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24突然の出来事

(キアル視点)

「うわあああああああああ!!」


 ハルトの突然の叫び声に、今まで何となくハルトに呼ばれたような気がしたが、そのまま寝ていた俺は、急いで飛び起きた。そして目に飛び込んできたのは、隣で頭を押さえてとても苦しそうにしている、ハルトの姿だった。


「ハルト、ハルト、どうしたんだ!!」


 抱き上げ、ハルトの様子を見る。


「どうしたんですか!!」


 ハルトの声に気づいたんだろう。ライネル達が部屋に入ってきた。アランがハルトの様子を見て、なんとか回復の魔法を使ったが、何も変化はなく、ハルトは苦しんだままだ。それどころか、さらに苦しみ出した。


「風魔法で、この部屋全体を包むか?少しはそれで遮断が出来るかも知れない。ハルト待ってろ!」


 オニキスがそう言うと、部屋の中を風が吹き始める。その風は最初ただただ強い風というようなものだったが、それがだんだんと濃密な、風のカーテンみたいな物に変わってきた。最後には我々の周りを包むように、風の球体のようなものに包まれた。


「これは?」


「風を密集させた。結界とまではいかないが、これで少しは外と、隔離できるのではと思ったんだ。ハルトどうだ。」


 そうだ、オニキスに気を取られて、ハルトの様子を見るのを忘れていた。他の3人もそうだったらしい。全員でハルトの様子を見る。ハルトは先ほどまでの苦しみ方がうそだったように、落ち着きを取り戻すと、オニキスの方へ向き、オニキスに抱きついた。


「オニキシュ、ありあと。ちょっといちゃいけど、だいじょぶ。」


 ハルトの様子に、少し胸を撫で下ろした。はあ、びっくりした。ハルトが大丈夫そうなら、話を聞かなくては。この風の結界が消えたら、また苦しむという事だ。それでは何も解決できない。


「ハルト、何があった?」


 まだ少し具合の悪いハルトには可哀想だが、原因を取り除かなければ。ハルトを抱っこし、頭をゆっくり撫でてやりながら話を聞く。

 ハルトの話をまとめると、突然声が聞こえて来て、その声は助けを求めていたらしい。それから痛いとも。私にはそんな声、全然聞こえなかったが。ライネル達もそうだ。それどころかオニキス達もその声を聞いていない。オニキスが話に入ってきた。


「人間が知っているか分からないが、人間と魔獣はごく稀に、波長が合う時があるんだ。本当に稀にだぞ。魔力の性質が同じだと思えばいい。」


 性質が同じ?確かに皆んなそれぞれ、得意な魔力の種類はあるが、そんなことを言ったら、波長が合う者などたくさんいるはずだが。


「少しずつ皆んな性質が違うんだ。皆んなが同じではない。得意な魔力は火だったとしても、まったく同じというわけではないんだ。オレには、魔力の流れがわかるからな。」

 

 初めて聞いたが、魔力とはそういうものなのか。


「助けを呼んでいた奴は、ハルトとほとんど波長が一緒だったんだ。だからハルトにだけ声が聞こえて、しかも近くに居たから、奴の痛みまでハルトは感じとってしまった。この声と痛みからハルトが逃れるには、助けを求めている奴を助けるか、今すぐここから離れるかだ。」


 オニキスの言葉に、ハルトが一瞬寂しそうな顔をした。


(ハルト視点)

 オニキスの言葉に、僕は思わず、


「だめ!たしゅけてあげて!」


 そう言っちゃってました。だって助けてって、痛いの嫌だよって言ってたんだよ。とっても苦しそうな声だった。僕、知らん顔なんか出来ないよ。僕はお父さんにお願いします。


「おとうしゃん、たしゅけてあげてくらしゃい。」


「それは…、助けてやりたいが、どこに居るのか分からないんじゃ…。」


 お父さん達皆んな、困った顔してます。確かに場所分からないけど、声がしてた方向なら分かるよ。それにね。


『助けて…。』


 オニキスの結界のおかげで、痛いのは少し楽になったけど、声はちゃんと聞こえなくなっちゃった。でもまだ小さくは聞こえてる。オニキスは冒険者ギルドの方から声が聞こえてた事、お父さん達に言ってくれました。僕もそこまで行けば、また案内出来るはず。

 でもオニキスの話聞いて、お父さん何か考え込んじゃいました。どうしたんだろう。早く助けに行かないと。もしかして、助けに行かないのかな?本当は助けに行きたいけど、ダメって言われたら…。僕達だけでも、なんとか助けに行こう!

 と、思ってた僕が聞いたのは、意外な話でした。


「…冒険者ギルド?まさか闇取引か?」


「こんな夜中に、こんな臨時の小さなギルドが、運営しているとは思えません。もし冒険者ギルドで人が動いているとなれば、もしかしたら。」


「闇で取引されるほどの魔獣がいて、その魔獣に奴隷の首輪を使用して、痛みで従わせようとしてるってことか。それでハルトは痛みを感じた。」


「ここのギルドは、良くない噂も聞きます。もしかすると…。」


 え?何?闇取引?奴隷の首輪?なんか急に、物騒な話が聞こえてきたんだけど。そんなに厄介な話なの。僕ただ助けられれば良いと思ったんだけど。お父さんが次々に指示を出し始めました。ここじゃない他の宿に泊まってる騎士や冒険者にも声をかけるみたい。騎士の人達にも冒険者の人達にも、情報収集が専門の人がいて、まず、その人達に様子を見てきてもらって、これからのこと決めるみたいです。


「オニキス、ハルトだけ風の結界を張ったまま、俺達を外に出せるか。様子を確認してから動く。それまでここでハルトを守っててくれ。俺が戻ってくるまで動くなよ。」


「分かった。」


 お父さん達、助けてくれるみたい。良かった。僕はお父さんに抱きつきました。


「ハルト、誰が助けを呼んでるか分からないが、様子を見てくる。ハルトはここで待っててくれ。すぐに戻ってくるからな。」


「おとうしゃん、たしゅけてくりぇる?」


「ああ。もし本当に辛い思いをしている魔獣がいれば、絶対助けてやる。それを調べに行ってくるからな。」


「ぼく、まってりゅ。いてらっしゃい。」


 お父さん達の声が聞こえなくなりました。姿は見えてるのに。オニキスが上手に僕達にだけ風の結界張ったみたい。お父さんは僕に手を振って、部屋から足早に出て行きました。

 僕はいつでもお手伝いするよ。声の場所分からないなら案内するし。痛かったり、苦しかったりするかもしれないけど、僕の他にも苦しんでる魔獣がいるんだもん。放っておけないよ。必ず助けてあげるからね。待っててね。

 僕は窓の外を見ながら、そう力強く思いました。


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