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13初めての人間

<ハルト視点>

 オニキスがフウ達に、近くに回復魔法使える妖精いないか聞いたけど、この近くには今居ないんだって。

 ねむたいなあ。この前は眠ったら元気になったよね。なら、僕家に帰って、いつもみたいに皆んなで寝たい。あのふかふかな葉っぱの上で。


「いえ、かえりゅ…。」


「ああ、そうだな。帰ろう家へ。」


「ハルト。皆んなで一緒に寝ようね。」


「すぐ元気になるよ。」


 僕は何とか頷きます。ちゃんとぐっすり寝て、また明日皆んなと遊びたいもんね。自分でオニキスに乗れないから、他のファングが僕の服咥えて、背中に乗せてくれました。落ちないように、ゆっくり帰ろうって。オニキスが歩き出そうとした時でした。


「待ってくれ!!」


 誰?僕眠たいんだけど。早く帰って眠りたい。声は続きます。


「ロードファング。話がある!!」


 オニキスに話があるの?本当に誰?僕寝ててもいい?オニキスが話などない!さっさとここから立ち去れ!って吠えました。それなのにその人、話を続けるんだもん。目を開けてられなくて、瞑りながら誰かの話を聞きます。


<オニキス視点>

 まったく早く帰ろうとしてるのに、声をかけてくるなんて。大体俺達には話なんてない。何で人間と話さなければいけないんだ。ああ、ハルトは別だぞ。まあ、盗賊ではないんだろう。盗賊ならば、今頃ここは戦闘になっているはずだ。

 声をかけて来た男は、他の人間達と違い、少し身なりがいいように見える。それにこの男がこの人間たちのリーダーか。


「その子供は魔力の使い過ぎで、倒れているんじゃないのか。私達の仲間には回復魔法が使える者がいる。回復させてもらえないか。」 


 余計なお世話だ。何故見たこともない人間に、助けを借りないといけない。ハルトに何かあったらどうする。俺は無視して歩き出そうとした。それでも人間は食いさがってくる。まったくうるさい奴だ。魔法を使えば、早くここから離れられるか?しかしそれではハルトの体に悪い。


「お前達が居なくなれば、家に帰りゆっくりでき、魔力も回復する。早く去れ!」


 イライラする。ハルトはうつらうつらし始め、今にも寝そうだ。早くあのふわふわな葉っぱの上で、俺の体を枕に寝かせてやらなければ。その時人間がこんな事を言ってきた。


「我々なら、すぐに治してやれる。その状態を長く続けさせるつもりか。体を動かすことが出来ず、辛いんじゃないのか?確かに眠って静かにしていれば、魔力は回復出来るかも知れんが、その子にとってどっちが良いのか考えろ。」


 その言葉に俺は一瞬立ち止まる。背中の上でぐったりするハルトを感じ、そして人間の言ったことを考える。確かに人間が言ったことは間違いではない。早く治してやれるならそれが1番良いに決まっている。しかし、治すのは人間だ。もしハルトに何かされたら…。フウが言ってきた。


「ハルト辛そう…。」


 確かに少し呼吸があらい。フウの言葉とハルトの様子に、俺は仕方なく人間の話に乗ることにした。


「分かった。治せ。だが、こっちにくるのはお前と回復者だけだ。それ以外が近づけばすぐにファング達に襲わせるし、お前の命もないと思え。」


「ああ。了解した。」


 話かけて来た人間と、回復者の男が近寄ってくる。奴がハルトをそっと抱え上げ、抱いたまま地面に座った。回復者が手をかざすと、ハルトの体を微かな光が包み込んだ。


「名前は?」


「お前に関係あるのか?」


「まあ、関係はないが、名前くらい教えてくれても良いだろう。」


「ダメだ。さっさと治せ。そして俺達は家に帰る。」


「…そうか。」


 少しして回復が終わったのか、呼吸が荒く、うつらうつらしていたハルトは、普通の呼吸に戻り、目をパッチリ開けた。そして自分の今の格好を見て驚いたのか、飛び起きて、俺の後ろに隠れた。チラチラと、俺の尻尾の陰から奴を見る。

 奴が今晩はと言ったが、ハルトはそれを聞いてまた顔を隠した。それから小さい声で、こばわと言った。驚いたのもあったんだろう。今晩はがこばわに。思わず笑いそうになった。

 俺はハルトのこれが好きだ。小さくて可愛い顔のハルト。言葉が上手く話せずに幼児言葉で話すハルト。本人は一生懸命話そうとしているが、それが出来なくて、たまにふて腐れるハルト。全てが可愛くてしょうがない。もちろん可愛く笑うハルトも好きだぞ。


 さて、ハルトも元気になったし、俺達の家に帰るか。ハルトが乗りやすいように伏せをして、ハルトが一生懸命に上ってくる。見かねたファングが手伝って乗せてくれた。人間が慌てた様子で話かけてきた。


「待ってくれ。せめて名前だけ教えてくれないか。もしかしたら家族が探しているかも知れない!」


「家族?家族は俺達だ。人間の家族はいない。さあ、帰ろう。」


「俺達は1週間ほど、もう少し外側でここの調査をする。もし何か話がしたくなったら来てくれ。」


 返事は返さず、俺は走り出した。ハルトは未だに状況が分かっていない顔をしていたが、もう用事はないからな。人間の気配にだけは、気を配っておく必要があるが、あの人間達は盗賊ではない。余計な手は出してこないだろう。

 家に戻り、落ち着いたハルトがお腹が空いたと言ってきたから、皆んなでご飯を食べて、そのまま眠った。


 ハルトが人間の事を聞いてきたが、回復してもらったと言ったら、それ以上は聞いて来なかった。俺は内心ヒヤヒヤしていた。ハルトがやっぱり人間と一緒に暮らしたいと、契約を解除してでも、人間の所へ行きたいと言ってきたら…。たしかに人間の住む街で暮らしている魔獣もいるが、もし街に行きたいと言っても、俺達をちゃんと連れて行ってくれるか…。

 ハルトと離れるなど、もう考えられない。

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