はこう言うの好きだものね。」


 お母さんは剣を手にとります。剣とは別にベルトも入ってて、まずそれを腰に巻いてそこに剣をさします。これで完璧。お母さんがニッコリ笑いました。本物の剣じゃないけど、今の僕には十分です。それに、お母さんが僕のために、せっかく買ってくれた剣。これでまずは剣の練習しよう。その前に。


「おかあしゃん、ありがとでしゅ!」


「良かったわ。喜んでくれて。ちょっと回ってみて。」


 僕はクルクル回りました。


「うん。カッコいいじゃないか。もう立派な騎士だな。それか冒険者だ。」


 腰に剣を差した僕。最後のミッションに挑みます。それは………。海賊肉を食べる事!!今日最後の大切なミッションです。

 海賊肉を売ってるお店を確認。美味しそうな匂いがあたり一面に漂ってます。僕はお父さんの洋服を一生懸命引っ張ります。


「おとうしゃん、あれ、たべちゃい。」


「ん?ああ、あのお肉か。じゃあお父さんと一緒に食べよう。きっとハルトじゃ何口も食べられないだろうからな。下手したら、ハルトの顔よりも大きいお肉だからな。」


 けっこうお客さんの長い列が出来てて、お父さんと一緒にその列に並びました。人気店なんだね。お店は3人のおじさんがやってて、お肉が無くなると、おじさんのうちの1人が何処からかお肉を持ってきます。お肉は持ってくる時にもう焼けてるけど、屋台でももう1度焼きます。

 早く自分の番にならないかなぁって、ワクワクしながら待ってました。そしていよいよ僕達の番です。僕は大きな声で。


「4つくだしゃい!!」


 下の方から、声をかけました。


「ん?ああ、領主様。今日は外でご飯ですかい。それにしても随分声が幼かったような…?」


「やあ、久しぶり。今のは俺の声じゃない。」


 僕は気づいてもらおうと思って、その場でジャンプしました。ジャンプしながら4つって言うの、なかなか難しかったよ。途切れ途切れになっちゃうんだもん。


「随分と小さいお客さんだね。いつの間にもう1人子供が?」


「まあな。名前はハルトって言うんだが、それより早く肉をくれないか。ハルトがここの肉を食べるのを、今日1日ずっと楽しみにしてたんだ。」


 それを聞いたおじさんはとっても喜んでくれて、今屋台に並んでる中で1番大きい海賊肉を、紙のお皿に乗せて僕にくれました。他の3本は袋に入れてその中にお皿も入れてくれて、お父さんが受け取ります。

 僕の目の前には大きな海賊肉が。それのせいで前が全然見えません。よたよたしながら歩き始めます。お肉、見た目通りとっても重たいんだ。


「坊ちゃんお気をつけて!!」


 お肉屋さんの声を聞きながら、お母さん達が待つ噴水近くのベンチまで歩きます。本当はありがとう言いたかったけど、お肉でそれどころじゃなかったんだ。

 そろりそろり歩いてたら、僕の横を通り過ぎる人達が、なんだかクスクス笑ってます。皆んな何で笑ってるんだろう。面白い物でもあるのかな。見たいけど、お肉があるから見られない。帰りに見てみよう。

 やっとの事で、なんとかベンチに到着です。着いた途端にお兄ちゃんが笑い始めました。


「はははっ、お肉が歩いて来た!」


 え?何?お母さんが僕のお肉を受け取ってくれて、僕は大きな溜め息。疲れたぁ。それで何でお兄ちゃんは笑ってるの?お母さんは相変わらずの笑顔だけど。お母さんが教えてくれました。

 お肉大きかったでしょう。僕の顔や頭がすっぽりお肉に隠れちゃってて、お肉が歩いてるように見えたんだって。あっ、もしかしてさっき笑ってた人達、僕の事を見て笑ってたの?!う~。なんだよ。僕頑張って運んでたんだから。ブスッとしてる僕に、お父さんが温かいうちに食べなくて良いのかって。はっ!早く食べなくちゃ!


 急いでベンチによじ登ります。お尻が持ち上がらなくて、オニキスが鼻で押し上げてくれました。お父さんの水魔法で手を洗って、両手で骨を持ちます。そして。


「ガブッ!!」


 お肉にかぶり付きました。んんん~。美味しい~。お肉は全然硬くなくて、口に入れると、ふわって無くなっちゃいます。肉汁もじゅわわわわって。味もちょうど良い感じの塩味です。これならいくらでも食べられるよ!どんどんお肉にかぶり付きます。僕の足元ではオニキスがお肉にかぶり付いてます。スノー達もね。こんなに美味しい食べ物がいっぱいここにはあって、僕ここに来て良かったよ。


(キアル視点)

 お肉にかぶりついているハルトを見ながら、ハルトが食べ終わるのを待つ。絶対1人じゃ全部食べられないからな。案の定、ハルトはすぐにお腹がいっぱいになってしまったようだ。食べ終わった顔をみて笑ってしまった。顔中肉汁と肉のコゲだらけだ。本人は何で笑われてるか分からないようで、きょとんとしていたが。オニキスがすかさず浄化をして、すぐに汚れはなくなった。

 全員がご飯を食べ終わり、屋敷に帰る事にした。全部見れなかったと、少し残念そうなハルトに、次の休みにまたくると約束すれば、とても可愛い顔でニコニコしていた。

 

屋敷に戻る最中、オニキスの背中の上でこっくりこっくり始めたハルトを抱き上げ、寝やすいように抱き直すと、すぐにハルトは寝てしまった。今日はずいぶんはしゃいでいたからな。そんなハルトのことをパトリシアとフレッドが、ニコニコしながら見ていた。

 

 このままハルトが、この街で、俺達の所で、元気に伸び伸び育ってくれれば。そしていつか旅立って行く時、とても幸せだったと思って貰えたら。

 そのためにもハルトの事を大切に育てて行こう。やりたいと言うものはどんどんやらせてやり、ダメな事をしたらちゃんと叱る。それにはオニキス達に甘やかさないように言わなければ。ハルトの言う事は何でも聞いてしまいそうだからな。

 スヤスヤ眠るハルトを見ながら、これからの事を思い浮かべ、俺もいつの間にか、笑っていた。


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