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36お父さんは剣の使い手

「よし来い!」


「行きます!!」


 お兄ちゃんがお父さんに向かって剣を振ります。お父さんは軽く受け止めて、すぐに反撃します。

 お屋敷に来てから数日が経ちました。今日はお兄ちゃんの学校がお休みだから、お父さんが剣の訓練してます。僕はそれを見て大騒ぎ。今まではいろいろあって、ゆっくりお父さん達の戦い見られなかったからね。今はお父さんのカッコいい剣を振るう姿見て、頭の上で拍手です。フウとライもね。

 スノーは庭のちょうちょ追いかけてます。ブレイブとアーサーは木の上で、木の実をカリカリしてて、オニキスは僕が今寄りかかって座ってます。


「よし次だ!」


「はっ!!」


 今度は打ち合いです。お兄ちゃんの使ってる剣は、お兄ちゃんには少し大きいんじゃないかと思うんだ。だって持つの少し大変そう。でも、頑張ってるお兄ちゃんを、僕は一生懸命応援。


「にいしゃ、がんばりぇ!」


「ハルトが応援してるから、僕がんばるよ!!」


 カンッ!キンッ!おお、さっきより続いてる。頑張れ頑張れ!だいぶ長く続いた打ち合いは、やっぱり最後はお父さんがお兄ちゃんの剣を飛ばして終了。僕達の所に2人が戻って来ます。


「へへ、せっかくハルトが応援してくれたのに、ダメだったよ。」


「にいしゃんカッコいい!ぼく、にいしゃんちゅぎもがんばりぇしゅる!」


「ありがとう。う~。やっぱりハルトは可愛いなあ。」


 冒険者になるにしても、騎士になるにしても、剣も魔法も基礎は大事。だから毎日の訓練が必要っていうのが、お父さんの教えです。確かに基本は大事だよね。

 それにしても剣カッコいいなぁ。勿論魔法もカッコいいけど、僕は剣の練習してみたい。頼んでみようかな。でも僕小さいからなぁ。


「おとうしゃん。ぼくもけん、やりちゃいでしゅ。」


「おお、そうか!でもなぁ、まだハルトには早いぞ。剣を持てないだろうからな。よし試しに持ってみるか。」


 お父さんは腰から鞘ごと外して、それを立たせて持っててくれてます。僕は近寄って剣を抱きしめます。じゃないと持てないもん。剣大きいんだもん。そうしなくちゃ絶対持てない。


「いいか。離すぞ。」


 お父さんが剣から手を離しました。抱きしめてた僕に、剣の重さが全部かかります。お、おお、おおおおお?!お、重いいいい…。

 剣が重すぎて、僕は後ろに倒れそうに。尻もちついちゃうって思ったら、尻もちつく瞬間にオニキスが支えてくれました。でも。


「ゴチンッ!!」


「いちゃい!いちゃい…。ふえ…。」


 涙がボロボロ溢れてきます。小さいからかな。涙腺がゆるい気がする。


「だ、大丈夫かハルト?!」


「もう何やってるのよ。」


 いつの間にか来てたお母さんが、僕を抱っこしてくれます。


「ハルトちゃんにはまだ早いって分かるでしょう。まったく…。あなたフレッドの時にも同じ事したじゃない。」


「いや、ハルトがあんまり目をキラキラさせてたもんで。ついな。」


 痛さに泣いてる僕にお母さんが、魔力石で魔法使って痛いの治してくれました。お母さんは少しの怪我だったら治す事が出来るんだ。お父さんは剣が凄く得意で、魔力石は使えるけど苦手みたい。お母さんは剣は苦手で、魔法が得意。1番得意な魔法は火の魔法だって。

 貴族は街に何かあった時、森で何かあった時、そういう時に前に立って戦わなくちゃいけない。そのためにも、いつも訓練を欠かせないんだって。確かに冒険者や騎士の中に女の人も居たけど。けっこう大変な世界なんだね。


「旦那様はもっと凄いですよ。」


 いつの間にか来てたグレン。飲み物を持って来てくれたんだ。それからタオルも。お父さんとお兄ちゃんがタオルを受け取って汗を拭きます。

 それよりもグレン、今何て言ったの。もっと凄い?確かにお兄ちゃんとの練習の時よりも、この前のスノー達助けた時の方が凄かったけど、もしかしてもっと凄いのかな。いつの間にか涙が止まってた僕。グレンの話に飛びつきます。


「グレン、おとうしゃん、しゅごい?」


「ええ。それはもちろん。大会で優勝するくらいですからね。」


「まあ、あれは相手も良かったからな。ははははっ。」

 

 お父さん、なんて事ないみたいな言い方してるけど、大会?優勝?何それ。それって凄い事なんじゃ!


「おとうしゃんたいかい、ぼくみちゃい!」


「うーん。見たいって言ってもなぁ。来年まで大会はないんだ。しかしハルトはこう言ってくれてるし…。よしグレン!相手しろ。お前だって、けっこうな剣の使い手なんだからな。」


 何々、グレンも凄いの?!

 僕とお兄ちゃん、それからお母さんが見守る中、お父さん達が位置に着きます。グレンの剣はお父さんの剣より細くてちょっと短いです。そして…。


「カンッ!キンッ!カシャン!シュッ!」


 うわあああ!凄い、凄いよ!!もうね、全然違うの。スピードも剣がぶつかる時の音も、それから剣を振るばっかりじゃなくて、剣に魔法を合わせて使うんだ。お父さんの剣には水の魔法が。グレンの剣には風の魔法が。お父さんが剣を振ると水の刃が飛んで、それをグレンの風の刃が、断ち切ります。そして最後には2人が飛び退き、元の位置に戻って終了です。お父さん達が戻ってきます。


「相変わらず、父さんもグレンも凄いね。」


「グレンの剣も全然鈍ってないみたいで、安心したわよ。これなら来年の大会、大丈夫そうね。」


「どうだ、ハルト。お父さん達の剣は。ハルト?」


 僕もう言葉が出なかったよ。だってこんな凄いの見せられて、何言えばいいの?凄いって言葉しか思いつかないよ。あんまりのことにボーッとしちゃってた。


「あ~あ。ハルト、目がキラキラ。ほらハルト、お父さんに何か言わなきゃ。ハルト。」


 お兄ちゃんの声にハッとして、慌ててお父さん達を誉めます。凄いとかカッコいいとか、それから世界で1番とか。もうね考えられる限りの言葉で、お父さん達の事褒めました。そしたら…。


「「「あ…。」」」


 皆んなの声が重なりました。何?あれ?何だろう。鼻水が出ちゃったと思って、手で擦ったんだ。そしたら、手には赤いものが。鼻血でした。興奮しすぎて鼻血がでちゃった。


「あらあら、興奮しちゃったのね。さっきは頭が痛くて今度は鼻血。今日は忙しいわね。」


 またまたお母さんの魔法のお世話になりました。鼻血が止まってからは、今日はもう大人しくしてなさいって、お屋敷の中に入る事になっちゃったよ。もう少し外に居たかったけどしょがない。これ以上鼻血が出ても困るし。僕はオニキスに乗ってお屋敷の中に入ります。


 その日の夜、ご飯食べ終わったあと、休憩室で休んでたら、お母さんが5日後にお店通りに行こうって。


「ハルトちゃんはまだ、ゆっくり街の中見てないものね。なかなか時間取れなくて。」


 そうなのです。僕はこの街に来てから、まだあのお店通りに行った事がないんだ。僕やオニキス達だけで行くのはダメだし、誰かに連れて行って貰おうと思ったら、皆んな予定が入ってて、今まで行けなかったんだ。やっとお父さんのお仕事が落ち着いて、お母さんもお友達の貴族の人とのお茶会が終わって、お兄ちゃんも5日後は、学校がお休みなんだって。


「街の案内してあげたいし、それにお母さん、ハルトちゃんに買ってあげたいものがあるのよ。ハルトちゃん、楽しみにしててね。」


 何だろう?でもお母さんが買ってくれる物なら、きっと大丈夫だよね。…僕、もう着ぐるみは要らないよ。だってクローゼットの中、着ぐるみでいっぱいだもん。


 あと、少しだけおねだりしても大丈夫かな?最初の日、お店通り通ったとき、ご飯やお菓子、とっても美味しそうな物たくさん売ってたんだ。まあ、僕が食べられる物は少ないかもしれないけど。堅いものは大体ダメ。顎がね、疲れちゃうの。子供の口には合いません。でも、あれは食べたい。骨付き肉。海賊が食べるようなお肉ね。あれと似てるのを売ってるの、ちゃんと見てたんだ。あれ、ちょっと憧れない?


 それからもう1つ、買いたいものがあります。オニキス達用のブラシです。オニキス達は毛並みがいいから。いつもふわふわ、もふもふでいて欲しいの。でも1番必要なのはスノーね。大きくなると毛が伸びて、なかなか毛が抜けなくなるんだけど、今は短毛で、凄く毛が抜けるんだ。それが舞って顔中にくっついてもう痒くて痒くて、それに鼻に入ってくしゃみが止まらなくなるの。お店通りに行ったら、最初に買って貰わなくちゃ。


 それからはワクワクしながら、毎日すごして、いよいよお出かけの日になりました。


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