23事件発生
今日も朝早くから、シーライトへ向かって移動です。相変わらず朝寝坊助の僕は、お父さんと一緒に馬に乗ってます。でも、昨日も最後までお父さんと一緒だったから、今日は途中から、オニキスに交代です。オニキスふて腐れちゃったんだよ。ごめんねオニキス。
何かあんまりにも順調に移動が出来てるみたいで、今日泊まるはずだった街を通り越して、次の日の街まで行くみたい。そうすると、明日移動するのがとっても楽なんだって。明日の夕方になる前に、シーライトにつくことが出来るらしいです。予定では、明日の夜遅くか、次の日の朝だったみたい。僕が小さいのに、疲れたとか文句言わずに、ついて来てくれてるからだって、褒められちゃったよ。えへへへへ。
今日泊まる街はジスって言う街です。街に入ってすぐ目に付いたのは、クルルにはなかった冒険者ギルドでした。2階建ての建物で、剣の看板が付いてました。う~んこれぞ異世界?冒険者ギルドの後ろにある、これまた2階建ての建物は、ギルドの倉庫なんだって。
「ここの冒険者ギルドは、荷物が多くなりすぎた冒険者が、魔物とかを預けて、証明書をもらうんだ。向こうには商業ギルドもあるぞ。まあ、臨時のギルドってところか。臨時っていうのは、なんて言ったらいいんだ?」
「臨時っていうのは、急いでってことです。急いでギルドに用事がある人が、ここのギルドを使うんですよ。急ぎじゃない人は、シーライトのギルドに行きます。ここではお金が貰えないんです。もらった証明証、この魔物を預かりましたよって紙ですね、それは、シーライトのギルドで出してお金を貰います。」
「その通りだ!」
「………はいでしゅ。」
ライネルさん、説明よく分かりました。僕の前にいた世界でライネルさんきっと、先生になれるんじゃないかな?
今日泊まる宿に着いて、すぐに部屋へ。今はちょうど夕方。いろんな所から、ご飯を作る良い匂いがしてきます。ご飯の時間まで僕は部屋の中で遊んでなさいって。お父さんはライネルさん達とお話があるんだって。僕が暇にならないように、画用紙みたいな紙と、ペンを置いていってくれました。シーライトに着いたら、ちゃんとしたお絵かきセットあげるからなって。お父さんが部屋から出て行って、残された僕達。お絵かき…。まさかのお絵かき。でもそうか。僕ぐらいの小さい子だったら、お絵かきが普通か。せっかく用意してくれたんだから、ちゃんと遊ばないとね。
少しオニキス達とわちゃわちゃした後、僕はお絵描きです。さて何描こう。そういえば僕美術の成績最悪だったような…。うん。気のせい気のせい。う~ん。やっぱりここはオニキス達描くべきだよね。最初はオニキス、次にフウとライ。次にブレイブ描いてあげよう。
オニキスにじっとしてもらって、まずは顔から次に体、手に足に、最後にしっぽ。………。まあ、これでいいか。
「オニキスできちゃ。どう?」
「しっぽがいいな。オレのしっぽのフサフサ感が出てる。」
うん。合格を貰いました。次はフウとライ。あれ、ちょっと羽が大きくなっちゃったかな。でも他はいいはず。
「どう?」
「うん。バッチリ!」
「羽が大きいのが気に入ったよ。」
失敗だと思った羽が喜ばれました。それに2人にも合格貰いました。最後はブレイブ。うーん。ブレイブが1番難しいかな。でも頑張らなくちゃ。ブレイブはやっぱりオニキスと一緒で、あのもふもふのしっぽが特徴。うん、これで良いかな。
「ブリェイブどう?」
ブレイブがしっぽをふりふり、それから僕の肩に乗ってきて、ほっぺをすりすりしてくれました。合格みたい。よし!皆んなから合格貰いました。
ちょうど描き終わった時、お父さんがご飯だって呼びに来てくれました。僕はお父さんに駆け寄ります。
「おとうしゃん、みんなかいたでしゅ。」
何か合格もらって嬉しくなっちゃた。その勢いのままお父さんに見せちゃったよ。
「おお、上手いじゃないか。ちゃんと皆んなの特徴が描けてるし。ハルトは絵の才能があるな。」
「えへへへへ。」
褒められちゃった。まさか絵で褒められるなんて。
そのあとは昨日みたいに、食堂で皆んなでご飯食べて、部屋に戻って、そしていつの間にか寝ちゃってました。
どのくらいたったかな。僕はふと目を覚ましました。
「…ん。」
何か声が聞こえたような。誰こんな夜中に。僕は目を擦りながら周りを見ます。僕の隣でお父さんが寝てます。僕が起きたのに気づいたオニキスが、起き上がって、僕の顔を自分の顔でスリスリしました。
「どうしたハルト。まだ夜中だぞ。さあ、もう1度寝よう。」
「なんか、こえ、ちなかった?」
「声?俺は聞いてないが…。」
僕の気のせいかな。そうだよね。こんな夜中に僕のこと呼ぶ人なんていないよね。今起きてるのは、酒場にいる冒険者さん達くらい?あとは夜仕事してる人とか。よしもう1度寝よう。僕はもう1度ベッドの中に潜り込みました。その時。
『助けて。僕もう痛いの嫌だよ。』
そう声がまた聞こえました。
「またこえしちゃ。たしゅけて、いってりゅ。」
「?我には聞こえないが…。波長があったか?どの辺から聞こえてくるか分かるか。」
僕は耳を澄ませます。『助けて』また声が。声が聞こえるのは、確か冒険者ギルドがある方向です。痛いのヤダって言ってる。助けてあげなくちゃ。オニキスにそう言ったら、僕が一緒に行かないと、声の聞こえないオニキスは、助けを呼んでる子の所に行けないって。どうしよう。勝手に行けないよね。僕はお父さんを起こします。
「おとうしゃん、おとうしゃん。おきてくらしゃい。」
「う~ん…。」
「とうしゃん。」
「どうした…、ハルト…。まだ夜中だぞ…。」
なかなか起きてくれません。お父さん起きてよ。もう1度起こそうとした時でした。突然体中を、凄い痛みが襲いました。ギリギリするような、ズキズキするような。それと、頭もとっても痛くなりました。
「うわあああああああああ!!!」
僕は頭を押さえて、倒れこみました。体も痛かったけど、頭の方がもっと痛かったです。僕の叫び声に、お父さんが慌てて飛び起きました。
「ハルトどうした!!」
『痛いよ!!助けて!!』
声もずっと聞こえてます。僕は体が痛いのと、頭が痛いの伝えようとしたけど、全然言えませんでした。