139いよいよスタジアムの中へ
「相変わらず、凄い人だな。一体どれだけの人が集まっているのか」
「年々観客が増えてきているからね。今回の大会も盛り上がるだろう」
「でもスタジアムに入るまで時間がかかりそうね。これなら入るまでの間ハルトちゃん寝ていられそうだわ」
何々? 寝てられる? 僕はオニキスに乗って目を瞑ったまま、お父さん達の話引いてました。眠たくて目が開けられないけど、お父さん達の話から、スタジアムの中に入るのに、かなりの時間がかかるって分かって、これならこのまま寝てようと思った僕。気づいたらぐっすり眠ってました。
「…ト、ハルト。そろそろ起きなさい。もうすぐスタジアムに入るぞ」
お父さんの声で起きた僕。大きく背のびして、それから目を擦って、周りを確認したら、僕の周りにはみんなが居て、他にもいっぱい人が。契約してる魔獣達もいっぱいいました。
それから前の方にハスタジアムの入口が。少しずつだけど人が中に入って行ってます。
僕はオニキスから下りて、お兄ちゃんと手を繋いで、お父さん達の前に並びました。どれくらい僕寝てたのかな? かなり目がパッチリ。それに頭もスッキリです。こんなにスッキリするほど寝てたのかな?
気になってお兄ちゃんに聞いてみたら、もうすぐお昼の時間だって。そんなに僕寝てたの!? じゃあスッキリするはずだよね。でも僕達、朝早くからスタジアムに来たはず。それなのにお昼前でまだはいれてないなんて。
そう思ってた僕に、お父さん達の話が聞こえて来て。
「まさかこんなに時間がかかるとは」
「もしかすると開会式、始まる時間が遅くなるかもしれないわね」
「いつもだったら、もう少しスムーズに中に入れるのだがな」
やっぱりいつもより時間がかかってるみたい。でもまぁ、そのおかげで僕はぐっすり眠れて、スッキリでスタジアムの中に入れるけど。
それからも、もう入口はすぐそこなのに、ちょっとずつ列は進んで行って。僕達が入る順番が来たのは、完璧にお昼のご飯の時間になってからでした。
入口には係りのお兄さんとお姉さんたちが4人立ってて、それぞれチケットの確認してます。
先ずはレイモンドおじさん家族。次にペインおじさん家族。それから僕達家族が。お父さんが僕にチケットを渡してくれて、僕は近くに居たお姉さんにチケットを渡しました。
「ようこそいらっしゃいました。お待たせいたしました」
お姉さんはニコッと笑って、お姉さんの横に置いてあったカバンの中から、小さなリボンのついた袋を僕にくれました。フウ達が袋の所に飛んできて、ブレイブが頭から袋を覗いてきます。スノーはディアンが抱っこしててくれたんだけど、その抱っこの姿勢のまま、袋の方に首を伸ばしてきました。きっと僕が首からかけてる、カバンの中に入ってるブルーベルも、カバンの中からじっと袋を見てるはず。
「ハルト、それは今日来た小さい子に配ってるプレゼントだ。あとで客席に行ったら見てみような」
そうお父さんが。プレゼントまた貰っちゃいました。大会見に来てから、プレゼントが多い気がするよ。この前のスタジアム見学なんて、たくさんお土産とプレゼント貰ったし。貰えるの嬉しいから良いけど。
僕はお姉さんにありがとうして、それからチケットを受け取って、スタジアムの中に入りました。
『わぁ、人がいっぱい!』
『外、ぎゅうぎゅうだったもんな』
スタジアムの中は人だらけでした。そりゃああれだけ外に並んでればね。まだまだ外には人が居て、でも前に入ってる人達もいるし、全員が中に入ったら、大変な事になるんじゃ…。なんか不安になってきちゃった。僕達の席、ちゃんとあるよね。別の人達が座ってたりしないよね。僕、お父さんに聞いちゃったよ。
「おとうしゃん、ちゃんとしゅわれりゅ?」
「ハハッ、心配しなくても大丈夫だ。確かにこれだけ人が居ると心配になるかもしれないが、ちゃんと俺達の席はあるからな」
本当? だってこれだけ人が居るんだよ。
「この前のスタジアム見学のとき、そっちには行かなかったが、立ち見の席もあって、そっちにかなりの人数が入れるんだ」
そうなの? 立ち見の席なんてあるんだ。そう言えば地球の野球とかにもあったような? どうだったかな? でも、お父さんが大丈夫って言うし、立ち見席があるなら本当に大丈夫なのかな。
「さて、先ずは席に行って、ご飯をどうするか決めよう。席で食べるか、こっちに買いに来るか」
レイモンドおじさんがそう言って、みんなで席に移動します。移動してるときお土産屋さんを見たんだけど凄い人で、お店の看板しか見えませんでした。本当は今日も見たかったんだけど、お父さんが今日は無理だなって。僕も混むとは思ってたけど、こんなに混むなんて思わなかったよ。スタジアム見学ツアーの時にお土産買っておいて良かったね。
『この前よりも良い匂いがするな』
『酒は売っていないのか?』
『ふむ、酒も良いな』
ディアンとヒューがそんな事言ってます。ちょっと、こんな昼間っからお酒飲むつもり? フラッと横にずれそうになったディアン達を、お母さんが止めます。
「あなた達、勝手な行動はしないって、ハルトちゃんと約束したのではなかったかしら?」
『…そうだったな』
『…うむ。酒は後にしよう』
お母さん、笑ってるけどなんか少し怖かったです。そう昨日、僕とディアン達みんなで約束したんだ。他の魔獣もたくさんいるし、それにドルサッチ達も来るから、僕達絶対バラバラに行動しないようにしようって。だって、何があるか分からないでしょう? それなのに、もうかってに動こうとするなんて。まったく。
階段を上るのは大変だから、またオニキスに乗せてもらって、僕達の席のある階まで上りました。それでスタジアムの客席の入口に到着。それで入口の前にテイリーさんが立ってました。