28どんどん首輪を外しちゃおう!
僕が思ってたより簡単に、奴隷の首輪は外れました。外れちゃえって言うだけで外れるんだったら、最初からそうしてれば良かったよ。そしたらすぐに外してあげられて、苦しむのが少なくてすんだのに。
「ハルト、何をしたんだ。」
今まで黙ってたオニキスが、突然僕の顔に自分の顔を近づけてきました。いきなりでちょっとびっくりしちゃったよ。ふう。
「全員いっぺんに外せるなんて。ハルトは見ていなかったから分からないと思うが、ライネル達は、いちいち1匹ずつ魔獣の首輪に触って、自分の魔力を流して、それから首輪に何か文字が浮かんでから、首輪が外れたんだぞ。俺はそれ見てたから、ハルトが外れちゃえって言葉だけで外れて、びっくりしたんだ。」
あ、やっぱりやり方違ってたんだ。でも外れたんだし、別にやり方が違っててもいいよね。
「はじゅれたち、もんだいなち!!」
そう言ったらオニキス溜め息ついてました。いいじゃない。これでもう、この子達苦しまないんだから。
あとは、まだ外にいる魔獣のあかちゃん達だよね。同じやり方で外すのはいいけど、結界の中からじゃ無理だし。どうしようかな。僕外に出て大丈夫かな。見つかっちゃって、僕が首輪外す前にあのギルドマスターが、外のあかちゃん達苦しめちゃったら嫌だし。そういえば、まだ箱の中に入ってる子が居たら、箱に入ったままでも外せるのかな?うーん。考える事いっぱい。
僕は外の様子を伺います。お父さんも他の人達も、皆んな自分の仕事に忙しくて、今の僕達の事、誰も見ていません。あのギルドマスター達もね。
………。今そっと外に出て、首輪外せないかな?だって誰も見てない。
「オニキシュ。みえてなくでも、くびわ、はじゅしぇる?」
「どう言う事だ?」
「はこにはいてるまじゅう、みえないでちょ?」
「ああ、そういう事か。分からんが…、外せるんじゃないか。1回で結界の中の首輪全部外せるくらいなんだから、大丈夫だろう。」
そっか。じゃあ、やってみようかな。ちょっとイメージしてみよう。まず結界をなくしてもらう前に魔力溜めるでしょ。だって、結界なくすんだから、サッて魔力使えた方が良いと思うんだ。それからあのたくさん積んである箱の方と、アランさん達が抱っこしてるあかちゃん達に向かって、魔力飛ばしながら、外れちゃえって言う。うん。完璧だね。
僕がそんな事考えてたら、オニキスが僕の顔を覗き込んできました。
「何を考えてる?」
「えと。あのね。」
僕はオニキスにこれからの事説明しました。これが上手くいけば、あかちゃん達皆んな自由になれて、お父さんやお母さんの所に帰れるかもしれないから、僕頑張るよ。説明聞いたオニキスはまた溜め息。
「ハルトは言い出したら聞かないからな。分かった。ハルトのやりたいようにしろ。ただ、危ないと思ったら、さっさと結界張るからな。別にさっきみたいにキアルに、この結界に連れて来てもらってからでも、いいんだからな。」
オニキスにOKもらったから、早速行動開始です。結界なくしたら、声が聞こえちゃうから、中にいるあかちゃん達に、静かにしててねって言ってから、僕は魔力溜め始めました。溜め終わって、お父さん達の事確認。誰も僕達の事見てません。よしよし、今のうち。
僕はオニキスに、コクンって頷きました。オニキスが結界を消しました。
「くびわ、はじゅれちゃえ!!」
そう言って、魔力を体の外に出しました。さっきと同じ感覚です。そしたらアランさんの抱っこしてたあかちゃんの首輪が、ぽとんって外れて下に落ちました。他の抱っこされてる赤ちゃん見ても、皆んな首輪外れてます。これなら箱の中にいるあかちゃんの首輪も、ちゃんと外れてるはず。冒険者の人が、何個か箱開けて確認してます。それで、
「首輪、箱の中の魔獣も外れてるぞ!」
って。やったね。成功だよ。僕は頭の上で拍手です。フウとライも僕の周り飛びながら、拍手してくれてます。ブレイブもブレイブのあかちゃんと一緒に、僕の周り走り回って、オニキスは…、また溜め息ついてました。何?成功したんだから喜んでよ。
ん?周りが静かな事に気づきました。結界の中にいた時は、結界のおかげで静かだったけど、結界なくてもこんなに静かなの?おかしいと思って、お父さんの方見ました。そしたら、お父さん達がびっくりした顔して動かないまま、僕の方見てます。ギルドマスター達も捕まった人達も全員です。どうしたの?え?!何かあったの?
何かあったのかと思って、周りキョロキョロしちゃったよ。そしたらオニキスが、皆んな僕のこと見てるって。え?僕?お父さんとライネルさんが近寄って来ました。
「ハルト、何で結界の外にいるんだ?オニキス、どうして結界を消した?」
「おとうしゃん、くびわ、みんなはじゅしぇた。くびわ、はじゅれちゃえって。」
「………オニキス、ハルトがやったのか?」
「どうだろうな。今、ここで話しても良いのか?まあ、バレてるとは思うが、奴らが居ない方が良いんじゃないか?」
オニキスはギルドマスター達の方を見ました。お父さんは頭をガシガシ掻いた後、深呼吸してから、指示し始めました。
ガントさんと何人かの騎士と冒険者に、ギルドマスター達を、冒険者ギルドに連れて行って、牢屋に閉じ込めておけって言って、後の人達は、残りの箱の中身を確認して、魔獣のあかちゃん達は保護するようにって。僕には、
「ハルト、ここから動くなよ。オニキス、これ以上何もさせるな。いいな。」
そう言って、荷馬車の方に行っちゃいました。うーん。急に忙しくなったね。
「オニキシュ、きゅうに、いしょがちい。どちたのかな?」
「はあ、そうだな。忙しくなったな。まあハルトは、あんな忙しくしてる所に入って行っても邪魔になるだけだからな、ここで大人しく待ってろ。」
なんかオニキス溜め息多くない?まあ良いけどさ。
僕は座って、ホワイトノーブルタイガーのあかちゃん抱っこしました。なでなで、なでなで。そしたら皆んななでなでして欲しいって囲まれちゃったよ。順番ね。並んで並んで。
でも本当に良かった。皆んなの首輪外せて。僕役に立てたよね。
(キアル視点)
「キアル様、見てください。」
「ん?…何だあれ?はあ、これ以上今は何もしないでくれ。」
ハルトの方を見ると、助けられた魔獣の子供達が、ハルトの周りに集まり、全員が大人しくお座りをしていた。ハルトは順番に子供を撫でている。どうも子供は、ハルトに撫でてもらうのを、大人しく待っているらしい。
俺はそれを見て、溜め息を吐きながら作業に戻った。頼むぞハルト。今日はもうこれ以上、規格外の事をしないでくれよ。