32お父さんの家族。僕の新しい家族。
入り口に近づくと、1人の騎士がスッと近づいて来ました。
「話は聞いております。一応書類の確認を。」
「ああ、これだ。」
お父さんがさっきエイダンさんに貰った書類を、騎士の人に渡しました。騎士がその書類を確認。すぐにお父さんに戻してきました。
「確認出来ました。どうぞお入り下さい。ハルト君だね。ようこそシーライトへ。」
騎士の人が手を振ってくれたから、僕も振り返して、いよいよ街へ入りました。ちょっとワクワク、ドキドキです。
街に入って、最初に見えたのは、お店が並んだ広い通り。本当に広いんだ。そして人の多さにもびっくり。もちろん人だけでなくて、他の人達が契約してる魔獣もたくさん。大きい魔獣も多いからこんなに広い通りになってるのかな?
通りには屋台みたいのがたくさん並んでました。食べ物売ってるお店に、雑貨売ってるお店に、干してパリパリになった魔獣売ってるお店、いろいろなお店がびっしり並んでます。
「ここは街で1番広い道だぞ。お店はほとんどここにあるから、買い物もほとんどここで済ませるんだ。」
ふーん。そうなんだ。まあ、お店が集まってた方が買い物は楽だよね。
あとお店の後ろにあるのは、街の人達が暮らしてる家。木で出来たアパートみたいな感じ。3階建か4階建。それでね、凄いの見ちゃった。
家の窓からおばさんが顔出して、下のお店の人に何か言ったんだ。そしたらお店の人が、お店に干してあった魔獣下から投げて、おばさんに渡してました。それからおばさんが上からコインみたいなのを何枚か落として、それをお店の人が拾います。何あれ。あれが買い物?
「おとうしゃん、かいもの、ありぇ。」
思わず指さしちゃったよ。
「ああ、店に来るのが面倒な奴は、ああやって買ってるのもいるな。まあ、自分の家の前に、買いたい店がないとダメだが。けっこう多いんだぞ。」
今までレジに並んでお金払って、ちゃんと袋に入れて。そんな買い物してた僕にはびっくりの光景だよ。でもよく見ると、お父さんの言った通り、あちこちで今みたいな買い物してる。これが普通なんだ…。あそこの家の人、スープみたいなの紐で釣り上げてるよ。あっ…、あの人パン落としちゃった。あ~あ。
街に入ったの、ちょうど御飯時だったから、街の中はとってもいい匂いです。肉汁が滴る串焼き、美味しそう。あの混ぜご飯みたいのも美味しそうだし。キョロキョロしてたら…。
「ぐうううう。」
お腹が鳴っちゃった。…恥ずかしい。
「はははっ。お腹減ったよな。この匂いだ。街の食べ物は何でも美味しいんだぞ。ただ、食べさせてやりたいんだが、今日は我慢だ。屋敷で皆んな待ってるはずだからな。今度別の日に連れてきてやるからな。」
うう、残念。こんなにいい匂いで美味しそうなのに。オニキスなんてヨダレ出てるよ。他の皆んなも残念そう。スノーは食べ物に走って行こうとして、ライネルさんに捕まってました。
皆んな我慢だよ。今日は他の家族の人に会う、大切な日だからね。今度お父さんとまたここに来ようね。大丈夫きっとすぐ来れるよ。だって今日からここで暮らすんだから。
広い通りを抜けて、お店の数が減ってきました。お店が減ってきたら、今度は一軒家が増えてきました。そこも通り過ぎて一軒家もなくなってきた頃、お屋敷が見えてきました。
お屋敷…。うん。僕が思ってたお屋敷より、ずっと大きかったです。一応3階建で、横に無駄に広い感じ?外から見ただけだから分かんないけど、どれだけ部屋があるんだろうって思ったよ。
門に近づくと、そこにも騎士がいて、お父さんにお帰りなさいませって言って、門を開けてくれました。
「では私達はこれで、明日は朝から伺います。」
「別に急がなくていいぞ。ゆっくり休んで疲れをとれ。明日は休みにする。」
「そうですか。ありがとうございます。」
ライネルさん達は、自分の家に帰るんだって。そうだよね。皆んな自分の家があるのは当たり前。ライネルさん達に手を振って見送ったら、急に周りがしんっとしちゃったよ。あれだけ多人数だったもんね。ちょっと寂しいなあ。
「なんだ、寂しそうな顔して。これからは、俺達の家族と一緒だ。それに屋敷にはたくさんの使用人やメイドが居るから、結構騒がしいぞ。」
そうだ!これから家族に会うんだ!しっかりしなくちゃ。まず自己紹介を完璧に。挨拶は大事だよね。
門を通って、どんどん中へ進みます。屋敷の正面玄関までがまた遠い。真ん中に噴水がありました。魔力石で水を噴水みたいに上げてるんだって。周りの庭もとっても綺麗です。庭はここだけじゃなくて、お屋敷全体にあるんだって。…僕迷子にならないよね。不安なんだけど。
やっと屋敷の正面玄関が見えて来て、そこにたくさんの人が並んでました。多分着てる服とか立ち位置から、前に並んでるのがお父さんの家族で、後ろに並んでるのが使用人とメイドかな。
お父さんが馬を止めて、サッと降りました。それから僕を馬から下ろして、馬は1番端っこに立っていた人が、連れて行っちゃいました。お父さんは僕を隣に立たせます。僕の隣にはオニキス達。前に並んでいた男の人が最初に話しかけて来ました。
「お帰りなさいませ旦那様。少し帰りが遅かったですね。」
「ちょっといろいろあってな。それは後で話す。今はそれよりも待てない奴らが居るからな。」
「そうよグレン。その話は後で。今はキアルの隣に立っている、可愛い男の子のことが先よ。さあ貴方、紹介して頂戴。」
お父さんは僕に自己紹介しなさいって。よし!最初のミッション。自己紹介!
「えと、なまえハリュトでしゅ。たぶん2しゃい?でしゅ。かじょくになりましゅ。よろちくおねがいでしゅ。」
そこまで言って僕は頭をぺこんって下げました。頭を挙げると女の人がキラキラした目で、僕のこと見てました。何?
「か、可愛い。なんて可愛らしい子なのかしら。ちゃんと自己紹介も出来て。偉いわね。さあ、こんな玄関先でいつまでも話していてもしょうがないわ。お部屋に行ってからゆっくりもう1度自己紹介の続きしましょう。」
そう女の人が言うと、女の人は僕の事抱き上げて、中に入って行きます。名前はまだ分からないけど、多分お父さんの奥さん。僕のお母さんになる人です。どんどん進んで行って、入った部屋にはソファーがいくつか置かれていて、それに合わせた机もあります。そしてやっぱり、大きい屋敷の外見に合ってる、とっても広い部屋でした。
「ここは皆んながくつろぐ部屋なのよ。ゆっくり休むお部屋ね。さあ、ハルトちゃんは私の隣に座りましょうね。」
そう言って僕を座らせてから、自分も隣に座りました。
「私の名前はパトリシア。貴方のお母さんになるのよ。よろしくね。」
やっぱりお母さんで間違えなかったです。お母さんは髪の色が綺麗な金髪で、腰まではないけど、けっこう長い髪です。それから目はブルーでした。とっても綺麗なお母さんです。
お母さんは、僕の前のソファーに座った男の子を見ました。元の僕と同じくらい、中学1、2年生って感じの男の子です。
「初めまして。僕の名前はフレッド。ハルトのお兄ちゃんになるんだ。年は13歳。僕、兄弟ができてとっても嬉しいよ。これからよろしくね。分からないことがあったら何でも聞いてね。」
お兄ちゃんは髪は水色で、セミロングくらいかな。にっこり笑った顔がお父さんそっくりでした。僕も兄弟居なかったから嬉しいな。一緒に遊んでくれたりするかな。
「よしハルト、今この屋敷にいる家族は、パトリシアとフレッドだけだ。後の家族、そうだな、ハルトのお爺さんになる人達は、別の所に住んでるんだ。今度会いに行こうな。」
「うん。」
おじいちゃん達もいるんだ。会うの楽しみ!僕は知らず知らず、ニコニコしてたみたい。お母さんに可愛い!!って言われて、抱きしめられちゃったよ。それから頭をなでなで。僕の最初のミッション。自己紹介は成功です。
そんな事されてたら、1番最初にお父さんに話かけてきた男の人が、また話かけてきました。
そう言えば部屋に入ってから、この男の人ずっとお父さんの隣に立ってるけど、誰なんだろう。