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書籍発売記念 特別編

(ハルト達がキアル達の家へ行って、少し経った頃のお話しです)


『フウねぇ、今日楽しみにしてたんだぁ』


『オレもだぜ!!』


『ぼくも!!』


『『』キュキュキュイッ!!』』


『自分達も楽しみにしていた、と言っているぞ』


「ぼくも!!」


 今日はみんなで森に遊びにきています。お兄ちゃんはもちろんだけど、いつもは仕事で忙しいお父さんお母さんも一緒なんだ。

 森にね、今の季節にしか咲かない綺麗な花が咲いていて、みんなでその花を見ながら、森に遊びに来たんだよ。


 森でみんなが遊べるのか? 今来ている森は、危険な魔獣がいないから、遊ぶのにちょうど良くて、小さな子を連れている家族もけっこういるんだ。だから森の中は、僕が思っていたよりも、家族連れで混み込みしていました。


 お父さんもお母さんも、グレン達もみんな強いし、オニキスも居るから、別の強い魔獣がいる森でも良かったんだけど。でもゆっくり遊ぶならこの森だって。せっかく花を見にきたのに、魔獣のせいで花が見れなかったら嫌だもんね。


 朝、いつもより早く起きた僕達。今日は僕もしっかりと起きることができました。朝ご飯は馬車で移動しながらってことになっていたから、ささっと着替えて、準備していたオニキスカバンを持って玄関前に。今日は僕達が1番だったよ。


 少ししてお父さん達が来て、いよいよ森に向かって出発!! 森までは馬車で1時間くらい。歩いても1時間30分くらいだから、小さい子を連れてでも移動できるって。だから人気の森なんだ。

 

 もちろんこの時期は、森へ行く乗り合い馬車が何台も、街と森を往復しているから、その馬車に乗っても良いし。


 それで僕ね、馬車に乗らない人達を見て、1時間30分も歩くの? って思ったんだ。だって馬車が出ているんだよ? なら馬車に乗れば良いのにって。

 そうお父さんに言ったら、みんないつも歩き慣れているから問題ないって。それに馬車のお金がもったいないって、乗らない人も多いみたい。


 よく考えたら、この世界には車なんかないわけで。みんな結構歩いている人達が多いんだよね。だから地球の人達よりも、歩き慣れているだろうし。慣れているならわざわざ馬車に乗らなくても、歩いちゃう人もいるかもって。


「まぁ、帰りは、小さい子がいる家は、馬車を使う家が多いが」


 帰りは小さい子、絶対に遊び疲れてるもんね。


 こうして馬車で朝ご飯を食べて、食べ終わったら馬車から外を眺めながら、森に着くのを待って。ついに森に到着。

 この時期は騎士さんや冒険者さんが、人と人との問題が起きないように、森に対して何か破壊行為みたいなことを人がしないように、森を管理して見回りをしてくれているんだって。それから混み合っているから、森に入るのも順番でした。でも流れが早くて、すぐに入れたよ。


『着いた!!』


『遊ぼう!!』


『あっち、いきちゃい!!』


『『キュキュッ!!』』


『向こうに行こう!! と言っているぞ。お前達花を見にきたんじゃないのか?』


『あ!?』


『忘れてたぜ!』


『おはな?』


『『キュキュウ』』


『はぁ、今のは、そうだった、と言ったのだ』


「はは、まぁ、子供はそんなものだ。でもフウもそうだとは。花の妖精だろう?」


『フウはやろうと思えば、好きな花を咲かせられるからな、力をかなり使うため、大きな花を咲かせた後は、1日だらっとしてしまうが。だからそこまで花が見たい!! とはならないのだ』


「そうなの。それは初めて聞いたわ。でもせっかくだから、みんなで先に花を見に行きましょうね」


「あい!!」


『『『は~い』』』


 僕達はすぐに花が咲いている場所へ。着くとそこには、地球と同じような花が、たくさん咲いていました。木が何十本も集まっていて満開だったよ。その花は……。

 桜でした!! この世界ではルリって言うらしいんだけど、桜そのものだったよ。まさか桜が見られるなんて。


「きりぇ!!」


『ねぇ、綺麗だね』


『ほんと綺麗だな!! あっ、あっちで売ってる食べ物美味しそうだぞ!!』


『なに、うってりゅにょ?』


『キュキュ!』


『キュイ!』


『花を見ながら食べたいって? 今朝ごはんを食べたばかりだろう』


 みんなルリを見たり、向こうの屋台のお団子を見たり、とっても忙しいです。でもその時僕ね変な感じがしたんだ。


 それでルリを見ていたら、真ん中に1番大きなルリの木が生えていたんだけど。その1番大きなルリの木が、なんか他よりも元気がない気がして。そのルリの木の下に、女の人が座ってたの。なんかその女の人も疲れてるみたいで。


 ちょっと気になったけど、みんながお団子お団子って騒いだから、僕達はお団子の屋台へ移動。みんな2本ずつお団子を買ってもらって、ルリの下で食べることに。

 さっとハンカチを敷いてもらって、みんなでお団子を食べます。僕達以外にも色々な場所で、色々な食べ物を食べている人達がいっぱい。でもここはとっても広いから、ゆっくり座って食べられます。


 そうして1本目を食べ終わった僕。チラッと向こうを見てみたら、さっき見た元気のない女の人が、まだ座っていました。


「にゃんか、げんきにゃい」


 僕は自分の持っているお団子を見ました。僕朝のご飯の後だからお腹いっぱい。このお団子あげようかな? それで少し元気出る? なんかね女の人がお腹すいてる気がするしたんだよ。

 

 だからそう思った僕は、すぐに女の人の所へ。ちゃんとお父さんに、ちょっと向こうに行ってくるって言って、オニキスと一緒に行ったよ。フウ達はお代わりしたいって、またお団子を買いに行きました。


「あにょ」


 僕が声をかけたら、女の人がとってもびっくりした顔をしました。


『お主は、我が見えるのか?』


「みえりゅ?」


 よく分からないことが言うね。それになんかオニキスみたいに話し方だし。


『おい……』


 オニキスが僕に聞こえないくらい小さな声で、女の人に何かを言いました。そうしたらまた女の人はビックリしたんだけど、すぐに困った顔で笑いました。


『そうか、そういう者に久しぶりに出会ったな』


「あにょ、おにゃかしゅいてりゅ? ぼく、おにゃかいっぱい。だかりゃ、これたべりゅ?」


『良いのか? 確かに我はお腹が減っているが……。ちょっとこの場を綺麗にするために、皆に喜んでもらうために、力を使い過ぎてしまってな』


 ここを綺麗にする? みんなが楽しめるように、この場を綺麗にお掃除してくれたのかな? ここ広いのに大変だったでしょ? じゃあお腹空くよね。


「これたべりゅ!! おいちいよ」


『本当に良いのか。それはお主のだろう?』


『貰っておけ。お前だって、この光景を楽しみにしていたんだろう? それにお前も分かるだろう? この団子のこと』


『……ああ。なら、お言葉に甘えさせてもらおうか』


 女の人は僕からお団子を受け取って、まとめて3つ食べちゃったんだ。僕ビックリしたよ。それでまだ食べる? って。お父さんに買って貰う? って聞いたんだ。でももう大丈夫だって。

 

 そういえば女の人の顔色が良くなっているような? それにお団子を食べ終わって、立ち上がった女の人の動きは、とっても素早くて。本当に元気になったって感じでした。


『ありがとう。元気になった。さぁ、皆の所に。お主を呼んでおるぞ』


 そう言われてみんなの方を見れば、確かに僕のことを呼んでいて。


『本当にありがとう。是非ルリを楽しんでいってくれ』


「うん!!」


 僕はすぐにみんなの所へ。オニキスは話しがあるって女の人の所に残りました。話って何かな?


 その後もみんなでルリを楽しんだ後、僕達はそれぞれ遊びに、お父さん達はその場でゆっくりお茶をして。


 でもね、とっても不思議なこちがあったんだ。僕達の所だけ風も吹いていないのに、ずっと花吹雪が降っていたの。どこに行ってもだよ。僕達も不思議、お父さん達も不思議。周りの人たちも不思議がるくらいにね。


 しかもかなりの量が降っても、花が全然なくならないんだよ。だからまたみんなが不思議がって。でも、とっても綺麗だったから、途中からそれを楽しみました。

 池の近くでは水面に桜吹雪が映って綺麗だし。花畑では、上も横も下も全部が綺麗だし。全部がとっても綺麗で僕達はずっとニコニコだったよ。


 そうして楽しんだ僕達は、そろそろ帰る時間に。最後に最初の場所でルリを見て、馬車の待っている場所へ移動を始めます。と、僕は振り返りました。

 そこには1番大きなルリの木の下に、あの女の人が立っていて、僕に手を振ってくれていて。それに1番大きなルリの木も、とっても元気になったように見えて。

 

 僕はブンブン手を振ってからみんなの所へ。帰りの馬車の中、みんな遊び疲れて寝ちゃってね。それはもちろん僕も同じで。僕は夢の中で、綺麗なルリの木の下、みんなでお弁当を食べている夢を見たんだ。


 また今度、みんなでルリを見に行けると良いなぁ。


      *********


『まったくお前は、色々とやらかすな』

 

 我は寝ているハルト達を抱き上げ、そのまま馬車を降りると部屋に向かった。そうして今日のことを思い出す。


 あの女の正体を知ったら、ハルトはどう思うにだろう。まぁ、凄いと言った後、ありがとうと言うだろうが。でもそれはあいつが望んでいないからな。あいつは静かに皆が喜ぶ顔を見るのが好きなのだ。


 あの女の正体。あれはあの1番大きなルリの木そのものなのだ。長い間、何百年と生きてきて、実体を手に入れた。そしてみんなに喜ばれたいと、毎年綺麗な花を咲かせていたのだろうが。


 今回はどうにも力を使い過ぎたらしい。休んでいれば勝手に回復しただろうが、疲れて座り込んでいるところを、ハルトに見られたのだ。本来なら人には見えることはないのだが。ハルトは特別だからな。色々と規格外のところもあるし。そのせいで見えたのかもしれん。


 そしてハルトの差し出した団子には。ハルトは無意識に自分の魔力を流していたようで。それを食べた奴はが元気にならないわけもなく。元気になった奴は、ハルトのことが気に入って、その後ずっと花吹雪をハルト達に見せていた。


 あれだけ降らせば、他も不思議がるだろう。あれはやり過ぎだ。が、まぁ、ハルトたちは喜んだから良しとするか。


 きっと来年も綺麗な花を咲かせてくれるだろう。まぁ、他の季節でも、ハルトが行けば何かしてくれるだろうが。


『お前は無意識に皆を助けてくれるのだな。我も、皆もそれで助かった。本当にお前には感謝しかない』


「あにょう、しょにょおにく、ほちい」


『何だ今の寝言は? どんな夢を見ているのだ』


 突然の『肉欲しい』に笑いそうになってしまったが、ハルトが夢の中でも楽しそうで良かった。どうか来年も皆が楽しめる日であるように。

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