26白ネコ?
僕の所に戻って来たお父さん。オニキスの風結界の中に入ります。悪い人達、全員捕まえられたって。良かったあ。
「オニキス、このまま結界張ったまま、荷馬車の所まで来てくれ。どの荷物に魔獣が入ってるか知りたい。勿論全部調べるが、早くハルトの具合の悪くなる原因を除いてしまいたい。」
「分かった。ハルト、苦しくなったらちゃんと言え。いいな。」
「うん。」
皆んなで少しずつ荷馬車に近づきます。荷馬車から少し離れた所に、冒険者さんと騎士さんが立ってて、縄で縛られて座ってる人達を囲んでます。あれが悪い人達かな?きっとそうだね。
荷馬車の所にはライネルさんとアランさん以外に、ザインさんや、他の人達が何人かいて、荷物を下ろしてました。
少しだけ頭痛いけど、まだ大丈夫。ちゃんと小さい声も聞こえてます。
「ハルト、どの辺に置いてある箱から、声が聞こえてくる?」
「えと、あっち。」
僕は右のほうに積まれてる箱の方を、指さしました。
「よし、じゃあそっちの箱の方を中心に、確認していこう。今から箱を見せるから、声のする箱指差してくれ。」
そう言ってお父さんは結界の外へ。何個か箱が重なってるから、ちゃんと1つずつ箱を確認して、間違えないようにします。どんどん箱を見ていって、違う箱のときは、首を横にふります。なかなか声のする箱が出て来ません。どの箱なんだろう。箱が見つかんないうちに、最後の段になっちゃったよ。
最後の段で1番小さい箱を、お父さんが持ち上げました。そしたらその箱の中から、助けてって声が聞こえました。僕は力強く頷きます。お父さんが箱をそっと開けました。中から出てきた魔獣は…。
「ちろねこ?あかちゃん?」
「あれは…、ホワイトノーブルタイガーか…。」
え?タイガー、白ネコの赤ちゃんじゃないの?
「とても珍しい魔獣だ。俺でも成獣には2回しか会ったことがない。その子供なんて、初めて見た。人間は確か、ホワイトノーブルタイガーは、神の使いとして、崇めている国があったはずだぞ。」
わああ、何かとってもカッコいい。神の使い。そんなふうに言われてる魔獣に会えるなんて。よく見たら、お父さん達もびっくりした顔してるし。やっぱりとっても珍しい魔獣なんだね。
ホワイトノーブルタイガーをよく見てみると、カタカタ震えてるみたい。きっと人間が怖いんだ。それに首には、太い首輪つけてます。オニキスがあれが奴隷の首輪だって教えてくれました。首輪をつけられちゃうと、命令に逆らえなくなって、もし逆らえば、罰として、電流が流れたり、首輪がしまって首を締めたりするらしいです。あとはわざと首輪に魔力を流して、命令違反してなくても、苦しめたりすることができるみたい。
首輪を外すには、首輪をつけた人が外すか、外すための専用の道具を使うか、それとも、つけた人よりも魔力が強い人が外すしか、方法はないみたいです。
外の声は風結界で聞こえないから、何言ってるか分からないけど、お父さんが縛られて座っている1番奥にいる人に、何か話してます。そしたらまた、声が聞こえてきました。痛い助けてって。オニキスにそう言ったら、多分今、お父さんが話してる人が、首輪をつけた人じゃないかって。お父さんに首輪を外せって言われて、わざとホワイトノーブルタイガーを苦しめてるんじゃないかって言ってます。
僕は考えました。もしかしたら、この風魔法に入れば、外すことは出来なくても、あの悪い奴からの魔法を、防ぐことが出来るんじゃない?オニキスに聞いてみたら、分かんないって。でもやってみても良いよね。僕は手を振ってお父さんを呼びました。お父さんはホワイトノーブルタイガーをライネルさんに渡して、オニキスに結界に入れてもらいました。
「どうした?」
「えと、あかちゃん、けっかいなか、いれるでしゅ。」
うまく説明できないから、オニキスに説明頼みます。お父さんは説明聞いて、渋い顔しました。
「大丈夫なのか?」
「ハルトがやると言っているからな。それにダメそうなら、すぐに止めればいい。」
「…分かった。でも、ハルト、ダメだと思ったらすぐにやめるんだぞ。いいな。」
お父さんが結界を出て、あかちゃんを抱っこして近づきます。オニキスが結界を広げました。お父さんとあかちゃんが中に入ります。
そしたら今まで頭が痛かったのに、全然痛くなくなりました。あかちゃんもそうなのかな。不思議な顔して、それからもキョロキョロ周りを見てます。僕の考えたこと合ってたみたい。
「にゃあ~。」
あかちゃんが鳴きました。あれ?言葉喋れるんじゃないの?さっきまで聞こえてたのに。
「こんちはでしゅ。ぼく、ハリュトでしゅ。たしゅけにきまちた。たしゅけて、いったでしょ?」
あかちゃんはビックリした顔して、それから僕をじっと見てきます。そして。
「たしゅけるってきこえちゃの、おなじこえ。」
今度は普通に話してきました。オニキスにあかちゃんが分かるように、説明してもらいました。最初あかちゃんは、僕達人間のこと信じられないって言ってました。そりゃあそうだよね。今までずっと、小さな箱に入れられて、痛めつけられて、きっと僕達には分からないくらい、傷つけられたはずだもん。
僕はあかちゃんに近づきます。それから頭をなでなでしました。最初ビクッてしたあかちゃんだったけど、だんだん目がとろんってしてきました。
「ボクね、ハリュトのこえ、じゅっときこえてちゃの。じゅっとしんぱいちててくれちゃの。ボク、うれちかったの。」
そう言って、僕に飛びついてきました。僕は抱きしめて、もっとなでなでです。あかちゃん泣いてた。
「オニキスの結界で何とかなったな。ただ、首輪外すにはアイツに外させるか、領地に戻って、専用の道具で外すしかない。それかアイツ以上の魔力の持ち主がいれば。ちょっと話してくる。」
お父さんが出て行きました。首輪、絶対外してあげるからね。もう少しだからね。僕はずっとなでなでし続けました。