17これからの事
少しだけお話して、僕は家に帰ります。入れ物にさっきのお粥入れてくれて、後で食べなさいって。あと領主様達は、もう少しここに居るみたい。何か、調査がどうとか言ってたけど、まあ僕には関係ないからいいや。
お粥のこと、それから風邪治してもらったこと、もう1度お礼言って、僕達は家に帰りました。
最初はちょっと緊張したけど、でも皆んな優しい人ばっかりで良かった。走るオニキスに、ご飯貰えて良かったねって言ったら、
「ああ。そうだな。」
それだけしか言わないんだ。何だろう。少し元気ないみたい。もしかして、僕の風邪が移っちゃったとか?それだったらどうしよう。この貰ったお粥、オニキスにたくさんあげて、ゆっくりしてもらおう。
そう思ってた僕の考えは、全然違うものでした。
家に着いて、風邪で寝てた葉っぱは全部燃やして、新しいふわふわ葉っぱを敷き詰めました。その間もオニキスは静かなまま。本当に大丈夫かな。夜になって、器にお粥を移し替えて、焚き火の上であっためました。それを皆んなで分けます。
「ん?俺のご飯多くないか?ハルト、ちゃんと食べないと、また風邪を引くぞ。」
「ぼくだいじょぶ。でも、こんどオニキシュげんきない。かじぇ?だからね、ごはんいっぱい!!」
「………俺のためか。そうか。」
そう言うとオニキスは、ムシャムシャごはん食べ始めました。お粥だけじゃなくて、木の実もキノコもたくさん。あれ?元気だね?皆んなが食べ終わると、オニキスが大事な話があるって言ってきました。とっても真剣な声です。フウ達もそう思ったみたいで、フウとライは僕の肩に、ブレイブは僕の頭に、ちょんと静かに座りました。
「ハルト、今日の人間達を見てどう思った?人間は怖いと思ったか?」
「ううん。みんなやしゃしかった。ぼく、へいきだったよ。」
「そうか。」
何でそんな事聞くんだろう?オニキスは続けて話します。
「ハルト。街で暮らしてみるか?」
「ふぁ?!」
その言葉に驚いたの僕だけじゃありません。フウもライもブレイブも皆んないっきに騒ぎ始めました。どうして街で暮らすんだって。僕と別れなきゃいけないのかって、ブレイブなんかオニキスの鼻、引っかいちゃってるよ。痛そう…。
それよりも、僕もちょっと今パニック。オニキスからそんな事言われると思わなかったから。街で暮らすってことは、皆んな家族じゃなくなるってこと?そんなのやだよ!
鼻を引っ掻かれ、フウとライに耳を引っ張られ、オニキスが慌てます。
「話はちゃんと最後まで聞け!勿論街へは全員で行くんだ。」
一瞬で皆んな静かになりました。よく話聞いてみると、今日僕が風邪引いた事で、オニキス考えたんだって。
もしこれからまた、僕が森の仲間だけじゃ治せない病気になったら?今回は領主様がいてくれたから良いけど、いつもここに居るわけじゃないからね。本当は人が洞窟に住んでるはずないからなって言いました。それから、僕が大きくなってもし、街とかに行くようになったら、何も勉強出来てなかったら大変だろうって。
確かにそうかも知れないけど、僕ここ好きだよ。ずっとここに居ても良いくらい好きだよ。僕がそう言ったら、オニキスはここは第1の家で、街が第2の家っていうのはどうかって言ってきました。
「俺はあの人間に聞いてみるつもりだ。あいつはなかなかの権力の持ち主らしい。ハルトは知らないが、ハルトが倒れているとき、あいつが言ってきたんだ。こんな生活ばかりしていたら、またハルトが具合を悪くするぞってな。それから、もし良かったら、あいつ達と一緒に街に来てみないかってな。」
そんな話してたんだ。知らなかった…。最初オニキス街に行くの断ったんだって。ここが僕達家族の家だから。それに街に僕が行っちゃったら、お別れしなくちゃいけないだろうって。
「そしたらあいつ、皆んなで来ればいいだろうって言ってきた。俺が街の人間が俺を怖がるだろうと言ったら、それも大丈夫だと言ってきた。そのうち慣れるだろうだそうだ。」
慣れるってそんな簡単に。でもそうか、オニキス達も街に行っていいんだ。
「だから1度街へ行ってみて、もしダメだったらすぐにここへ戻ってくればいい。この家はこのままにしておけば、帰ってきてすぐ暮らせるからな。」
うーん。じゃあ1度いってみてもいいかな。フウ達もそれぞれ考え込んでます。あっ、1番大事な事聞くの忘れてた。オニキス、森から離れてもいいの?今までずっと、皆んな守って来たんでしょう。オニキスが居なくなっちゃったら、皆んな困らない?そう聞いたら大丈夫だって。代わりが居るからなって。何か森の奥の奥の方に、オニキスみたいに穢れを祓える魔獣が居るんだって。その魔獣は、1人が好きで、誰とも関わりを持たないけど、魔獣が苦しんでる時は助けてくれるみたい。
じゃあどうして、この間オニキス助けてくれなかったのか聞いたら、どこかに遊びに行ってたらしいです。え~、大丈夫なの本当に。
「これがきっかけで、少しは森の魔獣と仲良くなれるだろう。そうなってもらいたいから、今回の事は丁度いい。」
それからも皆んなでいろいろ話しあって最後には、1度街へ行ってみようって事になりました。
あとは領主様が何て言うかが問題だって。街へ行って変な家に入れられたら大変だから、そこは気を付けなくちゃいけません。とにかく、僕達は街に行く事に決定しました。
「どうなるでしょうね。一緒に来てもらえるでしょうか。」
「こればかりはな。下手な事をして余計に警戒されて、ハルトを保護できなくなるのは避けたい。今は黙って待つしかないだろう。」
「そうですね。」
暗い森の中、俺はハルト達が居るであろう、洞窟の方を見た。