18領主様の所にお話に行きましょう。
<ハルト視点>
次の日の朝、僕達は洞窟の中を片付けて、もしすぐに帰ってきてもすぐに使えるように、オニキスが自分の匂いをつけました。これで他の魔獣は近づかなくなるみたい。それからオニキスは僕を子ファングがいる群れに預けて、これからの森のこと、穢れを祓える魔獣にお願いに行きました。どんな魔獣なんだろうね。
「ハリュト、バイバイでしゅか?」
「うん。でも、しゅぐにかえりゅかも?」
僕とバイバイしたくないって子ファング泣いちゃって、ちょっと大変でした。でも、僕のことそんなに好きになってくれたなんて、とっても嬉しいです。また遊びに来る約束したら、すぐだよって。本当可愛いなあ。
少しして戻ってきたオニキスに乗って、子ファングに手を振りました。最後まで泣いてた子ファング。きっとすぐ遊びに来るからね。その前に本当に街に行くのか、それも分かんないけど…。
この前の領主様のいるテントの場所へ向かいます。オニキスがお話するから、何にも言わなくて良いって言ってたけど、僕だってお話するよ。この前はちょっと緊張しただけで、今度は大丈夫なはず。テントが見えてきてやっぱりドキドキです。
街へ行って、変な家に連れて行かれたらどうしよう。意地悪されたり、叩かれたり、そんな家に行くくらいなら、僕はこの森の、僕達の家で暮らした方が良いです。領主様は、そんなことしない優しい人かもしれないけど、別の人は?そう考えたら、不安になっちゃったよ。
オニキスがスピードを落として、木の陰から姿を見せたら、ちょうどそこにライネルさんが居ました。何人か冒険者もいて、僕達を見て最初はびっくりしてました。うん。やっぱりダメ。人が多い。僕はオニキスに隠れてご挨拶。
「こんちは。」
「こんにちは、ハルト君。よく来てくれましたね。今キアル様呼んできますから、待っててください。」
「はいでしゅ…。」
ライネルさんを待つ間、僕はオニキスに隠れたまま。そしたら近くにいた冒険者が僕に近づいてきて、ちょっとこっち来いって。隠れたままついて行った場所は焚き火の所。それでね、おたまで鍋から何かすくってコップに入れました。それを僕に渡してくれます。僕はオニキスのしっぽから出て少しづつ冒険者に近づいて、コップを受取りました。あったかい。そおっと口に入れます。
「あみゃい!!」
甘くてココアみたいな飲み物です。とっても美味しい!僕はこくこくどんどん飲んじゃいます。すぐ無くなっちゃいました。
「ない…。」
「その様子だと、美味しかったみたいだな。もう少し飲むか?」
「はいでしゅ!!」
もう一杯貰って、それもすぐ飲んじゃいました。
「ありあとでしゅ。」
「おお。また飲みたかったら言えよ。」
ココアを飲み終わってすぐ、領主様が焚き火の所に来ました。それから領主様のテントにおいでって、僕のことひょいって肩車して歩き始めました。おお、高い。自分が小さいから、大人の視線になっただけで大きくなった感じがします。僕思わず笑っちゃったよ。
「キャキャキャッ!」
「そうかそうか楽しいか。良かったな。」
そう言われて、すぐ笑うのやめちゃった。この様子だと、感情もお子様になってきちゃってる。本当のお子様になるのも近い?
テントについて領主様、僕を肩車したままテントに入ろうとしたんだ。高い場所にいる僕に、テントの布が思いっきりぶつかりました。
「ぐえっ!」
カエルみたいな声出ちゃったよ。それから僕は涙目です。
「ふえ…。」
領主様が慌てて僕に謝ります。
「す、すまん。大丈夫か。どこが痛い?!」
「何をやってるんですかキアル様。ハルトくん大丈夫ですか。ちょっとびっくりしましたね。」
今度はライネルさんが抱っこしてくれて、頭をなでなでしてくれました。
テントに入ってから少しの間、領主様はライネルさんに怒られてました。僕は椅子に座ってそれを見てるだけ。怒られてる最中に体の大きい人が入ってきました。確かガントさん。ガントさんは2人を見てまたかって言って、2人を止めてくれました。2人をって言うか主にライネルさんだけど。
ガントさんのおかげで、ライネルさんが怒るのやめて、ぐったりしてる領主様がやっと、僕の方見てきました。やっと話が出来そうです。
<キアル視点>
ライネルがテントに入ってくるなり、ハルトが来たと言ってきた。俺はすぐ立ち上がり、ハルトを迎えに行く。歩きながら話を聞くと、今日は別に怪我や風邪で来たのではないらしい。遊びに来ただけか?それともオニキスがあの話をしたか?まあ、取り敢えず会いに来てくれて嬉しい。ハルトは可愛いからな。
ハルトの元へ行く途中、焚き火をしている方に人集りを見つけた。よく見てみると、ハルトがとても良い笑顔で、オリアスを飲んでいた。オリアスはオリアスという花の蜜を絞って蜜を集めた物だ。冷たくても温かくても美味しい飲み物で、こういう遠征の時なんかは、疲れを取るためにいつも持ってきている。
そのオリアスを飲むハルトを見て、冒険者も俺の部下達も顔が緩んでいた。どうもハルトの可愛さにやられたらしい。くそっ、これ以上ハルトの可愛さに気づかれてたまるか。
オリアスを飲み終わったのを確認して、ハルトをさっさと迎えに行く。それから肩車をしてやると、とても喜んでいた。それに調子に乗った俺は楽しくなってしまい、そのままテントに入ろうとしたのがいけなかった。ハルトが思いっきり、テントの布に顔面をぶつけてしまった。
泣きそうになるハルトをライネルがあやし、それから俺は説教になってしまった。ガントのおかげで途中でやめてもらえたが。はあ、これではハルトに嫌われてしまう。しっかりしなければ。もしかしたらこれから、ハルトは私と暮らすかもしれないのだから。