143開会式と最初の試合
「ふわわ!!」
今まで割れたシャボン玉は、普通に割れたって感じだったんだけど。残り5個になったら、シャボン玉が割れた途端に、花びらがひらひら、それから紙吹雪みたいな物がキラキラ。あとシャボン玉の中から、小さいシャボン玉のがほわほわほわって。それでまた一気に会場が騒がしくなって。
『5』
『4』
『3』
『2』
「1」
会場が1つになってカウントダウンです。もちろん僕達もね。そして…。
「0!!」
最後、1番大きなシャボン玉が割れました。シャボン玉からはまた新しい物が出てきて。そうシャボン玉が割れるとその中から光る玉が空に上っていったんだ。そしてパンッ! パンッ! パンッ! 花火が打ち上がったの。その瞬間会場が歓声に包まれました。
止まらない花火。そして花吹雪に紙吹雪。それが観客席の方にまで舞ってきて。僕もライ達も思わず手を伸ばしちゃいます。
オニキスは鼻の頭に花びらがついて、くしゅんってくしゃみしてたよ。それからヒューイは、こんな魔法で人間は喜ぶのかって。え? だってとっても綺麗なのに。ヒューイは他に綺麗な魔法知っているのかな? なら今度見せてくれないかな?
そして花火が上がり始めてすぐ、どこかから音楽が聞こえてきました。見るとグラウンドの周りにいつの間にか沢山の白いお洋服を着た人達が。みんな楽器を持って立ってたよ。あの人達が演奏してるんだね。チラッとブルーベルの方を見たら、とってもとっても小さな声でブルーベルが音楽に合わせて歌っていました。気づかれないように気をつけててね。
どのくらい花火が打ち上がってたのか。けっこう長かった気がするけど、やっと花火が止まって、男の人がグラウンドの真ん中に立ちました。
「ここからは私が進行させていただきます!! 皆様、大会中よろしくお願いいたします」
これからはあの男の人が司会をするみたいです。とっても不思議なんだよ。これだけ歓声が凄くて、音楽も聞こえているのに、男の人の声がはっきり聞こえるんだ。そう思ってたのは僕だけじゃなくて。
『キュキュイ』
『どうして声が聞こえるの? と聞いているぞ』
ブレイブ達やみんなもそう思ったみたい。
「あれも魔法なのよ。みんなに声がよく聞こえるように、風の魔法を使って聞こえるようにしているの」
お母さんが教えてくれました。あれも風の魔法なの!? 僕風の魔法は吹き飛ばすとか、僕達が水で遊んでささっと乾かしてくれる時に使う物だと思ってたよ。あとは風を飛ばして敵を攻撃したり。声を大きくしたりもできるんだね。
司会の男の人、さっき自己紹介していたんだけど、ネストさんって名前だって。ネストさんがどんどん話しを進めていきます。今回の大会はとか、今年の参加者はとか。その間音楽隊は演奏したまんま。
「では皆様は、開会初日の試合をお楽しみください!!」
やっとお話し終わったよ。う~ん。こういう最初のお話しって、どうして長いんだろうね。地球でも始業式とか終業式とか長かったし。もっと短くできないのかな? ほら、ライ達が最初は楽しくしてたのに、ヘリに座ってへたぁってしてるよ。僕もちょっとだらっとしてるし。
と、華やかなだった演奏が止まって。今度は格好いい感じの音楽を演奏し始めました。それと同時にネストさんがグラウンドの外、選手が入場する出入り口の横に立って、次々に名前を呼んでいきます。というか、僕初日から試合があるなんて知らなかった。
「おとうしゃん、もうしあい?」
「ああ、これは本試合前の余興だよ。本当の試合、お父さん達が出る試合じゃなくて。大会が始まりましたって。みんなに盛り上がってほしくて、簡単な試合をするんだ。勝った人には確かお酒が送られるんだったか?」
お父さん達ほど強くない人達が、15人くらい集まって、一斉に試合をするんだって。だからすぐに決着がつくの。それで最後まで残った人は、1ヶ月分のお酒が貰えるんだって。だからネストさんはどんどん名前を呼んだんだね。グラウンドにはゾロゾロ冒険者の格好をしている人達が出てきたし。
どんな試合をするのかな? 魔法? それとも剣? みんな武器バラバラだよね。初めての試合。本当の試合じゃなくても僕楽しみ。そうそう、本試合じゃないから演奏付きで、音楽隊の人達が盛り上げてくれるから、けっこう盛り上がるぞってお父さんが。そっか。だからカッコいい音楽なんだね。
ゾロゾロ出てきた人達は、全員で18人でした。いつもより多いって。それぞれがグラウンドの端っこに並んでいきます。間を一定に保って。
『どの人が勝つかなぁ?』
『僕あの大きな剣を持ってる人応援しようかな?』
『じゃあオレはあの背の高い、魔力石持ってる人、応援するかな』
みんな応援する人を決めてます。僕は…。あの綺麗な細い剣を持っている人を応援しようかな?
「では、これより試合を始めます! 結界が張ってありますのでご安心して試合を観戦してください!! では…」
ネストさんが手を上げました。