130お父さんとグレンの凄い模擬戦 スタジアム見学ツアー2日目
「おかあしゃん、なにしゅる?」
「ハルトちゃん達がとっても喜ぶことよ」
ロイも僕達の方に来て、僕達の後ろに座ります。それを確認したテイリーさん。ニコニコのお顔から、急にきりっとしたお顔に。
「位置に!!」
テイリーさんがそう叫んだら、お父さんとグレンがそれぞれ右と左に、少し離れて止まります。
続けて叫ぶテイリーさん。
「これは模擬戦です。規定以上の攻撃はなさりませんようお願いします。よろしいですね」
「ああ」
「はい」
「では…構えて!!」
お父さんとグレンが剣を構えます。これってもしかして。
「始め!!」
テイリーさんの始めって言葉とほぼ同時に、お父さん達が動いて、ブワァァァ!! 土煙が上がって、グラウンドの真ん中には、真剣なお顔のお父さん達が剣を合わせてました。でも止まってるのもすぐに終わり、すぐに攻撃が始まったんだけど、全然剣が見えません。カキンとか、カンっとか音は時々聞こえるんだけど、剣が全く見えないの。
お家でお父さん達の訓練は何回も見せてもらったけど、あの時も剣は見えなかったんだよ。でも、ここまでじゃなかったの。こう影が見えるって言うか。なれたのもあったんだと思うんだけど。
今回はなんにも見えません。攻撃の合間に時々離れて、剣を構えた時だけ剣が見えます。でもすぐにまた攻撃が始まって。
それに今日は剣だけの攻撃だけじゃありませんでした。お父さんが魔法を使う事はあんまりないけど、今日は魔法の攻撃までしてます。もちろんグレンもね。
風の魔法使ったり、氷の魔法使ったり、魔法を使いながら剣で戦ったり。剣と魔法の合わせ技です。
「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!」
「わあぁぁぁぁぁぁ!!」
「「キュキュキュ~イ!!」」
僕もフウ達も、大興奮の喜びの悲鳴をあげます。そんな僕達の隣でお兄ちゃんがニコニコ。もう片方の隣では、ディアンとヒューイが、自分だったらこう攻撃するとか、攻撃が甘いとか、なんとかかんとか。
ちょっとディアン達と一緒にしないでよ。力が違うでしょう。それよりも僕達感動してるんだから、気分が下がるような事言わないでよ。
僕が2人のこと睨んだら、2人共すって横向いて静かになりました。
すぐにお父さん達の方に向き直る僕。と、ちょうどグレンの炎の魔法攻撃が僕達の方に向って来て、一瞬目を瞑る僕。フウ達もわぁって言って、オニキスの後ろに隠れます。でも…。
「ハルトちゃん、みんなも大丈夫よ。見てみて」
お母さんにそう言われて、そっと目を開けます。そこには結界にぶつかって、その場で燃え上がる炎と、その強力な魔法を通さない、少し光ってる結界が。炎が消えると、結界の光も消えました。
「ね、大丈夫でしょう」
凄い! お父さん達の剣も魔法も結界も、全部が凄過ぎるよ!!
僕自分でも気が付かないうちに、頭の上で拍手してました。オニキスに隠れてたフウ達も出て来て、一緒に万歳拍手します。
そんな中、お互いにちょっと遠くまで離れたお父さんとグレン。
「そろそろ時間ですね。模擬戦ですから、時間が決まっているのです。これが最後の攻撃になるでしょう」
ええ!? もう最後なの! 良く目に焼き付けなくちゃ。もちろん数日後、ほんとうの試合が始まって、もっと凄いお父さん達が観られるだろうけど、今日のお父さん達もとっても凄いもんね。
じっと僕達が見つめるなか、同時にお父さん達がお互いの方に。そして今日1番の砂煙が。どっちも剣と風の魔法を同時につかって、その衝撃の土煙のせいで、何にも見えなくなっちゃいました。もちろん結界は光ってて。
やっと見えたとき、お父さんとグレンは剣を合わせたままの格好で止まってました。
「そこまで!!」
テイリーさんがそう叫ぶと、すっと離れるお父さん達。剣を横にして立って、お互いに礼をします。
僕達またまた万歳拍手です。お父さん達がニコニコしながら、僕達の方に歩いていました。
「フレッド、ハルト、どうだった…って、ハルト!?」
何? お父さんどうしたの? ん?
ツゥー。あれ? そう思った瞬間、僕の体がグラッて。僕の名前を呼ぶみんなの声と、後ろから僕を呼ぶロイの声が聞こえて、僕のことを誰かが支えてくれます。たぶん後ろにいたロイだと思うんだけど。
「大変。何かお水を入れられる入れ物を」
「すぐ用意してきます」
お母さんがハンカチで僕のお鼻の所押さえてくれて、あれ? 何か気持ち悪くなってきちゃった。
「やっぱりこうなったか」
あ~、僕興奮しすぎて、毎度おなじみの鼻血だしちゃったんだ。しかももしかしていつもより酷かったりして。
僕は気持ち悪いのと、なんか頭がフワフワしてるので、何か変な感じです。僕の周りでフウ達が大丈夫って心配してくれてます。
そのうちテイリーさんの声が聞こえて、何か持って来たって。その後すぐにおでこの所に冷たい感覚が。
「熱まで出てるわ。たぶん興奮のせいだから、落ち着けばすぐに下がると思うけれど、少しここでゆっくりしていて良いかしら」
「かまいません。この後はお昼まで自由行動ですし、お昼の後も続けて自由行動となりますので」
お父さんが僕のお隣りに来て、僕のことを抱き上げます。
「大丈夫。すぐに良くなるからな」
何で僕、すぐに鼻血出しちゃうんだろう。せっかく楽しかったのに。もう。